かくれんぼ / 「橘伊津姫」の小説 | メクる

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かくれんぼ

短編小説
ホラー
オリジナル
2016年10月05日 11:10 公開
1ページ(6042文字)
完結 | しおり数 0


橘伊津姫

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子供はさ
「かくれんぼ」が
好きなんだよね
暇潰しに
ちょうどイイしさ…

親戚のおじさんが死んじゃったんだって。
パパとママの仕事のカンケイとかで、お通夜に行けなかったから、お葬式に行くんだってさ。
おじさんって言ったって、会ったこともないし。
そんな人のために、なんでボクまで出かけなくちゃいけないのさ?
ヨシ君と遊ぶ約束してたのにさ…。
こんな日にお葬式なんて、サイアクだよ。
お葬式って、やる事なくて、つまんねーの。
「大人しく、静かにしてなさい」ってママ。
「チョロチョロするんじゃない」ってパパ。
じゃあ、なんで連れてきたんだよ?
家にいた方が、楽しかったのに。

「さあ、クルマに乗ってちょうだい。これから、火葬場に行かなくちゃいけないんだから」
まだあるわけ?
いつになったら、終わるのさ?
ボクはふくれっ面で、クルマに乗り込んだ。
あ~あ、ゲーム持ってきてよかった。
少しはヒマつぶしになるからね。
「火葬場」ってトコまでは、ずい分かかったよ。
やっと着いた。
「なんで、こんな遠くにあるの? もっと近くに作ればいいのに」
ふてくされてパパに聞くと、めんどくさそうに
「あんまり人が多く住んでる場所に作ると、イヤがる人がいるからさ」
って答えてくれた。
「どうして、イヤがるのさ?」
「死んだ人が運ばれてくる所だからよ」
今度はママが答えてくれた。
「ふぅん。でも、死んじゃったら、みんなココに来るんでしょ? イヤがってる人もさ。そんなの、ヘンじゃない?」
ヒマだったしさ。ほかにダレも話しかけてくれないんだもん。
質問するくらい、イイじゃん。
なのに、ママがコワイ顔をしてボクに言った。
「少し、静かにしてちょうだい。パパもママも、疲れてるのよ。いちいち、あなたの話に付き合ってられないわ!」
ちぇっ!
つまんねーの!

火葬場って、何にもない所なんだな。
コンビニもないし、公園もない。
「ここに座っててちょうだいね。パパもママも忙しいんだから」
ママが言った。
「ウロウロするんじゃないぞ。いなくなっても、探したりしないからな」
パパが言った。
そして集まっている親戚のおじさんやおばさん達の間に入って、ムズカシイ顔をして話を始めてしまった。
しかたなく、しばらくの間はイスに座ってゲームをしてたんだけど…。
すぐに飽きちゃったよ。
他にやる事、ないんだもん。
パパもママもボクの方を見てないし、いなくなったて、気が付かないよね。
よぉし、今のうちに探検してやろう。
「火葬場」なんて、なかなか来ないし、学校のみんなに話してやるんだ。
ボクはそっとイスからおりると、静かに部屋を抜け出した。
探検開始だ!

建物の中は、ガランとしていて静かだった。
本当に、なにもないんだ。
廊下の角に自動販売機があったから、ボクはそこでジュースを買うことにした。
「なぁんだ、なにもないじゃん。本当につまんないの」
そばのイスに座ってジュースを飲みながら、ぶつぶつと独り言を言った。
だって、ほかに話す人がいないんだもん。
「ママは『死んだ人が運ばれてくる』って言ってたけど、どこにもいないじゃん。もっとたくさん、死んだ人がいるのかと思ったのに」
「いるよ。でも、ここじゃないんだ。別の場所にいるんだよ」
いきなり、ダレかの声がした。
ふり向いたら、知らない男の子が立ってた。
「ダレ?」
「ボク? ボクは恭一って言うんだ。ねえ、君、ヒマ?」
「うん。すごくヒマなんだ」
「じゃあさ、ボクと遊ばない?」
「いいね、ダレもいなくて退屈してたんだ」
「なにして遊ぶ?」
「みんなに見つかると怒られるから、みつからないように『かくれんぼ』でもしようよ」
恭一君は楽しそうに笑って、ボクの手をにぎった。
ヒヤッとして冷たい手だったけど、気にならなかった。
ママも『冷え性』とかっていうので、いつも手が冷たいんだ。
だから、恭一君もきっと『冷え性』なんだね。
廊下の向こうの方から、ママがボクを呼ぶ声が聞こえた。
「まずい! ママだ!」
見つかったら、絶対に怒られる。
「行こう、恭一君!」
「うん!」
ボク達二人は手をつないで建物の中を走り出した。
かくれんぼ、開始だ!
鬼はパパとママ。
みんなに見つからないように、かくれなくちゃ!
どこにかくれよう?
テーブルが置いてあるだけの広い部屋とか、座布団の用意された空き部屋もあった。
「トイレとかにする?」
「ダメだよ。そんな所じゃ、すぐに見つかって連れ戻されちゃう」
「じゃあ、どうするんだよ?」
「まかしておいて。絶対に見つからない場所を知ってるんだ」
恭一君は、ボクよりも火葬場にくわしいみたいだった。
廊下を走って階段をかけ下り、ボクと恭一君は笑いながらパパとママや親戚の人達にみつからないように、かくれる場所を探した。
一階の一番奥にあるガランとした広い部屋に出た。
いくつも鉄のドアが並んでいて、なんだか、お線香のニオイがした。
ダレもいなくて、ドアの前には写真が置いてあった。
「これって、なに?」
「これ? このドアの奥に死んだ人が寝ているんだよ」
「そうなの?」

並んだドアの前に、一つだけ白い木の箱が置いてあった。
「ねえ、この中にかくれようよ」
「えー。でも、すぐに見つかっちゃうんじゃないかな? それに、すごく小さくて窮屈そうだよ」
「大丈夫だよ、二人ぐらいなら余裕で入れるさ。グズグズしていると、みんなが来ちゃうよ?」
本当だ。
耳を済ませたら、パパとママの声がする。
すごく怒ってる声だ。
「見つかったら、ぶたれるかも…」
「だろ? さあ、この中にかくれよう」
恭一君が箱のフタを支えてくれているうちに、ボクは中に入りこんだ。
続いて恭一君も入ってきて、寝ながらフタを閉めた。
箱の中は思っていたよりも狭くなくて、横向きに向き合ったまま、ボクと恭一君はクスクス笑いあっていた。
じっとしていると、箱のすぐそばでパパとママの声がしたから、驚いて口を押さえてたんだ。
「まったく、あの子ったら、どこへ行っちゃったのかしら? 大人しくしているように言ったのに」
ママの声だ。そうとうイライラしているみたいだ。
「だから、ちゃんと見ておくように言っただろう。子供が一人でじっとしていられるわけないんだ」
パパの声だ。ママに向って怒ってる。
「そんな事言うんだったら、自分で見てれば良かったじゃない!」
「何だと! 俺のおじさんの葬式だぞ。親戚連中の顔だってある。子供の面倒ばかりみているヒマなんてないだろう」
「あたしだって、あなたの親戚の手前、手伝いもしないであの子の世話なんてしてられないの、分かってたでしょう!?」
もう、ボクの事なんかそっちのけだ。
自分達の事だけでケンカしてる。
パパとママのすぐそば、となりと言ってもいいほど近くの箱の中にボクはいるのに、二人とも気が付かないんだ。
ヘンなの。
まるで、ボクなんかいないみたいだ。
箱の中で向かい合っている恭一君が、ボクの手をキュッとにぎってくれた。
「大人って、勝手だね。自分達の都合で、子供を振り回しておいて、子供が自分の言うとおりにしないと怒るんだ。『お前のためだ』とか言ってさ。本当は、自分達のためなのに」
恭一君の言っている事は、ボクには良く分かった。
ボクもそう思っていたから。
「仕方ない。いつまでも、こうしているわけにもいかんだろう。そのうちに出てくるさ。それよりも、そろそろ収骨の時間だぞ」
「……そうね。隠れるのに飽きたら、自分から出てくるわね。そうしたら、うんと叱ってやるんだから」
そう言うと、パパとママの声と足音が遠くなっていった。
「もう出ても、大丈夫かな?」
「まだだよ、今出て行ったら、見つかっちゃうよ。そしたら、君のママはすごく怒るだろうね」
さっきまでのママの声を思い出したら、たしかにそうだと思った。
もう少し、心配させてやろう。
ボクは恭一君と目を見合わせて、クスクスと笑った。
「ボクね、友だちがいなかったんだ。だから、君と友だちになりたいんだけど、いいかな?」
「なに言ってるんだよ? ボク達、もう友だちじゃないか。だから、こんな箱の中に一緒にかくれているんだろ?」
「そっか。ボク達、もう友だちなんだ」
恭一君はうれしそうに、そう言って笑った。
「ボクのパパとママはね、ボクの事を『いらない』って言ったんだ。パパはお酒を飲んで、よくボクをぶったよ。ママは、パパの機嫌が悪いのは全部ボクのせいだって、やっぱりボクをぶったんだ」
恭一君が話し始めた。
「それでね、ある日、パパはお酒の飲み過ぎで歩いているところを、クルマにはねられて死んじゃった。ママはね、パパのお葬式が終ったら、知らない男の人と出て行っちゃったんだ」
なんだろう。
箱が動いたような気がした。
「ボクはさ、すぐに帰って来てくれると思ったんだ。ボクの事を置いて、ママがどこかに行っちゃうことなんてないと、そう思ってたんだ」
気のせいじゃない。
この箱、動いている!
「ねえ、恭一君! ヤバイよ、この箱。早く出ようよ!」
ボクはあせって、箱のフタを開けようとした。
その手を、恭一君の冷たい手が押さえる。
「ダメだよ、開けたりしちゃ。みんなに見つかっちゃうじゃないか」
おかしい、恭一君、おかしいよ!
「出なくちゃ! この箱、どこかに運ばれちゃうよ。恭一君!」
恭一君の手をふりはらって、箱のフタを開けようとボクは必死になった。
「ダメだったら。どこへ行くのさ? ボク達、友だちだろ?」
「ねえ、恭一君。『かくれんぼ』は、もう終りにしようよ」

ボクと恭一君を入れた箱は、ガラガラと音を立てて動いていく。
「ボクはね、ずーっとずーっと待ってたんだ。でも、ママは帰ってきてくれなかった。食べられるモノは、なんでも食べたよ。生の野菜とか、お肉とか。ボク、料理はできなかったからさ。マヨネーズにケチャップにソース、全部なめた。さすがにおしょう油は、ノドがかわいて仕方なかったけどね」
何事もないように、恭一君の話は続く。
でも、その話、おかしいよ。
「冷凍庫に入っていた冷凍食品も、そのまま食べた。マーガリンとか油もなめた。ゴミの中から、食べられそうなモノを探して食べた。でも、そんな事をしてたら、すごくお腹が痛くなっちゃって」
ボクの手をつかんでいる恭一君の手、どうして氷みたいに冷たいのさ?
ママの『冷え性』だって、こんなに冷たくないよ。
「トイレに行っても、ボクのお腹の痛いのはなおらなくて。お薬の入っている箱は、タンスの上に置いてあったから、ボクには手が届かなかったんだ。痛くて、苦しくて、悲しくて……」
ボクの手をつかんでいる、恭一君の手。
それを見て、ボクは悲鳴をあげそうになった。
カサカサに乾いて、干からびた、骨と皮ばかりの手。
指先の爪が、所々はげている。
驚いて恭一君を見ると、ガイコツみたいな顔に真っ黒な穴が、目のある場所に開いている。
「うわわぁぁぁぁぁぁ!!!」
ボクが大声でさけんだ瞬間、どこかで重たい音がひびいた。
ガコオオォォォン……。
「なに? なんの音?」
おびえて視線を動かすと、恭一君の声がした。
乾いてカサカサになった恭一君の口が動いている。
「もう、戻れないよ。あの音は、火葬炉のドアが閉まった音だよ。もうすぐ、火がつけられるんだ。ね、一緒に行こうね」
「イ、イヤだ! 出せ! ここから出せよ! ボクはまだ死んでない!!」
ボクは狂ったように箱のフタを手の平でたたいた。
「パパ! ママ! ボクはここだよ! 分かってよ、パパぁ! ママぁ!」
「むだだよ、聞こえやしないって。ボクが苦しんだ時だって、ダレも助けてくれなかったんだ。一人で死んでいくのはイヤだなって思ってたけど、君が一緒に逝ってくれるから、もうさびしくないや。だって、ボク達、『友だち』だろ?」
「パパぁ!! ママぁ!! 見つけてよぉ! ここだよぉ!」
にぎりこぶしで、皮がこすれて血が出るまでフタをたたいたけど、全然開かないんだ。
どうしよう、どうしよう!?
箱のまわりで、ボッ!という音がした。
すぐにヘンなニオイがしてくる。
ケムリが箱の中に流れこんでくる。
「イヤだよぉ! まだボク、生きているんだよぉ! パパぁ! ママぁ! ちゃんと言うこと聞くからさぁ! もう、パパとママの言いつけを破ったりしないよぉ! だから、助けてぇぇぇぇぇ!!」
フタをたたき続けるボクの体に、恭一君が──恭一君だったモノがからみついてくる。
「むりだってば。さっき、君も聞いただろ? 大人達はボク達子供の事なんて、どうでもいいのさ。自分達の都合が一番大事なんだから。ボクはうれしいんだ。君みたいにステキな『友だち』ができて」
「ゴホッ…ゲホッゲホッ…く、苦しい…熱いよ…」
木で出来た箱が、茶色く変色し始めている。
熱いよ、熱いよ……。
「うれしいな。ボクの『友だち』だよ。ずーっと一緒だからね」

「あの子ったら、いつまで隠れているつもりなの? どこを探してもいやしないんだから」
二階の女子トイレと男子トイレをのぞいて、母親は怒りを込めて呟いた。
「いたか?」
一階を探していた父親が、廊下を慌しく走ってくる。
「どこを探してもいないのよ。まったく……どこに隠れたんだか」
「親戚連中には、先に戻ってもらう事にしたよ。いつまでも待たせるわけには、いかないからな」
「ええ、しょうがないわね。本当に……いつまで経っても、帰れやしないじゃないの」
その時、建物全体が騒がしくなった。
バタバタと職員や関係者らしき者達が何かを口走りながら、建物内を右往左往し始めた。
「何事なの? 騒がしいわね」
母親が眉をひそめると、父親が何でもない事のように口を開いた。

「ああ、何でも親に放置されて餓死した子のお棺に、子供二人分のお骨が入ってたらしいぞ」

「何だ、そんな事? それよりも、あの子ってば、どこへ行っちゃったのかしら? いい加減に出てきて欲しいわ」



最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございます。
自分で思っていたよりも、生臭い話になってしまいましたね。
ずーっと「ホラー」を書きたくて、思い付くまま勢いで書き上げましたが……。
奇しくも、この「かくれんぼ」の結末を書いていたときに、福岡の小1男子殺害の犯人が逮捕されたニュースが流れました。
……犯人は「母親」。
「まさか!?」と言う思いと、「やっぱり、そうなの?」と言う思い。
子供にとって、最も心強い味方であるべき「親」が、最も恐るべき敵になる。
年々、そんなニュースが増えていきます。
幼い命が無惨に奪われる、哀しいニュースが一件でも減る事を祈って……。
2008.9.22

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