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短編  「小さな花や」

短編小説
その他
オリジナル
2016年11月23日 11:33 公開
1ページ(1601文字)
完結 | しおり数 0


toritara

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「小さな花や」

それは突然に訪れた。彼女の余命があと一カ月なんて、どうやって信じろと言うのだ。
僕は彼女が入院している病院へ駆けつけた。
点滴やら何やらで何本ものチューブで繋がれた彼女を見た時、言葉が無かった。

僕は毎日、彼女を見舞うと彼女は儚げな笑顔で僕を迎えてくれた。
時間ぎりぎりまで病室の彼女と何気ない会話をして駐車場に戻る時、
「私ね、ひまわり畑に一緒に行ってみたかった」
彼女がぽつりと呟いたのが聞こえた。
そう言えば以前、一面ひまわりのポスターを見て彼女が
「わぁ 凄い!! 今度、ここに行こうね」って言っていたのを思い出した。
その時は別にどうとは思わなかったけど今となってはあの時、仕事の忙しさににかこつけて出かけなったことを悔やんだ。

ひまわりかぁ

誰に聞こえる訳でも無い独り言を言いながら駐車場に向かった時、ほんの少しの灯りが見えた。
駐車場脇に小さな花屋が。
病院の駐車場の脇に一軒の花屋がある事に気が付いた。
何時も仕事帰りなのでもう面会時間の制限時間ぎりぎりに病院に着き、走って病室へ向かうのでそんな小さな花屋なんて気が付かなかったのだ。
あれ?ここに花屋なんてあったのかなって不思議に思いながら通り過ぎようとしたら店内から鮮やかな黄色の花がこちらを見ているような気がした。
毎日、その花屋の前を通り過ぎながら彼女の病室へ通う日が続いた。

もう・・・ そんな予感がした日は丁度仕事が半ドンだったので早めに彼女の所へ。

駐車場脇の小さな花屋は今日も店先に沢山の黄色に輝くひまわりの花を並べているのが見えた。
僕は迷わず
「すみません、このひまわりの花を全てください」
店員は穏やかな笑顔を見せて
「どなたか、このひまわりの花が好きなんですか?」
「はい 僕のとても大切な人が・・・」
「そうですか」
店員はそれ以上何も云わずに一本だけ残して全てのひまわりの花を束にして、彼女の好きなオレンジ色のリボンで絡げてくれた。

僕がひまわりの花束を抱えて病室に入ると消え入りそうな笑顔で彼女は
「嬉しい、ひまわり畑に行ったみたい」
そう一言云うと静かに目を閉じた。
ひまわりの花束に囲まれた彼女は穏やかで嬉しそうな笑顔だった。

それからどうなったのかよく分からないけど、彼女の両親や親せきやらが病室を埋め尽くしたので僕は静かに廊下に出た。

どうやってこの胸の怒りやら悲しみを消せるのか分からないまま、駐車場に向った。
涙で滲む世界は彼女を失った悲しさで歪んで見えたけど駐車場に着くとその光景に息を飲んだ。
あの花屋が無い。
さっきまであったのに、ひまわりの花をここで買ったのに、その花屋が無い。
涙の跡がまだ残っている頬をパシンと叩いてみた。

痛っ

確かに僕は生きているし痛さも感じる。一体どうなっているんだ。
店の跡らしき所は雑草が生えていてもう何年も空き地だったことを教えてくれている。
暫くそこで立ちすくんでいるとまだ蕾みの花の苗が一本すくっと空に向かって生えているのが見えた。

あっこれはひまわり。

あの時、店員が一本だけ残しておいたひまわりなんだろうか。
僕はがむしゃらにそのひまわりの苗の根を掘り起こし、タオルで根を包むとそれを車に乗せて持ち帰り、
家の僕の部屋の前に植えた。

僕はこのひまわりを大事に育てて種を取り、庭中をひまわりだらけにするから空の上から待っていて。
君が一緒に見たいと言っていたひまわり畑、来年ここで一緒に見よう。
ここが僕と君のひまわり畑になるから。

一年後、僕の家の庭は見事なひまわり畑になった。
「わぁ、凄い!! こんなひまわり畑に来てみたかった」
そんな明るい声が垣根の向こう側から聞こえて来た。
声のする方を見ると、彼女によく似た同じ年頃の女性が微笑みながら立っていた。
                 終

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