それは、私への愛のうた / 「9℃」の小説 | メクる

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それは、私への愛のうた

短編小説
SF
オリジナル
2018年02月24日 12:44 公開
1ページ(777文字)
完結 | しおり数 0

鯨型ロボットの話

9℃

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    1386位

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ポケクリサークル
800文字職人の三題噺より
800文字、「木漏れ日」「鯨」「涅槃」

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 揺れる光は木漏れ日のようだ。私が産まれた研究所の大きなケヤキ。いけない、よけいなことを考えていたら輪を崩してしまう。吐き出した泡は円を描きながら立ち上りサバの群れを追い込む。
 一頭が魚群に突っ込む。ザトウクジラの食事のはじまりだ。食事をしない私は相当な変わりものだと思われているようだ。人の可聴域を超えてささやかれる歌。私はそれらを記号化して研究所に送る鯨型海洋調査ロボット。
 二年前、冬は沖縄、夏は北極を回遊するこの集団に加わるのは一苦労だった。最初に受け入れてくれたのは年老いたオスの鯨。今も私の側で仲間が食べ残したサバを口にしながら怜悧な目を向けてくる。私が鯨でないことは承知している目。

「つきあいだ。食事くらいするといい。こっちでは私にも夜食が出るぞ」
 そう言うのは研究所のアンドロイド。夜。人の言葉、鯨の言葉、三つ目の言葉が飛び交う。
「生物のカタチをしているというのは難儀だねえ。そら宇宙望遠鏡の坊やから届いた映像だよ」
 中央コンピューターが送ってくれたのは七色に光るオリオン大星雲。
 きれい。

 私も捕食するようになった。捕ったものは老いた鯨にわけている。彼の食がずいぶん細くなったから。集団からも遅れがち。
 彼を気にかけていた仲間たちも、ついて来れないと判断すると北へ向かう速度をゆるめなくなった。歌いかける私に複雑な響きで返してくる彼。この時期にはまれな、ロボットの私には関わりのない歌。海底に沈み行く優しい歌。

 オリオン大星雲を見せてあげたい

 集団を追うコマンドが送られてきた。

 冬、南下する集団が再び老いた鯨の上を通る。カニやヒトデが彼のからだを囲み、海へとかえして行く。いつか博物館のロボットが送ってくれた涅槃図みたいだ。
 安らかな顔からは、まだ私への求愛の歌が紡がれているように思えた。



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#それは、私への愛のうた
 

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みんなのつぶやき 一覧

  • えせくらげ 02月25日
    このつぶやきにはネタバレが含まれている可能性があります[表示]
    この、

    ラストの切なさを現す言葉を


    私はしらない。




    老いらくの…というよくある表現は

    その複雑なうたと同じくこの仄かさには似合わない。


    愛のうたはちいさき海のものたちの糧に滲んで輪廻に加わりゆくのでしょうか


    きっとしあわせだったのだろうという感想も
    切なさと同じくらい仄かにゆれて海底を漂います。

    生き物の
    生き物としての美しさを

    素晴らしく写した短編であると感心しきりです。




    という括り。


    なんておおきいのだろう。

    鯨のように


    星雲のように
    (ネタバレ)
     #それは、私への愛のうた
    詳細・返信(1)
  • ひろまひ 02月24日
    このつぶやきにはネタバレが含まれている可能性があります[表示]
    生きものの命には限りがありますものね。
    でも愛のうたはロボットの中にずっと残りますね(´・ᴗ・。)
    (ネタバレ)
     #それは、私への愛のうた
    詳細・返信(1)
  • 9℃ 02月24日
    小説「それは、私への愛のうた」を公開しました

    鯨型ロボットの話です
     #それは、私への愛のうた
    詳細・返信(4)

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作品宛みんなのつぶやき

  • えせくらげ 02月25日
    このつぶやきにはネタバレが含まれている可能性があります[表示]
    この、

    ラストの切なさを現す言葉を


    私はしらない。




    老いらくの…というよくある表現は

    その複雑なうたと同じくこの仄かさには似合わない。


    愛のうたはちいさき海のものたちの糧に滲んで輪廻に加わりゆくのでしょうか


    きっとしあわせだったのだろうという感想も
    切なさと同じくらい仄かにゆれて海底を漂います。

    生き物の
    生き物としての美しさを

    素晴らしく写した短編であると感心しきりです。




    という括り。


    なんておおきいのだろう。

    鯨のように


    星雲のように
    (ネタバレ)
     #それは、私への愛のうた
    詳細・返信(1)
  • ひろまひ 02月24日
    このつぶやきにはネタバレが含まれている可能性があります[表示]
    生きものの命には限りがありますものね。
    でも愛のうたはロボットの中にずっと残りますね(´・ᴗ・。)
    (ネタバレ)
     #それは、私への愛のうた
    詳細・返信(1)
  • 9℃ 02月24日
    小説「それは、私への愛のうた」を公開しました

    鯨型ロボットの話です
     #それは、私への愛のうた
    詳細・返信(4)

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