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父の農園

短編小説
童話・絵本
オリジナル
2017年04月11日 07:57 公開
1ページ(1077文字)
完結 | しおり数 0


ck2

表紙提供:by neco
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去年の5月は何をしていたっけ。ふと手にしている本を閉じ自分に問いかけた。
そうだ思い出した、入院していたのだ。今まさに読んでいる本の一節に病院へ行く描写があり思い出したのだった。

入院。たいしたことではないのだけれど、風邪をひいたままにしていたら、だんだんと咳がひどくなり、病院へ行ってみたら肺炎と診断され、そのまま入院となった。
入院していたことをだんだんと思い出す。
私は病院で出されるごはんがすごく好きだった。栄養が満ち足りている気がして、いかにも健康によさそうな食事だと思っていたからだ。
胸がいたくて、食欲も落ちていたが、ごはんを残すのがもったいなくって頑張って食べていた。
入院中は家族のほかに、入院を知らせた親しい友人が見舞いに来てくれた。お花もいっぱいもらって、病室は華やかでとても居心地が良かった。

私は比較的早く回復し、退院した。

そうか、退院してからもう一年も経ったのか。
この一年で私が変わったことといえば、勤めていた事務の仕事を辞め、父母の仕事を手伝うようになったことだ。
私の実家はリンゴ農園を営んでおり、私は農園を継ぐ気は全くなかったのだけれど、(何しろ三人兄妹の末っ子なので)歳を重ねていくうちにモノづくりの面白さに興味を持ち、家族で話し合った結果、私が家業を継ぐことになったのだ。

5月になるとリンゴの木は白い花を咲かせる。そして蜂に受粉をさせるのだ。
また、リンゴの花がさくと「摘花」をする。1つの実を大きくさせるために余分な花を摘み取り、栄養を集めさせるのだ。
私は幼い頃からこのリンゴの白い花が好きだった。摘んでしまった花を1つ2つ集め、押し花にし、しおりを作った。そのしおりは今も使っている。

父がよく言うセリフに、「リンゴは土で決まる」というのがある。無農薬で育てているリンゴは、手入れが大変で、一日たりとも休める日がない。だからか、私の入院中、母は見舞いに来ても、父は一度も訪れて来なかった。

農園は父のすべてなのかもしれない。父の父自身を表現する唯一の場所。入院中は見舞いに来なかったのが不思議に思えたが、私が農園を手伝うようになってから、のびのびと作業する父を見て、「これは見舞いに来ないなあ」と、妙に腑に落ちてしまった。父はこの農園を愛している。
私も農園は好きだし、それなりに愛着もある。しかし私は父のようになれるだろうか。
風邪もひかないよう健康を維持し、農園のために生きる。そんな感覚にいつか、なれるのだろうか。

今年も白い花が咲いて、父は無言でリンゴ畑に語りかけ、花を摘んでいる。

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