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鬼爪入道

短編小説
ホラー
オリジナル
2018年01月31日 13:37 公開
1ページ(3105文字)
完結 | しおり数 0

普通に化け物がでるいなか道

ふしきの

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「鬼の爪は何本だ」
そんな、民話の歌が残っているイメージで、ヨンブンノイチ私小説
夏の夕暮れ。
普通に化け物がでるいなか道。

20180131 メクるにて再構築改編


2018 1 31 改編
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 ねーちゃんが、久しぶりに連絡くれたと思ったら、
「ちょっと来い」
 って、言って電話を切られた。
 いつもどおり傲慢な態度だった。
 僕は、なんだか嫌な感じがして、にあんちゃんに「ねーちゃんが呼んでるので出かける」とメールをして家から出た。
 長年乗っている自転車は、サドルがいっぱいいっぱいに上がっている。
 長い長い道をブレーキをかけずに下っていく。
 車も軽四もトラックもすれ違わないいなか道。

 ねーちゃんの家には珍しく女友達が二人遊びに来ていた。
 相変わらず、友達も横柄な態度だと思ったら、何かねーちゃんの様子がちょっとおかしかった。
 そわそわというか、なにか、背中に虫がいるみたいにうろうろして、ひきりなしに携帯電話を何度も見ては時間を気にしていた。
 電話が鳴ったのかならないのか分からないけど、着信音を聞く前に取った。
 その後、蚊の鳴くような声で友達に「うかんむり!」と、報告すると、黄色い歓声が起きた。
 僕にはホントに嫌な感じだった。
 あの男は国家試験合格を条件に結婚を承諾したのだ。
「帰る」と言おうとしたら、
「ねーちゃん結婚するよ」
 確認するように僕に言う。
馬鹿みたいにおめでとうの黄色い声で、やかましい友達の歓声にその場は騒然となった。
「あー」あの腐った年の離れた男かよ、ねーちゃんのこと頻繁に「もうすぐ40」とか言って結婚をちらつかせて、マンション買わせようとするアホな男だろ。今の仕事もまともにできなかったくせに収入が少ないとかで介護職試験の手伝いを寝る間も惜しんでさせた男だろ。試験以外のレポート全部手伝わせておいて大きな顔した最低な奴だ。なにがいいんだかなぁ。
「勝手にしたら」って言葉が出る前に、
「あんた汗臭い。風呂入って帰ったら?」
 って、ねーちゃんに言われて、せっかくここまで来てそれかよ、って思いつつも風呂場へ直行した、きやーきゃーやかましい声はまだ続きそうだった。
 
 風呂場で自分のシャツを嗅いでみた。
 何か臭い。
 小さいユニットバスはすぐに風呂の湯が入った。
 換気扇も20年使えば古くなって、あんまり湯気を吸ってくれてない。
「熱い」
 それでも、シャワーより湯船のほうが好きだから入ろうとしたら、蚊がブーンと耳触りの音をさせて飛んでいた。なんで蛇がいるんだろ。年中いるのかよ!
「かゆっ」
 湯をためるときに刺されたに違いなかった。
 腹が立つ。
「ねーちゃん蚊がいる」
 って、言いたかったのに、まだ「おめでとう」とかいう声が聞こえている。
 馬鹿みたいだ。
 蚊を見つけて殺そうと、湯気をにらんだ。
 壁に4匹腹が血でパンパンなのがへばりついていた。
 最悪だ。
 むかついた腹いせに、手でバンバン叩いた。
 血の跡がついた壁を見つめて、風呂から出た。
 ねーちゃんのランパン、ねーちゃんのデカイTシャツ、そしてジャージ上下に着替えた。こーいうのもなくなるんだろうなぁとか思ったらむなしくなってきた。
 痒み止めをもらうのも面倒くさかったので、なにも言わずにねーちゃんの所から帰った。

 一本道には車も人も何にもいなかった。
 ゆらゆらと路面が揺れているだけだった。
 その時、山の奥から、鬼爪入道が出てきた。
 でっかい手が、空からぬーっと出てきて、長くでかい爪が僕のほうへ伸びてくる。
 
「うわぁぁっぁぁ」

 僕の目の前の舗装道路に爪がめり込んだ。
 急ブレーキで前のめりに自転車ごとスッ転んでしまった。
 アスファルトは見事にシャベルカーで掘り起こされたようにささくれたった。

 とりあえず、僕は脇道の側溝深く隠れた。
 爪はカチカチカチと三度鳴ってまたぬーっと奥へ引っ込んだ。
 鬼爪入道はとろくさい子供とか牛とかを捕まえるんじゃなかったっけ?僕は学校では俺とか言おうかと思っているくらいガキじゃないのに…。
 急いで影になる場所にかけって行った。
 大きな大木の下に身をひそめた。
 爪がカチカチカチと三度鳴った。
 鬼爪入道はどうやって獲物を見つけるのだろう?って思ったら、さっきバンバン叩いた血の跡が手にこびりついているのを確認してやっぱり血なのかなぁと考えた。
 急いで、次の場所へ走った。

 汗がどっと出る。

 それでも何とか、石切り場の石の山の下に逃げた。
 ぎりぎりの所で爪がカチカチと二度鳴った。
 鬼爪入道の爪が目の前に見える、でかい長い…赤い爪…ネイルアートはペンキかな?ちょっと笑える。ねーちゃんは仕事とかで忙しくてそう言うのしなかったよね、いつも僕にご飯を研いで弁当作ってくれた。
「逃げられない」って古いカセットゲームをしていたら「ほら、弾幕見て」って神業のように機体を動かしてくれた。鬼のようなねーちゃんだったけど。
 そう思ったら、逃げ遅れた。

 爪が、石を動かしている。

 ごろん、ごろんと積まれた岩が動いていってあと少しで僕の逃げ込んでいた穴の上を動かしている。
 石が動くたびに土埃と生臭い雨のような臭いが立ち込めた。
 臭い、重い、しんどい。
 鬼の爪は何本なんだ?
 今なに指だった?
『三本指はバラバラで。……五本指だと逃げられぬ』たしかあの歌はそう歌っていたような気がする。
 逃げ場は何処へ?
 今外に出たら確実に影をとらえられ殺されちゃう。

 死んだじいちゃんの声が聞こえてきたような気がした。
「蚊も生きとるけぇ、血ぐらい吸わせたれーよ」
 夜になるとそんなことを言う。ばあさんが怒りながら蚊取り線香に火をつけて回る。
 蚊取り線香を蚊除け線香とじいちゃんは言ってた。
「夜は気をつけぇ」
 爪を切るのも、針仕事するのもご法度だった。
「わしらは夜目が気かんからのぉ。臭いには気を付けい」 
 
 突然、急に体が寒くなってきた。
 外に出ないと、なのに足が出ない、動かない!

 その時、穴の外から犬の息が聞こえた。
 けん制する唸り声が終わったと思ったら、うれしそうなキャンキャン声に変った。
「おーい、いるかや」
 その声に、体を引きずりだすと、にあんちゃんがやぶれ傘を持って立っていた。
「チクワ」
 僕がそういうと、黒い鼻水をたらしたチクワは、嬉しそうに尻尾を振った。
 霧のような雨が降っていた。
 空は曇天で気持ち悪い重たい空気だった。
「帰りが遅いからちくわが俺んところに迎えに来た」
 そこにはもう鬼爪入道の手はなかった。
 まばゆいばかりの月明かりが、切れた雲に隠れて丸い傘になっていた。
 
「通夜帰り?」
「そ、ちくわが飯食わせろって来たんでうまく退場で来た」
 白いシャツに黒ズボン、線香の残り香の、にあんちゃんに向かって僕は言った。
「...あのさ、ねーちゃん、結婚するってさ」
「ねーちゃんが幸せならそれでいいんじゃねか?」
 相手はあの男だよって言いたかったけど、にあんちゃんも分かっている。
「そだね」
 僕は「今日の夕飯はカレーだ」と言うと、
「家帰った時に玉ねぎの匂いがしたからそうだろうなぁとは思ったよ。3日はカレーだな」と嬉しそうだった。
「嫌だよ、3日もカレーなんて。2皿ノルマで2日で食ってよ」
「カレーも、おでんも3日目からが勝負だかんな」
 にあんちゃんは傘を畳むとチクワと駆け足で走っていく。僕も置いていかれまいと走った。
 僕らは家路を急いだ。

 自転車のことは明日考えればいい。 




20100925 ブログより転記 少し加筆

20180131 メクるにて再構築改編

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#鬼爪入道
 

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