メクる

　東の海より生まれた四つの季節を持つちいさな島国。そこでは、始祖神と血縁関係を抱く神皇帝(しんのうてい)が最高権力者として政治を執り行っていた。

　ときは名治(めいじ)、皇(すめらぎ)一族に属する現在の帝は帝都清華(ていとせいが)と古都律華(ことりつが)と称されるふたつの華族集団がつくりあげた政界派閥を重用して国としての機能を安定させていた。
　だが、古都律華の御三家のひとつである伊妻(いづま)が国の北に位置する北海大陸で反乱を起こしたことで帝都清華の五大公家と呼ばれる新興勢力が頭角を現していく。
　反乱はすぐに押さえつけられたものの、それ以来、北の大地に春が訪れなくなってしまったという。

　伊妻の乱からおよそ二十年。この物語は帝都清華の五大公家に属する空我(くが)伯爵家の愛妾の娘、桜桃(ゆすら)が何者かに襲撃されたことからはじまる。
　北の大地でくすぶっていた反乱軍の残党が春喚ぶ天女の存在に気づいたのだ。
　桜桃は此の世に栄華を招く天神の娘と呼ばれ、皇一族よりも巨大なちからを秘めている存在だったのである。

　――天女を孕ませ春を喚んだ者こそ、此の世の栄華を極めることが叶うという。
　狙われた天神の娘である彼女を守るため、また政府に敵対する組織を壊滅させるため、帝の第二皇子である小環(おだまき)は花嫁修業のために設立された全寮制の女学校へ女装して潜入することに。
　あわよくば彼女を孕ませろ(・・・・)という父帝の命令をのらりくらりとかわしていたけれど、彼女は異母兄からも強く求められていて……

　果たして陰謀渦巻く北の伝説の地で同室(るーむめいと)として過ごすことになったワケありなふたりを待つ運命とは？


　＊　＊　＊　＊　＊


　読み方は「このはなてんにょ　はるよぶちぎり」です。
　別サイトさんで掲載していた少女向け作品をTLバージョンにしました。
　あれこれアダルティに大幅改稿予定です（笑）。
　週に一回くらいのペースで掲載していければなぁと思います。