メクる

累計 17767337 スキ
BL・アダルトの
切り替えはこちら

閑話

イラスト
その他
オリジナル

Haurvatat

  • 閲覧数

    442

    1466位

  • 評価数

    15

    1491位

  • マイリスト

    2

    730位

2016年02月25日 23:13 公開

「…ここが境界」

ちゃぷん、という水音に交じった言葉は、微かに老いぼれた鼓膜を揺らした。

「いつも思うわ、どうして水面に映る私は醜いのか」

彼女はよく、どこか曖昧に事を話し出す。
聞いてほしいのか、ほしくないのか。その心を図れるほどには、彼は人を知らない。
そう、人を。

『…お前は美しいと思う』

「それは貴方が人では無いからでしょう? 人以外に人の美しさは語れないわ」

掛けた言葉は、彼女の意にそぐわなかったらしい。
ちゃぷん、と鳴らしていた優しい水音から徐々に間隔を詰めて音はぱしゃぱしゃ、と激しくなっていく。
彼女が癇癪を起こすことは今に始まったことではない。しかし、それを諌める言葉など彼には思い付かないから、いつしか諦めてしまった。

彼は静かに瞼を閉じる。
美しさとは、何だろうか。
人と他の美の感覚は違うのだ、と昔彼女は言った。それは人の間でもそうなのだと。
なら彼女は誰に欲しい言葉を貰えば気が済むのだろうか。
彼女も人では無いのに。

いつの間にか水音は消えていた。
瞼を開けると、彼女は変わらずそこにいた。
その手からは白い花びらが落ちていく。

「…人の気持ちなんてね、分からないのよ。同じ人間たちでも分からないことを、違う私が分かるなんて、おかしいことなのよ」

はらりと落ちる花びらは水面を音無く揺らした。

「貴方が私を美しいと言ってくれるの、嬉しい、と思えるのも私が人では無いからよ。人に言われても、それは人の姿の時だから、完全には喜べない」

彼女は顔を俯かせる。
人の姿をした彼女の心は、人よりも彼よりも複雑で、そもそも図ることなど出来ないのだ。

「いつも思うの、なぜこんな半端な私が産まれてきたのか」

ゆっくりと彼の方へと振り返った彼女の瞳の色は紅い。
人の姿には不自然で、異常ささえも感じさせるその瞳の色は、彼女の存在をより歪にさせていた。

『…私には、理由の持てないものを尋ねる人の考えが分からない。ここに在る以上はいなくてはならないのではないか』

始めからふとしたことで不安になる人の考えなど分からないのだ、私には。
なら、彼女を慰めることも、諌めることも、彼には始めから出来ない。出来るのは本心を言葉に代えるだけ。
そんな彼の言葉を唇で小さく繰り返した後、彼女は考えるように背中を向ける。

また、ちゃぷん、と水音が聞こえた。


スキを送る

累計 90 / 今日 0


残スキ 300

『スキ機能』とは?
『スキ機能』とは『スキ』ボタンを押すことで作品や作者を応援できる機能です。
※拍手機能に類似した機能です。

[スキ機能のルール]
※1人あたり1日に300回まで『スキ』を送ることができます。
※1作品でも複数作品でも合計が300回まで『スキ』を送ることができます。
※『スキ』は1スキ、『大スキ』は10スキ、加算されます。
※1日に与えられるスキの数は毎朝4時にリセットされます。
※自分の作品にはスキ機能は利用できません。
※『スキ』は匿名で作品に送られます。

スキ!を送りました

作品を評価する

Haurvatatさんを

フォローしたユーザーの
作品投稿やつぶやきなどの最新情報を
マイページでチェックできます

マイリストに登録する

この作品につぶやく

#閑話

500

みんなのつぶやき 一覧

つぶやきはありません

イメージレスポンス(0) 一覧

この作品へのイメージレスポンスはありません

タグ一覧 編集

友達に教える

  • ツイートする
  • イイネ
  • なうで紹介
  • はてなブックマーク
  • GoogleOne

この作品を見た人はこんな作品も 一覧

作者の投稿イラスト(50) 一覧

作品登録マイリスト 一覧

お気に入りイラスト (7)

その他

コーナー R

作品宛みんなのつぶやき

もっと見る

作者の他の作品一覧

一覧を見る

copyright (c) 2013-2018 メクる Co.,Ltd. All rights reserved.