明日元カレが結婚します
オリジナル
2017年03月19日 23:04 公開
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「俺、今夜で独身最後の夜なんだ」
いつもの夜に、いつもの場所で突然切り出された言葉。
人気のない小さな小さな空き地は、2人だけの秘密の場所。
辺りに民家もなく、静まり返ったその場所に彼の声は良くとおった。
「え?」
確かに、私と別れて3年。すでに新しい彼女が居たのは知っている。
でもこうやって偶に会ってくれる事に僅かな期待を込めていたのも事実。突然の事に頭がついて行かない。
「泣くなよ」
呟くように言われたその言葉を聞いて、目頭がカッと熱くなったが泣くもんかと自分に言い聞かせる。
「泣いてないよ」
こんな強がりを言ってるけど、本当は大声を出して泣きたいよ。
「じゃあ、明日届けを出しに行くんだ?」
「休みだからね」
いずれこの日が来るとは思っていたし、部屋で予行練習を何度もした。
毅然とした態度でいられるように。
「…もう、書いたの?」
「いや、帰ってから書く」
予行練習なんて、無駄だったみたい。
あんなに沢山考えたセリフが全然浮かばないんだから。
「お前も早く彼氏見つけろよ」
何度も言われた言葉。
言われるたびに傷付くけど、彼はまったく気付いてくれない。いや、もしかしたら気付いていて言っているのかもしれない。中々前に進めない私の背中を押すために。余計なお世話だよ。
「そのうちね」
そして、この答えも何度言ったことか。
そういえば、なんて全く違う話題を出して突然話を晒してみる。
彼もなんとなく気まずい雰囲気に気付いたのだろう、何も言わずに私の話を聞いてくれる。
沈黙が怖くて必死に話題を考えているのに、やっぱり会話がうまく続かない。
そして、少し肌寒くなってきた時に彼が立ち上がった。
「そろそろ帰るか」
今一番聞きたくなかった言葉
だって、家ではあの人が待ってるんでしょ?
私の場所だったのに。帰ったらもう二度とこうやって会ってはくれないでしょ?お願い、行かないで…
「…ねえ、最後に抱きついても良い?」
最後。自分で言っておきながらその言葉に胸が締め付けられる。本当は最後なんて言いたくない。
でもそう言わないと、もう触れることすら許されない。大きな体に後ろから回した両腕にギュッと精一杯の力を込める。自分の思いが少しでも伝わりますように。
ボロボロと溢れてきた涙を悟られないように必死で彼の服を握る。
離れたくないよーーー
ゆっくり振り向いた彼に顔を見られないように俯く。
「泣くなって」
今度は震える声を聞かれたくなくて、強がりも言えない。
正面から抱きしめてくれる彼の温もりに懐かしさを感じながら彼の手を握る。
そっと彼の掌に唇を押し当てて決して言葉にできない想いをのせた。
「…ばいばい」
やっと絞り出せた言葉はたったの4文字。
涙でグシャグシャの顔で必死に笑顔を作る。
最後の私の顔は、あなたが好きだと言ってくれたこの笑顔でいたいから。
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