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噂はあてになりません。

短編小説
ファンタジー
オリジナル
2017年08月26日 23:34 公開
1ページ(1892文字)
完結 | しおり数 0


深森 真夜

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勇者と魔王のコメディー。
試しに投稿してみたやつです。たぶんそのうち長編にして真面目に書きます。たぶん。
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 重厚な鉄扉の前で、一人の青年が剣を手にした。
 今まで感じたことのない恐ろしいオーラを漂わせるその扉に手をかけ、一気に開け放った。

「民を脅かす魔王よ!この勇者の手によりその罪を思い知……っ!?」

 扉の先の光景に、青年……勇者は、思わず言葉を途中で切り、呆けてしまう。
 勇者が見たもの、それは……



 光沢のある真っ黒な玉座に腰掛け、手に持つパンに大口でかぶりつこうとしている少年だった。



 ふわふわとした黒髪は乱雑に切られ、その瞳まで闇夜のように深く黒い。しかし光が宿っており、勇者の村で見る子供たちと同じ純粋さを感じられる。
 勇者の姿を見て動きを止めた少年だが、沈黙の末思い切りパンを頬張った。
 それはどうやらクリームパンのようで、パンの端から溢れ出たクリームが唇についてしまっている。
 ぺろりとクリームを舐め上げてから、少年は恍惚とした表情で

「おいひ~」

 と呟いた。
 その姿に毒気を抜かれ、勇者は肩を落とす。
 なんだか、格好がつかないなぁ……
 深いため息を付きながら、勇者は頭をポリポリとかき、少年に呆れの眼差しを送る。

「君、そんなところで何をしている?ここは魔王の城だぞ?子供がいていい場所じゃない。」

 その言葉に再びぴたりと動きを止め、少年は勇者を見据えた。
 まるで何を言っているんだこの人は、とでも言いたげな表情で、少年は爆弾を落とした。

「主が家にいて何か問題でも?」

「……は?」

 それだけ言うと、少年は残りのクリームパンをすべて平らげる。
 一方の勇者は、口をパクパクとさせるだけで声を発することができない。
 少年の言葉が示すもの、それは……少年が、魔王であるということだ。

「いやいやいや、はぁ!?君が魔王?冗談も大概にしなさい、魔王はもっと、こう……がっちりとした大きな体躯で、真っ黒な角が二本生えていて、恐ろしい大きな尻尾が生えていて、毒の息を吐くんだろ!?」

「それ、嘘だよ。僕が流した嘘。」

「嘘ォ!?!?」

 口をあんぐりと開けて呆ける勇者に対し、少年……魔王は、ふわふわとした自身の黒髪を指先で弄んでいる。

「だってさぁ、人は恐れる者に近寄らないじゃん?そうするためにわざと魔王は恐ろしいという嘘をばらまいたんだよ。」

「なっ、だっ、なんだってお前みたいな子供が魔王をやってんだよ!?」

「なんでって、前魔王の息子だからさ。あーあ、本当にやんなっちゃうよね。血筋がどうのっていう理由だけで魔王に祭り上げられてさ。僕はただ静かに暮らしたいのに。それより、なんで君は僕のところに来たわけ?」

「それは、お前が余計なデマを流すから民が怯えて仕事にもなんねぇからだよ!!まったく、噂は尾びれも背びれもつくってことを知らんのか……」

 深いため息とともに吐き出された言葉は、魔王の瞳を歪ませた。
 服の袖を強く握りしめると、魔王は先ほどとは打って変わり、どこか悲しそうにつぶやいた。

「知ってるわけないじゃん……今までずっと…一人、だったんだから。そんなこと教えてくれる人なんて、誰も……」

「………」

 その言葉を聞き、勇者はここに来るまでの道のりを脳裏に思い浮かべた。
 普通なら何百体もいるはずの魔物が一匹もおらず、戦闘どころか仕掛けすらなかったのだ。
 ……その理由は恐らく、前勇者が前魔王軍を殲滅したからであろう。
 その時にはもうこの幼き魔王は産まれていて、前魔王はこの小さな子供にすべてを託した。
 時が経ち城の魔術師が魔王復活を予言したため、各地の猛者が勇者を名乗り出た。
 しかしどういうわけか俺にその座が回ってきて、渋々承諾したのだが……
 まさかこんなことになるとは。
 
 俺は、何もしていない幼き少年を切り捨てられるほど、残虐な人間ではなかった。

「だがしかし、嘘をつくのは褒められないなぁ?魔王。」

「…何?急にやる気になって。いいよ、やるならやれば。僕はもう、何にも期待していない。」

「……魔王。お前は確か、そんなことを教えてくれる人なんて、誰もいなかった。そういったな?」

「言ったけど。それが何?」

 投げやりな態度に三度ため息を付いた勇者であったが、すぐにその表情を悪戯する前の子供のように歪ませた。

「俺が教えてくれる人になってやる。お前に、この世の理を、教えてやる。」

「……は?」

 呆ける魔王に対し、勇者は満足げに笑みを浮かべる。
 かくして、勇者と魔王の奇妙な共同生活は、始まった……



     つづかない。

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