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駅のホーム

短編小説
恋愛
オリジナル
2017年11月23日 03:19 公開
1ページ(5100文字)
完結 | しおり数 0


ZuN/ずん

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そこは真っ暗な世界だった
ガタンガタンと音が聞こえ…重たい瞼を開けると電車に乗っていた。
いったい何時だろう?夕陽が差し込んでいる、夕方だろうか?とそんな事を考えていたら電車が駅に止まった。

ふと
あ、降りないと。

そう思い私は電車を降りた。
「あれ?ここどこだろう…」
私が降りた駅は見知らぬ駅だった。

一見どこにでもあるような普通の駅、だけど異質な駅。
私はその場にいることに何故か恐怖を覚えた。
本能が告げる「ここにいてはいけない」と
当たりは日が落ちてだんだん夜になっていく、それだけで恐怖が増した。

「帰らねばいけない」そう思った私はどこにも見あたらない時刻表を探した。

けれどどこにも無かった。

ふと駅構内を見渡すと一軒の売店があった。

「すみません、時刻表はありますか?」と私が尋ねると、売店のおばさんは焦った様な顔をした

「ここにいちゃいけない」そう告げられた
「私家に帰りたいんです」というとおばさんは優しく

「いいかい?次にくる電車に乗るんだ、

乗り場は右側、

左側に乗ったら絶対にダメだよ?

あっちに行くと

戻れなくなるからね」


『戻れなくなる』

とはどういう事だろうか…私は今どこにいるのだろうか、そんなことを考えていた。

駅のホームで電車を待っていると数人やってきた。

彼らも私のように来ては行けない人たちなのだろうか?

けれど彼らはみな左側のホームに立っていた。

普通の光景のはずなのに、やはりなにかおかしい。

彼らは『戻れなくなる』場所へ今から向かうのだ…

誰一人右側のホームに人は居なかった

時間が経つにつれてだんだん恐怖は増していく、しかも薄暗い夜、知らぬ場所でたった一人私は右側のホームにいるのだ…

怖くて呼吸が荒くなり、心拍数も早くなる…

帰りたい、帰りたい、早く帰りたい…

目を瞑り祈る様に手を握りうずくまった

そんな私に一人の少年が声をかけてきた
優しく「大丈夫ですか?」と

私はビックリして少年を見つめた。

歳は私と同じくらいだろうか?

学ランを着ている。
黒髪に丸いメガネをかけた目の大きな優しそうな少年だった。

そして彼は私と同じ右側のホームにいるのだ。

つまりこの少年も

「ここへ来ては行けない 」人

「帰る人」なのだと理解した。

一人ではない。


それだけで人間はここまで安心できる生き物なのだと初めて痛感した。

ホッとした私は涙が溢れて泣き出した。


そんな私を見て少年は焦ってしまったのだろう

「えっと、えっと、あの、えっと」とあたふたしていた。

そんな姿を見てつい笑ってしまった。

「よ、よかった、急に泣き出すからビックリして…」困ったような安心したようなそんな顔だった。

「君も帰る…人?」

「うん、私何でここにいるのかわからないの…君もそうなの?」

「うん…家に帰りたいんだけど帰り方がわからなくて、さっき売店のおばさんに聞いたんだ」

どうやら私と同じようだ

少し時間が経ち私たちはホームのベンチに座った

「左側は帰れなくなるっておばさん言ってたね…」

「うん…」

反対側の…左側のホームには人が溢れていた。

「あの人たちは帰りたくない人なのかな…」

「…そうかもしれないね…」

あんなに沢山の人が『帰れない場所』に向かおうとしているのか


それが何だか悲しく思えた。


「帰れないって…その…死ぬって事なのかな…」

私は少年に聞いた。

そして静かに
「僕にも分からないけど…恐らくそうだと思う…」

「そっか…死にたい人ってあんなに沢山いるんだね…」

「大人が多いね…」

「うん…それと子供も…」

ここは人の生死の分岐点なのだろうか…だとしたらなんで私達はここにいるんだろう

「…ここに来る前の記憶ってある?」

「うーん…それがさっぱりなんだ、眠っていてふと降りなきゃ!って思って降りたらここだった」

「私もそう…あのまま眠っていたら私達…帰れなくなってたのかもしれないね」

自分の発言に改めて恐怖を体感した…私はまだ死にたくない…私は帰りたい。


「あ、君の名前は?僕は小泉健太郎」

「私は小泉架純」

「同じ苗字なんだ!奇遇だね」そう言ってぱぁっと笑う少年に私も「そうだね」とつられて笑う

健太郎くんは少し不思議な男の子だ

明るくて優しくていい人だ。

帰ってしまったらもう会えないんだろうなぁ。

そう思うとほんの少し寂しい気もした

「健太郎くんはどこに住んでるの?」

「僕?関東だよ、架純ちゃんは?」

「私は関西」

「そうなんだ!関西弁じゃないんだね」

「親の仕事の関係で引っ越したんだ、元々は関東だよ」

なんて事無い他愛ない話を私達はした。

健太郎くんは関東に住んでて、私立の進学校に通ってるらしい。
毎日塾であまり遊びにも行けず中々大変みたいだ。

「ねぇ、健太郎くん、戻れたらさ、実際に会ってみない?」

「それいいね!あーでも覚えてるかなぁ〜夢だったらすぐ忘れちゃいそう」

確かに夢なら忘れてしまいそうだ

でも…

「それでも、会えたらデートでもしよう?」

って冗談交じりに言うと健太郎くんの顔は真っ赤になっていた。


「で、デート!?お、俺が?架純ちゃんと!?」


あれ?今俺って?

「そうだよ、そうだなぁ…それじゃあクリスマスの夜にスカイツリーで待合せしよう!」

私がそう言うと健太郎くんの顔はもっと赤くなった。

恥ずかしがり屋なのかな?ふふふなんか可愛いな

「わ、わかった!俺クリスマスの夜6時にスカイツリー行く!」

「ほんと?それじゃお洒落していくね」

ふふふ楽しみだなぁ…覚えてたらいいなぁ……

そんな楽しみを私達は約束した


けど、その楽しい時間は一瞬で恐怖に染まった。

ふと目の前の左側のホームをみると電車が来ていた……一言で言うなら

『おぞましい』

今まで暗くて気が付かなかった…向こう側にいる人々はみな血だらけだ…腕や足が折れてる人もいれば内蔵が出てる人もいる

そんな人達が電車に大量に乗っていた

私は怖くて声が出せなかった…さっきまであんなに楽しかったのに…今はあの光景が頭にこびりついて離れない。

ただひたすらに


怖い。


早く帰りたい……帰りたい……恐怖で涙が溢れる…身体も震える…

そんな私を健太郎くんは震える体で抱き締めてくれた。

彼も怖いはずなのに。

優しく『大丈夫だよ』って

「…健太郎くんは強いね…私…怖くて…体が震えて…泣いてばかりで…」

「だ、大丈夫!俺だって怖いから!バイオハザード並に怖かったから!」

「バイオハザード…って…ふふ…ゾンビじゃん…」

「あは、あはは…そうだったね…」

ほんと、不思議な人だ…そばに居てくれるだけで安心できる

駅のホームに音楽が鳴った

「こっちのホームにも電車来たみたいだね」

よかった…これで帰れる…。

私は立ち上がり止まった電車に乗ろうとした。

その瞬間健太郎くんに腕を引っ張られた

「え?」




「架純ちゃん!ダメだ!そっちは左側だ!!」


「え、あ、…あ、わた、し」


私が乗ろうとした電車は


左側。


ふと電車を見ると…真っ黒な影がポツリと電車に立っていた。


ほかに乗客はいない。

その影だけが私を見て手招きをしていた。


連れていこうとしている


『帰れない場所』へと。


血の気がサーっと引いた。

「架純ちゃん…右側の電車が来たよ…あっちに乗ろう…」

掠れた声で「…うん」と返事をした
右側の電車に乗ると


「架純ちゃん見て、売店のおばさんが手を振ってる…こっちで合ってたみたいだね」

「う、うん…健太郎くん…本当にありがとう…私帰りたい一心で…向こう側に乗るところだった…」

「ううん、気にしないで、でも架純ちゃんが無事でよかったよ」そうやってまた優しく笑う


私たちが乗った電車は来る時に乗った電車と同じだった…穏やかな空気が流れていた…乗客は私達以外にも数人いた…

私は怖くて健太郎くんの手を握っていた。

彼も安心させるように握り返してくれた。

「やっと…帰れる…」

「そうだね…」

「怖かった…」

「うん、怖かった」

「…クリスマスの夜6時…スカイツリーの前で会おうね…」

「…うん…絶対会おう…たくさん話しよう」

「うん…健太郎くん…私…何だか…眠くなってきた…」

「僕も…眠いや…架純…」

「ん…」

「 」


…ごめん、健太郎くん…眠くて…きこ…えない…





ピッ…ピッ…電子の一定音が聞こえる……この匂いは…お花…かな…

重たい瞼を開けると…病院だった。


「架純!」お母さんが声を荒らげて私を呼んだ。


あぁ、私…戻れたんだ…よかった…


彼も…戻れたかな…


あれ…?



彼って…誰だろう?


私は交通事故にあったらしい。
2年も意識不明だったようだ。

意識を取り戻してからリハビリを続け衰えた筋力も戻り私は一人で歩けるようになった


そして気がつけば12月

もうすぐクリスマスだ…

「12月24日…スカイツリーに行かないと…」

でも何のために?

目的はおもいだせないけど、私はとにかくあの場所に行きたくて仕方がなかった

そしてクリスマス前日に私は退院した

明日はクリスマス……どうしてもあの場所に…

私の気持ちは抑えられなかった
「……お母さん…ごめん!今から東京いく!」
そう告げるとお母さんはビックリしていた

でも…
「…いってらっしゃい…どうしても行きたいんでしょ?」

「お母さん…」

「あなた目が覚めてからずっとクリスマスの夜にスカイツリーに行くって言ってたんだもの……約束したんだって……約束したのなら守なさい」

そう言ってお母さんは笑ってくれた

「ありがとう…お母さん…私…約束守ってくるね…」

私は一人東京に向かった…

着いたのは夜だった…

そう言えばお財布だけ持って来たけど…洋服とか考えてなかった、退院したばかりで髪もボサボサだ…明日約束の時間までにちゃんとお洒落して行く


そして…クリスマスの夜6時少し前…私はとびっきりのお洒落をしてメイクもして


約束の場所にきた


でも誰に会いに来たんだろう…
顔も名前も覚えてない、でもここで会おうって約束したんだ

それだけは覚えてる


でも夜9時になってもその人は現れなかった

だんだん人も居なくなって…とうとう私一人…
「…あーあ…やっぱり…夢だったのかな…」

そう思うとだんだん悲しくなってきた…私はその場にうずくまった…涙が出そうだ。

いったい何しに来たんだろう

そもそも約束したのかも曖昧なのに…

相手もわかんないのに…

そんなことばかり考えてしまう


目を瞑っていると
「大丈夫ですか?」

その声に聞き覚えがあった…

私は顔を上げた…

黒髪の丸いメガネをかけた目の大きな優しそうな青年…
初めて会うはずなのにすごく懐かしくて、ずっと会いたかった…

やっと会えた
ホッとした私は涙が溢れて泣き出した。


そんな私を見て青年は焦ってしまったのだろう

「えっと、えっと、あの、えっと」とあたふたしていた。

そんな姿を見てつい笑ってしまった。

「よ、よかった、急に泣き出すからビックリして…」困ったような安心したようなそんな顔だった。

そして青年は
「…約束ちゃんと覚えてたよ…」と言った

「うん…遅くなってごめんね」
「ずっと待ってた…」
「私も…待ってた」

「俺小泉健太郎です!」
「…私は小泉架純…です」


ずっと会いたかった人

「架純…デートしよう」
そういって私に手を差し伸べる

あぁ、懐かしい…

「…うん…私ちゃんとお洒落してきたんだから…ちゃんとエスコートしてね?」

「もちろん、俺ずっとデートコース考えてたんだよ?…」

その無邪気な照れた笑顔…ほんとに可愛い

「そういえば、あの時、最後になんて言ったの?私聞き取れなくて…」


「聞きたい?」

「うん」

健太郎くんは私を抱きしめて耳元で

「好きだよ」

そう呟いた。

そして私も健太郎くんを抱きしめて

同じ言葉を彼に送った…。

「私も好き…」



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