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赤い庭

短編小説
文学
オリジナル
2014年09月13日 20:11 公開
1ページ(810文字)
完結 | しおり数 0

その人は、静かに赤い庭にいる……

清水 梨史

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その家の庭には

赤い花しか咲かない。

※この作品は、別サイトのサークルブックに寄稿した作品です。
イラストレーション
9℃さん
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荒れた庭に植えられた
血のような
情念のような
荒んだ庭に咲く赤い花々

「先生は、赤い花がお好きなのですか」
「赤い花は嫌いなのです」

庭の隅々に咲く花たちを私には、彼が好んで植えているようにしか思えない。しかし『先生』と呼んだ男性はこの花たちを「嫌い」だと私に告げた。

「嫌いなのに、お植えになったのですか」
「いいえ、植えたのは妻です」
「なら、何故、奥様にそう言わなかったのですか」

私は先生の細君を見たことはない。
彼女は、こうやって会話の端々に姿を見せるだけだ。だが、淡々とした言葉の中に先生の彼女への慎ましい愛情を感じていた。

「私が嫌いだからこそ、妻は植えたのです」

静かに彼の口から紡がれた言葉にぞっとした。

夫の忌む花を植える妻。
夫はそれを止める事なく何かの罰だと言わんばかりに受け入れる。
その光景は、恐ろしく、哀しい。

「私は、見なければいけないから植えたのです」
「奥様は先生を憎んでおいでだったのですか」
「この花たちは、妻のか弱い私への投げかけだったのです。水面に石を投げる子供のように私の心の波紋を見たかった。見せてほしかったのでしょう、ですが、仕方なかったと開き直ることも、全てを忘れるほど強くも無い。私は、妻の投げ掛けに答えることも出来ずに気づきながらも、ただ眺めていたのです」

先生が細君を語るとき全て過去形である事に気がつく。

「そして、妻は私に失望した」

その一言で細君が鬼籍の人だと察した。
いいや、どこかで察していた。
それが確信となっただけだ。

「だから、私は赤い花を見詰めて、一生問いつづけなければならない。一生、この卑怯で狡い自分を引きずりながら」

そう呟くと先生は嫌いと言った赤い花を唯一の愛おしいもののように眺め無表情のうちに微笑むのだった。

ー終ー

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