メクる

累計 17615267 スキ
BL・アダルトの
切り替えはこちら

あの日の記憶

短編小説
ライトノベル
オリジナル
2017年10月27日 01:09 公開
1ページ(1137文字)
完結 | しおり数 0


figment

  • 閲覧数

    138

    1635位

  • 評価数

    0

    1885位

  • マイリスト

    0

    1675位

フォント
文字:--%
行間:--%
ある雨の日、わたしは山で捨てられた。
三兄妹で一番下の、小さなわたしの存在は母の重荷だったのかもしれない。

今となっては真実は想像でしか得られない。

雨にうたれてどんどん体温が下がっていくのを感じた。
死ぬ寸前のわたしは、そのまま目を閉じ、じっと、死が訪れるのを待っていた。
これで楽になれるかもしれない。
痛いことも、つらいこともおさらばだ。

何のために生まれてきたのだろう。
これまでのことは本当は夢だったのかもしれないな。
ある日、目が覚めて、
「実は今までのことは全部夢でした」
と言われ、本当の世界に戻るかもしれない。
そんなバカバカしい考えも意識が遠のくにつれてどうでもよくなってきた。

しばらくすると、体に暖かいものが触れる。
それがなんなのかはわからないが、とても心地よかった。
それからまたしばらくして、いい匂いがしてきて目を覚ます。
目の前に広がっていたのは、淡いオレンジ色の絨毯。
木のテーブル。
かごに入ったみかん。
老いぼれの、男。

「やぁ。お目ざめかい?」

男は顔をこちらに向け私に言葉を投げかける。
温かいスープが目の前に置かれ、お腹が鳴る。
「食べなさい」
クンクンと匂いを嗅ぎ、恐る恐る飲む。
お腹が極限に空いていたため、すぐに飲みほした。
「はは、よほどお腹が空いていたんだな」

私の体には大きなタオルがぐるぐるに巻かれていた。
洗剤のいい匂いに少しくらっとする。

「散歩をしてたらきみが倒れているのを見つけて、拾ってきちゃったよ」

わたしの頭を撫でる手がひどく優しい。
どうやらこの男が、わたしを助けた張本人らしい。

「・・・もう少しで死ねたのに」

精一杯男を睨みつける。

「あはは、悪いことをしたね」

男は立ち上がり何かを手探りで探す。
どうやら男は目が見えないらしい。
「歓迎するよ」

男は赤いりぼんをわたしにつけると、満足したかのように、
「いつまでも居てくれていい。嫌になったら出ていってもいいから」
と言った。

外は寒いし、仕方なく、しばらく一緒に居てやることにした。

なんとなく男の生活を共にし、時が経つたのは早くあれから何年も過ぎ去った。

わたしはまだこの家に居る。
黒いスーツをきた若い男が家へと入ってきた。

「あー、この家ももうボロボロだな」

わたしは男を見つめる。
それに男も気づいたようでこちらへと近づいてきた。

「親父、犬なんて飼ってたのか。」

男はわたしの頭を撫でる。
風でボロボロの赤いりぼんが揺れる。

「一緒にくるか?もう親父はいないんだ」

わたしは知っていた。
男が死んだことも、二度と帰ってこないことも。
わたしは首を横に振り、目を閉じて眠りについた。

スキを送る

累計 10 / 今日 0


残スキ 300

『スキ機能』とは?
『スキ機能』とは『スキ』ボタンを押すことで作品や作者を応援できる機能です。
※拍手機能に類似した機能です。

[スキ機能のルール]
※1人あたり1日に300回まで『スキ』を送ることができます。
※1作品でも複数作品でも合計が300回まで『スキ』を送ることができます。
※『スキ』は1スキ、『大スキ』は10スキ、加算されます。
※1日に与えられるスキの数は毎朝4時にリセットされます。
※自分の作品にはスキ機能は利用できません。
※『スキ』は匿名で作品に送られます。

スキ!を送りました

作品を評価する

figmentさんを

フォローしたユーザーの
作品投稿やつぶやきなどの最新情報を
マイページでチェックできます

マイリストに登録する

この作品につぶやく

#あの日の記憶
 

500

みんなのつぶやき 一覧

つぶやきはありません

イメージレスポンス(0) 一覧

この作品へのイメージレスポンスはありません

タグ一覧 編集

この作品にタグはありません

友達に教える

  • ツイートする
  • イイネ
  • なうで紹介
  • はてなブックマーク
  • GoogleOne

この作品を見た人はこんな作品も 一覧

作者の投稿小説(2) 一覧

作品登録マイリスト 一覧

登録された公開マイリストはありません

その他


コーナー R

作品宛みんなのつぶやき

もっと見る

作者の他の作品一覧

一覧を見る

copyright (c) 2013-2018 メクる Co.,Ltd. All rights reserved.