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恋文とキスの日 2017

短編小説
恋愛
BL オリジナル
2017年05月23日 00:00 公開
1ページ(2439文字)
完結 | しおり数 0

毎年恒例、恋文とキスの日短編です。 表紙:杜祥うよみさま

まこと

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20年以上文通していた幼馴染と会える。
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ねえ、なかないで。




夢の中、記憶にある声がする。




なかないで、わらって。
すきだよ。
ずっときみがすき。
おてがみかくから。
いっぱい おてがみかくから、おへんじちょうだいね。

なかないで。
えがおのおなじまいを あげる。

しってる?
ちゅうは、えがおのおまじない なんだよ。
それでね、すきすきのちゅうは、おかおなの。
ほっぺでしょ。
おでこでしょ。
おはな。
おめめ。
いちばんきくのは、くちびるでね。
でも、くちびるはとくべつなの。
あいしてる の ちゅうなんだよ。
キスっていうんだって。

ホントにホントに、とくべつの ひとだけなの。
ママのくちびるには、パパしか しちゃダメなんだって。
ぼくもダメなの。
キスしていいのは、ほんとに すきなひとだけ なんだって。

だけどいいよね。
だってすきだもん。
ぼくは きみ がないてるのは いやだから、いちばんきくおまじない、していいよね。

ぼくのくちびるに、キスしていいのはきみだけ。
ぼくのとくべつ。
だいすきよりも、もっとすき。




ぽかりと目をあいたら、そこは一人暮らしのアパートの部屋。
初夏の休日。
時計を見たら、もう、いい加減昼も近い時間になってしまっていた。
同じ建物のどこかで、ガタガタと音がしている。
オレは、夢の中みたいな小さな子供じゃなくて立派な成人で、ベッドの上に寝っ転がったまま、掲げた自分の手を眺めてふふふと笑った。

すごく懐かしい夢を見た。
オレの家の引っ越しが決まって、オレが大泣きした時の夢。
幼馴染が必死に慰めてくれたっけ。
おまじないだといって、顔のあちこちにキスをくれた。
あの時、幼馴染に教えられたことを長いこと信じてた。
中学くらいまで唇だけが「キス」で他の場所に唇をつけるのは「ちゅう」だと思ってたんだよな、オレ。
掲げていた手を下ろしたら、かさりと紙の音がした。

ベッドの上に散らばった、たくさんの手紙。

嬉しくて眠れなくて、それならいっそと引っ張り出して読み直しているうちに、ベッドの上に散らかしたまま眠ってしまったらしい。
よっこいせと体を起こして、周囲に散らばった紙を集める。
約束通り、幼馴染から送られてきた手紙たち。
最初の方はほとんどが絵。
それから暗号解読かよっていう感じの、鏡文字の混じったぎこちない文字の。
しばらくしてからは撫でた手に黒い粉が移るくらいに、高い筆圧で必死に書かれたたどたどしい文章の手紙。
文章にアニメや漫画やロボットの絵が混じるようになって。
一筆箋送るならはがきの方が安いんじゃね? っていう、ぶっきらぼうなのがあって。
メールと混在するようになって回数が減ったけど、結局温度が感じられる文字が恋しくて、やめられなかった。

もう二十年以上続いている文通。

途中で顔を合わせたのは、二・三度だけで、ホントは幼馴染といっていいものかどうかも怪しい気がしている。
それでもこうやってずっと続けてきた。
幼馴染と街で会ったとしたら、すぐに判別はつかないと思う。
顔は覚えてない……多分、お互いに。
声もあやふや。
だけど、オレの好きな人。

手元に残ったのは、オレの宝物。

合コンを『好きな人がいる』そういって断ったら、会いもせずに文通だけでっていうことにあきれる友達もいた。
昔の人たちなんてそんなもんだったろ? っていい返して笑い飛ばした。
少数派なのは認めるけど、ない話じゃない。
気持ちがわかるんだよ、手書きの文字って。
この時は何かあったな辛そうだとか、会いたいってホントに思ってくれてるとか。
文字を見ればちゃんとわかるんだ。

『引っ越しが決まった。会いに行くよ』

そう書かれた最後の手紙。
予告された日付は今日。
楽しみで楽しみで、眠れなくて、結局これだ。

「さあて、と!」

起き上がって手紙を集めて、箱に入れる。
枕もとのカラーボックスの一段が指定場所。
勢いつけて部屋の掃除をしてしまおう。
それからシャワーを浴びて身支度。
待ち合わせ時間は午後の二時だから、慌てなくても大丈夫だろう。




そろそろ出かけなくてはいけないな、そんな時間に、玄関の呼び鈴が鳴った。
インターフォンなんていいものじゃない、ぴんぽーん、なんてめったに鳴らないかわいい音。

「はーい」

部屋の中から声をあげて、ドアスコープを覗く。

「下に越してきたものです」

同じ年くらいの男の姿。
どこか懐かしい感じがして不思議に思いながらドアを開けた瞬間に、押し込まれて抱きしめられた。

「え?!……ちょ、なに……」

じたばたと暴れるオレを、抑え込むように壁に押し付けると、男は耳元でささやいた。
ふわりと香る、覚えのある匂い。

「きたよ」

届けられる手紙に残っていた、幼馴染の匂いが確かにして、オレは動きを止める。

「きた」
「嘘……」
「ホント。やっと会えた」

手紙の文字で気持ちはわかる。
だけど、初めてリアルに感じた。
幼馴染の体温と存在。
抱きしめられて動きにくい手を動かして、幼馴染の頬に触る。
すん、と匂いを嗅いだ。

「顔、みせて……」

そういって体を離したけど、視界がぶれてちゃんと見えない。

「泣かないで」

笑いを含んだ声で、幼馴染がいった。

「泣いてない」
「すっげ、涙出てんだけど」
「泣いてない」
「泣くなよ。おまじない、してやるから」
「特別な?」
「君だけの、一番効くやつ」

玄関先で鍵もかけずに、唇を合わせた。
顔もろくに知らない、だけど誰よりもよく知ってる、大好きな人と。



二回目のまじないは全然効かなくて、オレは目を腫らすことになった。
けど、特別のキスはたくさんもらえて、これからもオレだけだって約束ももらえたから、それはそれでよし。

幼馴染は恋人になった。
だから今度からは、ただのまじないじゃなくて恋人のキスだ。


<END>

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