メクる

朝顔が咲く初夏の朝。
おじいさんは縁側に腰掛け金魚鉢の金魚を眺めていた。
そこに三毛猫のタマがおじいさんの足元にやって来た。
タマはここで飼われているわけではないが、おじいさんが縁側にいると膝の上に乗りにやって来る。

「タマや…金魚に悪戯しちゃいかんぞ」

おじいさんはタマを膝の上に乗せて言い聞かせた。

『おじいちゃんには悪いけど、こんな美味しそうなご馳走を前に我慢出来ないニャ～』

しかし、タマは目を輝かせておじいさんの膝の上で機会を伺う事にした。

「お茶を入れて来るから大人しくしていろよ」

しばらくしておじいさんは縁側から離れた。
タマはこれはチャンスとおじいさんがいた座布団の上に座り込んで金魚鉢に狙いを定めた。
中の金魚に気付かれない様にゆっくりと金魚鉢に近付き、前足を金魚鉢に掛けた。


『貰ったニャ！』

その刹那、タマは宙に浮いた。足をバタバタさせているとタマの目の前におじいさんの顔が現れた。

「タマ！悪戯するなと言っただろ
お前にこんな事言っても分からないだろうけど、この金魚は孫から貰った大事な金魚なんだ
コレをやるから我慢しろ」

おじいさんはお茶と一緒にタマのオヤツも持って来ていた。
おじいさんはタマを膝の上に乗せてオヤツをあげた。

『まっ今回はコレで良いかニャ』

タマはオヤツを食べながら、金魚鉢をチラ見していた。



おしまい。