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梅雨のあとさき

短編小説
その他
オリジナル
2017年10月08日 10:29 公開
1ページ(1751文字)
完結 | しおり数 0


toritara

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「ねえ ポストにこれがはいっていたよ」

そう言って マリが手渡した封筒は見慣れた文字のサエのものだった。

「あ いいよ そんなのほっとけば」
「えー いいの 元カノじゃないの」

確かに上京するまで一緒に輝く時を過ごした彼女だった。一緒に机をならべ
互いの夢に向かって励ましあい ライバルとなりながら学び舎を後にした
二人だった。
それまで二人の間には愛なんて感情などなく 友情といったほうがいい感情だった。卒業後 互いに連絡を取り合い、特にサエはよく手紙をくれた。
筆まめといったところだろうか。
俺は3回に1回くらい返事を書けばいいほうだった。
そんな サエが20歳を過ぎたときに突然上京して、俺のアパートへ転がり込んできた。

俺ときたら夢を持って大学に進学したのにも関わらず、こんな筈じゃなかったって出鼻をくじかれて余り大学にも行かず、この町独特の昼夜を問わない生活に魅了されてその日暮らしのような生活をしていた。
サエは泣きながら俺の胸に飛び込み

「どうして 私の気持ちを判ってくれないの」

二人はごく自然に同じ朝を迎えた。
それからの二人はどこにでもいるカップルのような生活が始まった。
しかし それも長くは続かなく まあ 俺に原因があるのだけれど、
大学にも行かずふらふらと遊びに興じる俺に愛想をつかしてサエはまた
自分の生活に戻って行った。
しかし その後もサエからの手紙は送られ続けた。
手紙の冒頭は必ず
「拝啓 一樹 お元気してますか?」

もう 見飽きた文字だった。

サエが出て行った後からの手紙は読む気もなく 開封もしないで部屋の片隅の段ボール箱の中へ直行だった。
それでも 捨てずにいたのはなぜだったんだろうか自分でもよく判らなかった。

あれから もう7年も経ったんだ。
この町では仕事がイヤになればいとも簡単に辞めることもできるし、その日からでも仕事はあった。そんな綱渡りな生活でも食べるには困らなかった。
もう そろそろ落ち着こうかな なんて殊勝な考えもちらちらっと頭をかすめ始めた頃に来た手紙だった。

降り止まない雨音を聞きながらマリは

「ねえ 読まないの 読まないなら私が読むよ  いい?」
ああ と軽く返事をするとマリは開封して声を出して読み始めた。

「拝啓 一樹 お元気してますか?
 私は相変わらずの生活ですが優が小学校に入学したので写真を同封しますね。
 一樹に似て社交性が有りすぎて ちょこちょこして目が離せませんが
 ・・・・

待てよ ちょっと 待てよ
俺は慌てた
マリは
「えーー 一樹 子どもがいたんだー」

俺はマリから手紙を奪い取ると ものも言わずにただ呆れ果てながらその手紙を読んだ。一体どういうことだ 俺に似ているって そんな馬鹿な
俺の頭の中ではサエのくったくのない笑顔がぐるぐると回り始めた。

そんな話しは聞いていない いや そうじゃなくって俺が聞こうとしなかったのか。どちらにしても本当のことなんだろうか。

いぶかるマリを追い出し、俺は部屋の片隅で忘れ去れていた段ボール箱を部屋の真ん中に置いた。その中には読み手のいないサエの懐かしい文字の封筒ばかり。

サエが出て行った時からさかのぼって一つづづ丁寧に開けてみた。

「拝啓 一樹 お元気してますか・・・」
何も変わっていないサエの文字 文章
シングルマザーになるサエの決意を込めた手紙は出て行って半年目くらいのものだった。その後はその子どもの成長振りを書き記したもので保育園に預けながら賢明に子育てする様子が楽しく書かれていた。
俺は何も知らなかった。俺がなんのリアクションをしないことを攻める言葉は一つも無かった そのことにとてつもないショックを受けた。

俺は今まで一体何をしてきたのだろう なにやってんだ
こんな俺にサエは

雨音はいつの間にか消え薄っすらと日差しが部屋へ入り込むようになり。

マリが読みかけた手紙の最後には

「優はとってもお父さん似だよ
 会ったらきっと鏡を見ているようだって笑うよ
 あの 駅で待っています。
       サエ  」

帰るよ
あの 駅

誰もいない
でも 温かいあの駅
ごめん 二人で待っていてくれるんだね

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