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金魚

短編小説
サスペンス
オリジナル
2017年07月13日 22:46 公開
1ページ(1642文字)
完結 | しおり数 0

世界観共有企画『七不思議商店街』のペットショップの不思議で話を書きました。

なめくぢみみず

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ほんとにこれ、世界観共有してる?
大丈夫?

参考文献
岡本信明、川田洋之助『ジャパノロジー・コレクション 金魚 KINGYO』(株式会社KADOKAWA 平成27年 7月25日)
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「ねぇ、私、金魚が好きなの」
私は父に言ったけれど、父は答えなかった。

私にとって、ペットショップで水槽の中の金魚を眺めるのが、一番の娯楽だった。
私は父と二人、時々ペットショップに行った。
金魚ほど、愛らしい生き物はそうそういないんじゃないかしら。
人に手を加えられ、掛け合わせられ、水槽の中でしか生きられない金魚。
人に頼らず生きていける金魚はいない。
なんて可愛らしいのかしら。
「鏡子、お前は本当に金魚が好きなんだね」
水槽の前で父が私の肩を抱き寄せて言った。
父は金魚を飼うことを許してはくれなかった。

私はベッドに眠る父に言う。
「お父さん、金魚ってたくさんいるけれど、胴の形で大きく四つに分けられるの。和金型、琉金型、オランダ獅子頭型、らんちゅう型。私はね、琉金型が好きなの」

この間、いつも通り隣で寝ていた父に起こされた。
「鏡子、おはよう。着替えておいで」
そう言って父は朝食を作りに寝室を後にした。
私は父の趣味の真っ白なネグリジェを脱いで、セーラー服に着替えた。
台所に行くと父は目玉焼きを作っていた。
「やっぱり鏡子はセーラー服が似合うね」
「うん。ねえ、お父さん、お母さんってどんな人だったの?」
「あのアバズレの話はしないでくれないか」
「うん」
朝食を二人で食べた。
それから家を出る準備をした。
「鏡子は美人だから悪い虫がつかないか心配だよ」
父が私に言った。
私は答えた。
「今日も早く帰ってくるから」
部屋の防犯カメラの映像は父のスマホから見られるようになっている。
私が部屋にいれば、父も安心するものだから。
だからその日もすぐに帰るつもりだった。
ほんの少しだけ寄るつもりで商店街のペットショップに行った。
やっぱり、金魚って可愛い。
私はぼんやりと金魚を眺めていた。
「あれ?鏡子さんじゃん」
話し掛けてきたのはクラスメイト数人。
私は言った。
「あら、こんにちは」
「鏡子さんも商店街の七不思議調べに来たの?」
「七不思議?」
「ここの商店街、七不思議があるんだって」
「そうなの」
「ペットショップでは水槽のあたりからヒソヒソ声が聞こえるらしいよ」
「まあ」
「でも、今日は人が多いし、声は分からなそうだね。私達出直すわ」
「そう、じゃあね」
私は誰もいない水槽の前にいたこともあったけど、声なんて聞いたことなかった。
ペットショップを出て家路に急ぐ。
クラスメイト達が前の方で会話しているのが聞こえた。
「鏡子さんってなんかキモくない?」
「ぶりっ子だよね」
「あー、そうかも」
そのクラスメイト達を追い越して家へと走った。
気が付くと、口から鉄の味がした。
唇を強く噛みしめていたみたい。
父が口の傷を見たら……きっと心配する。
私は思った。
水槽の金魚は大切に育てられる。
それは愛玩されるため……。

「ねぇ、お父さんにとって私って何だったの?」
ダブルベッドに眠る父を揺すった。
私の真っ白だったネグリジェは今や血でまだらになっている。
更紗の金魚みたい。

今日の夕方、私はペットショップにいた。
金魚の水槽の前でずっと立っていた。
七不思議のことを思い出していて水槽の周りを眺めた。
人気はなかった。
声も聞こえない。
もし金魚が喋ったらなんて言うかしら。
そう思って私は金魚の水槽に耳をあてた。
泡の音の中で、かすかに何か言っている声がした。
「か、わ、い、そ、う、に」
そう言われているのだと気付いて、私は逃げるようにペットショップを飛び出した。
何故?
誰が可哀想なの?

「ねぇ、お父さん、私、可哀想な子だったの?」
私は父の胸を貫いていた包丁を抜く。
血しぶきが顔にかかる。
金魚が好きなわけではなかった。
可哀想で惹かれたのだ。
人の都合で形を変えられていった金魚。
人の世話なくては生きていけない金魚。
「ねぇ、父親に抱かれて、父親の理想を押し付けられた私は、可哀想な子だったの?」
父は答えてくれない。

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  • 鍔木シスイ 07月15日
    このつぶやきにはネタバレが含まれている可能性があります[表示]
    なめくぢみみずさまの「金魚」を読んで。
    その人を「かわいそう」だと決めるのは、いつだって他人だから、自分ではわからないものだよなあ、と思います。
    愛玩のために生み出された金魚と、父親のために生きてきた主人公。
    その二つの境遇がうまく重ね合わされて、悲しくも美しい、けれどちょっと不気味な話になっている、とドキドキしながら読みました。
    素晴らしい作品だと思います。
    (ネタバレ)
     #金魚
    詳細・返信(2)
  • なめくぢみみず 07月13日
    小説「金魚」を公開しました!
    あれです。
    世界観共有企画『七不思議商店街』のやつです。
     #金魚
    詳細・返信(0)

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作品宛みんなのつぶやき

  • 鍔木シスイ 07月15日
    このつぶやきにはネタバレが含まれている可能性があります[表示]
    なめくぢみみずさまの「金魚」を読んで。
    その人を「かわいそう」だと決めるのは、いつだって他人だから、自分ではわからないものだよなあ、と思います。
    愛玩のために生み出された金魚と、父親のために生きてきた主人公。
    その二つの境遇がうまく重ね合わされて、悲しくも美しい、けれどちょっと不気味な話になっている、とドキドキしながら読みました。
    素晴らしい作品だと思います。
    (ネタバレ)
     #金魚
    詳細・返信(2)
  • なめくぢみみず 07月13日
    小説「金魚」を公開しました!
    あれです。
    世界観共有企画『七不思議商店街』のやつです。
     #金魚
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