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五秒間の恋人

短編小説
恋愛
オリジナル
2017年10月13日 16:46 公開
1ページ(2457文字)
完結 | しおり数 0

淡々と綴る恋愛短編小説。

大友昌信

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でも私は恋愛をしたことがありません。
それと女性の気持ちというものはよくわかりません。
なのでこの恋愛小説に需要があるか不安でなりません。
あと二番煎じでないかどうかも不安でなりません。
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高校生の頃の事を思い出した。

私は本の虫だった。

学校でも家でも、いつも自分の机で、必要な時間以外はずっと本を読んでいる。

新しい本を買う時もある。以前読んだ本を読み返すこともある。

そんな私だから、友達はいなかった。

根暗と思われていても、別によかった。

でも、好きな人はいた。

同じクラスの、学級委員長の人。

彼の周りは、いつも笑顔がある。

彼はいつも厄介事を引き受けてしまって、そしていじられ役だ。

でも彼はそんな自分を受け入れて、それで笑顔でいる。

たぶん、天性の人たらしだと思う。

誰も、彼の悪口を言わないし、聞いたこともない。

私はそんな彼とは、ほとんど話した事が無い。

話したのはたったニ回だけ。

「あ、それって当間さんの新作?」

私が呼んでいた本を見て、彼が言ったのだ。

「そう。」

私がそう答えると、

「まじかー。お願い!少しの間貸してくれない?買いたいんだけど、今月の小遣いが厳しくて……。」

彼はそう頼んできた。

「いいよ。」

私はそう言って、その本を閉じて渡した。

「やった!ありがと!」

そう言うと、彼は喜んで表紙を眺め、

「なるべく早く返すから!」

そう言って自分の席に戻っていくと、すぐにその本を読み始めた。

私はそれを見た後、すぐに自分のカバンから別な本を取り出して読み始めた。

その時聞こえてきた。

「なあ、あいつから本借りたの?」

彼の席の方から聞こえてきた。

私は聞こえないふりをして、その会話を聞いた。

「うん。この作家さんは僕も好きなんだ。」

「よくあいつから借りられるな。俺あいつと話す気も起きないわ。」

私はそう聞いても、別にどうでもよかった。

私の事なんて、そんなに良く言う人はいなかったからだ。

でも彼は違った。

「そんなこと無いよ。いい人だよ。」

私は思わず彼を見た。

彼は笑っていた。

それだけだった。

それだけで私は、彼を好きになっていた。

だから、私は本が帰ってくるのを待った。

私は不器用だから、その時そのまま思ったことを伝えようと思った。

だからさっき、彼に、

「本返したいからさ、図書室で待っててよ。」

そう言われて、思わず少し上ずった声で

「うん。」

そう返事した時から、ずっとドキドキしている。

図書室の窓側の席で、私は待った。

窓の外のグラウンドでは運動部が活動している。

夕日が傾いて、図書室に差し込む。

と、図書室の開く音が聞こえる。

その度に私は、彼ではないという残念な気持ちを抱いていた。

でも今、その肝心の彼が来て、私は急に顔が熱くなった。

心臓がどきどきした。

「ごめん、待たせちゃって。はい。」

歩み寄って来てから、彼は手に持ってきていた本を私に差し出した。

私は慌てて立ち上がって、その本を受け取った。

「……どうだった?」

私はそう聞いた。

「やっぱり当間さんの作品は面白いよ。読んで満足した。」

彼はそう言うと、

「じゃあまたね。」

と言って去ろうとした。

「あっ」

私は思わず彼の手を掴んだ。

柱の陰になって、私の顔が赤くなっているのを、振り返った彼に見られたのは間違いなかった。

彼は振り返って、何も言わなかった。

まるで、私が言いたいことを言うのを待っているようだった。

だから私は言う事にした。

「……あなたが、好きです。」

たどたどしい口調になってしまったが、私は続けた。

「私と……付き合ってください。」

彼はそう聞いて微笑んだ。

私がそう言うのを分かっていたように。

そして彼は答えてくれた。

「……ごめん。」

苦笑しながら、そう言ってくれた。

「僕、今は恋愛しないことにしてるんだ。」

彼はそう言ってくれた。

私じゃないと、たぶんわからなかった事だろう。

彼は誰とでも仲良く、等しく親しくできる。

私と付き合えば、そのバランスが崩れる。

私も彼も、変にやっかみを受けない結果を、彼は選んだ。

「……そう、だよね。」

私はそれを理解していった。

「ごめんなさい。」

私が手に持っていた本をカバンにしまう間、彼はスマホに何か入力していた。

カバンのチャックを閉めた時、彼は言った。

「五秒間……。」

その言葉に、私は振り返った。

「五秒間だけ、恋人でいいかな。」

彼はそう言うと、私の手を引いた。

そして目を閉じて、私にキスをした。

私は目を見開いた。

その視界に、彼のスマホの画面が映った。

『この時間を噛み締めて』

読み終えて、私は目を瞑った。

読み終えた時点で二秒経っていた。

だから私は、残りの三秒を感じ取っていた。

その時間は一瞬だった。

離れたのは彼だった。

「じゃあね、また明日。」

彼は何事もなかったかのように、図書室を出て行った。

私はずっと口を押えて放心していた。

だから司書の先生が見回りに来た時、

「大丈夫?気持ち悪いの?」

と聞かれるまで、ずっとそのままだった。

次の日も、それ以降も、私と彼は変わらなかった。

私は自分の机で本を読み、彼はいつものように周りの人と笑顔でいる。

少し変わったのは、たまに私に本を貸してほしいという人が増え、たまに何と無しに話しかけてくる人が増えたことだった。

彼のおかげなのかはわからない。

だけど私はその中で、親友と呼べる人物を見つけることができた。

後述になってしまうけど、彼は私が好きだったという事を、その親友から教えてもらえた。

私は切なくなった。

今彼は、国際ボランティアの団体で、世界中の国の人と交流し、そして支援を行っているという。

会える機会はとても少ないだろう。

それでも私は今、次に会える時を待っている。

その時、私はまた同じことを言うつもりだ。

「あなたが好きです。私と付き合ってください。」

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