メクる

累計 14517931 スキ
BL・アダルトの
切り替えはこちら

卒業前線

短編小説
恋愛
BL オリジナル
2017年03月17日 01:04 公開
1ページ(1131文字)
完結 | しおり数 0

別れの季節に、卒業前線。

夏木ほたる

  • 閲覧数

    218

    745位

  • 評価数

    15

    481位

  • マイリスト

    0

    766位

フォント
文字:--%
行間:--%
 


 卒業した。終わってみると呆気なかった。

 別に高校三年間がつまらなかったわけではない。人並みに部活も勉強もして、友達と馬鹿騒ぎもして、同じくらいに叱られた。それから、恋だってしていた。遊びの延長のようなバドミントン部に後悔なんてなにもないし、赤点だってギリギリ取らなかったし、騒いで怒られたのだって今となってはいい思い出だ。
 思い残したことなんて、何もない。ただ一つ、いや、ただ一人を除いては。

「このままカラオケ行こーぜー!!」

 三年間つるんだメンバーが校門の近くで盛り上がるのを横目に、俺はちらっと校舎を見上げる。

「ごめん、俺教室に忘れ物した、かも」

「はー? まじかよ!」
「アホー!」
「早く取って来いよ~」

「カラオケ先行ってて!」

 ぎゃはぎゃはと笑う奴らに適当に手を振って、俺は急いで教室へ向かった。在校生も用のない、校舎の隅の、化学準備室。


「……っ!」

 足が縺れて転びそうになりながらも、ポケットから出した鍵でそのドアを開けた。一階の日も当たらないここは、いつ来ても少し冷たい感じがする。その窓際で何を見るでもなくぼーっと突っ立っている、見慣れてしまった人影が一つ。

「卒業おめでとう」
「……」

 ほんの少しも、嬉しくなかった。

「僕は少し寂しくなるなぁ。もう君がここに来ないなんて。最後の思い出作りにでも来てくれたの?」

 平坦な台詞と笑顔。不覚にも、泣きたくなった。

「冗談でしょう。寂しいなんて。それに俺は、最後に文句を言いに来たんです」
「文句?」

 先生は少し困ったように笑った。

「俺の高校生活、先生のおかげで無駄になったんです。二年以上も先生のことばかり考えて、男同士のセックスまで教えられて、本当に、滅茶苦茶でした。先生が俺に構わなければ、こんな気持ちにならずに済んだんです。どうせ終わるなら、先生となんか会わなければ、良かった。男……なんかを、こんなに好きになるなんて。俺の青春どうしてくれんだよ……ッ!」

 思わず流れてしまう涙に伸びてくる先生の手を払って、自分で目を擦る。八つ当たりでも、なんでもいい。口にしないと断ち切れない。

 卒業まで、と初めから決まっていた。先生と俺のこの関係。今日俺は、先生から卒業する。

「――」
「先生!」

 俺の名前を呼ぼうとする声を遮って、大声を上げた。いつものように声を押し殺す必要は、もうどこにもなかった。

「今まで、ありがとうございました。……ッ先生のこと、本当に……大っ嫌い、でした」

 握りしめていた準備室の合鍵を、未練がましい心と一緒に床に放り投げる。
 
 卒業した。
 終わってみると、呆気なかった。

 

スキを送る

累計 210 / 今日 0


残スキ 300

『スキ機能』とは?
『スキ機能』とは『スキ』ボタンを押すことで作品や作者を応援できる機能です。
※拍手機能に類似した機能です。

[スキ機能のルール]
※1人あたり1日に300回まで『スキ』を送ることができます。
※1作品でも複数作品でも合計が300回まで『スキ』を送ることができます。
※『スキ』は1スキ、『大スキ』は10スキ、加算されます。
※1日に与えられるスキの数は毎朝4時にリセットされます。
※自分の作品にはスキ機能は利用できません。
※『スキ』は匿名で作品に送られます。

スキ!を送りました

作品を評価する

夏木ほたるさんを

フォローしたユーザーの
作品投稿やつぶやきなどの最新情報を
マイページでチェックできます

マイリストに登録する

この作品につぶやく

このつぶやきは「BL」に分類されます

#卒業前線
 

500

みんなのつぶやき 一覧

イメージレスポンス(0) 一覧

この作品へのイメージレスポンスはありません

タグ一覧 編集

この作品にタグはありません

友達に教える

  • ツイートする
  • イイネ
  • なうで紹介
  • はてなブックマーク
  • GoogleOne

この作品を見た人はこんな作品も 一覧

作者の投稿小説(15) 一覧

作品登録マイリスト 一覧

登録された公開マイリストはありません

その他


コーナー R

作品宛みんなのつぶやき

もっと見る

作者の他の作品一覧

一覧を見る

copyright (c) 2013-2017 メクる Co.,Ltd. All rights reserved.