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異世界での敵は大好きな幼馴染でした / 異世界での敵は淫獣なんだけど、どーよこれ

短編小説
ファンタジー
オリジナル
2018年03月05日 08:19 公開
1ページ(5805文字)
完結 | しおり数 0


飯沼飯子

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act.1 【異世界での敵は大好きな幼馴染でした 】


そこからは見慣れた東京の街並みは見えなくて、だから僕はもう、いつも隣にいたあいつの姿を見ることが出来ないんだ。

同級生の女子から告白された。
チョコレートを差し出されながら。
下駄箱に「放課後に体育館裏で待っています」って名前のない手紙があって、それで行ってみたらってやつ。
別にそれは学生生活の中では別に珍しいことじゃない。
ちょうどバレンタインだったし、日本中でそういう光景があったと思う。
でも正直、嬉しいよりも困ったというか、答えなんて決まっていた。
その同級生のことはあんまり知らないし、なにより体育館裏にいてほしかった相手とは違ったから。

「その、ごめん……俺……」

そういうと告白してきた女子は少し泣きそうな、困ったような顔で頷いてうつむいて。
それから顔をあげて笑った。

「そうだよね……広瀬くんには好きな人、いるもんね」
「うん……」
「ありがとう、ここに来てくれて、告白を聞いてくれて……私はもうそれで……ありがとう」

そういって女子はチョコレートを手に走っていった。
少し離れたところから何人かの女子の声が聞こえたから、たぶんきっと、その女子の友達が見ていたんだと思う。
慰められているんだろうな。
自分が悪いわけじゃないけれど、でもやっぱり少し悪い気がした。
うつむいて息を吐いて、それから顔をあげて校門に向かうと、プールの横にある木の下に見慣れたやつがいた。

「伽奈……」
「……告白、されたんでしょ?」

顔をうつむかせたまま、そういった。

「そうだけど……」
「良かったじゃん。バレンタインに彼女が出来て……」

少し、声が震えてた。
嫉妬、されてるんだよな?
これさ、俺を好きだって思っていいよな?

「あたし、行くね」

そういって俺の顔を見ないで走って行こうとする幼馴染の手を取った。
そして。

「断ったから」
「え?」
「俺が好きなのは」

でも。
その瞬間、白い光に包まれて、目を開けるとそこには見たこともない風景が……。
異世界が広がっていた。
そして俺の隣にはあいつがいなかった。
掴んだ手は離れていて、そしてわかったのは。

「あいつが帝国軍の姫……?」

俺を助けてくれたレジスタンスが教えてくれたのは、伽奈が帝国軍の姫に……シンボルになっているってことだった。
異世界から来て進んだ知識を持っているから、それできっとシンボルにされたんだろうって。
それから。

「俺に王になれって……?」

反帝国が集う王国の正当な後継者の姫君の夫に選ばれた。
その姫君と夫となって、王として王国を率いて戦えって、帝国を打ち滅ぼせって。
あいつがいるのに。
あいつの敵になれって。

どうして……。
俺はただ、あいつと何気ない日常を過ごしたかったのに。
ずっと、ずっとそばにいて、生きていきたかったのに。

でも俺は。
諦めない。
あいつを取り戻して、元の世界に帰ってみせる。

「伽奈……待ってろ、俺が絶対に助けてやる。一緒に元の世界に帰ろう、絶対に……!」






act.2 【異世界での敵は淫獣なんだけど、どーよこれ】


おのれ、聖バレンタインと日本のお菓子業界よ、私はあんたたちを許さない。

あと腐女子仲間たち。
あの時、キチンとちゃんとキッパリ断っておけばこうならなかったんだろうか。
バレンタイン、こんなイベントさえなければ……。
……まあ、それに乗っかった私が悪いといわれればそれまでだけど。
いやあのさ。
あるじゃん?
なんか「ベタな青春を味わってみたい!」とか「一生に一度くらいは告白したい!」とか「制服を着ているうちに!」とかって。
んで。
告白すればってことになったんだけど、ちょうどバレンタインだし不自然じゃないとかそういう感じで。
相手はめっちゃハマってるオンラインゲームの全身白い超人気キャラにちょっと似てる隣のクラスの男子で、理由は「そこそこ似ているから」ってだけで。
もちろんその男子はフツーに日本人だから白いってことはないし、その人気キャラはそもそも人間じゃないし、びっくり驚きじじいで、男子はフツーに高校生っていう性格だから、ホント見た目がそこそこ似てるってくらい。
恋愛感情?
ナイ。
だって三次元だし。
私は二次元が好き、ってか二次元しか愛せない。
男子には好きな相手、幼馴染で超ド級に可愛いちょいツンデレが入った同級生の美少女がいるから、絶対OKされないしいいじゃんって。
なんか友達たちが盛り上がって、私が告白することになって、いやまあ、そういうベターなのも一度くらいはまあいいか、絶対大丈夫だしー、って感じだったんだけど。
告白して無事に玉砕、友人たちとひとしきり盛り上がったあと白い光に包まれて、あれこれいわゆるアレか、って思ったらやっぱりそれで、気づいたら異世界にいた。
で。

「この国の姫君になったから勇者と結婚してこの世界を救ってよ」

っていってきたのは小動物系のパッと見人畜無害そうなマスコットっぽい感じの精霊で。
なにこの吐き気を催す邪悪っぽいの。
しかもヤツと違って勝手に契約かなんかされてるっぽいし。
まだ契約するかどうか、画策して契約せざるを得ない状況い追い込むとか、いつでもどこでも契約ゴリ押しとかしつつも、意思を確認して同意のもとで進めようとするだけ、まだちょっとは、ごくわずかであってもヤツの方がマシかも知れない。
いやでも。

「だが断る」
「いや、もう無理なんで。帰れないんで。結婚して世界を救え」

速攻で本性を現しやがったし。
だがしかし。
いろんな方向に発達・発展しまくって、魑魅魍魎のごとくの混沌さを誇り、カンブリアの海のように愉快で、あらゆる全方向網羅するヘンタイニッポンエンタメコンテンツに生まれたときからどっぷり世代というか、両親ともにアレだったから生まれる前から遺伝子レベルで毒されてて、おたくになることが運命づけられていた上に、コミケデビューは3歳で両親と共に親子キャラでコスプレデビューでもあるという、生粋のアレな人間であり、すでに同人作家としてそれなりの人気がある私からしたら、この程度の邪悪、SNSにいる画面の向こうの彼ら彼女たちの闇に比べたらなんてことはない。

「ってかさ、なんで私なの?」
「あなたの数世代前の先祖がこの世界の王族だったんです」
「この世界の王族って、そんな話聞いたことないけど。いつの話よ」
「千年ほど前ですね」
「じじいたちの時代の話かよ」

でもまー……その時代ならアリだったかも知れん。
ってことは。
じじいたちと私の先祖はかかわりがあったかも知れないわけで。
え、それちょっとイイ。

「それはもうどうしようもないクズ王女で、追放されてあなたの世界の極東の島国の超ド田舎に流刑になったんです」
「オイ」
「殺したくなるほど苦労させられましたが、でもまあ、今こうして役立っているので、いいとしましょう」

しかし私自身がこうなわけで、納得することではある。
いやでも。

「私以外にもいるんでしょ、その王女の末裔とかって。実際、私に親戚は普通にいるし」
「確かに容姿や性格、知能に育ちという面ではもっとずっとかなりというよりも、比べ物にならないほど優れた方もおり、ボクとしてもそちらの社長令嬢をお迎えしたかったのですが」
「だったらそっちにしとけよ。ってかそんな親戚は知らんが」
「あなたとは遠縁すぎて最早他人の方なんで。あのゴミクズ王女の末裔だというのになぜこんなに尊いのだろうというレベルの優良物件ですが、残念ながら我々が求める能力が最も優れていたのは、というか突出していたのはあなたなんです。それがなければあの一万年に一人の美少女級のご令嬢をお迎えしてたんですけど」
「ナチュラルなディスりには突っ込まんでおくけど、その能力ってなに? 戦闘力(物理)なんてないけど。あ、もしかして」
「そう、“想像力”つまり“創造力”です」
「あー……」

まあ、うん。
それならある。
同人作家だし、人気もそれなりだし。
腐女子として日夜推しキャラ同士のあれこれを妄想しては萌え悶え、ペンを握ってブツにしているわけで。
そういえば次のイベント合わせの原稿、途中だった。締め切りヤバイ。

「その創造力で帝国軍を完膚なきまでに打ちのめし、滅ぼし、塵ひとつ残さずこの世から抹殺(ジェノサイド)して頂きます」
「なにそれ怖い」

んなことしたくない。
それに。

「そもそも私が統治とか創造するってことは子孫繁栄どころか、子孫断絶になるけどいいわけ?」
「なんですと?」
「いやだって私、腐女子だからBL至上主義だし、百合も好きだけれど……ああ、BLは男性同士、百合は女性同士の恋愛ものが好きってことだけど、どっちにしろ同性同士だから子供出来ないじゃん」
「そんなの聞いてない!!!!! 詐欺!!!!!!!!」
「私も聞かれてないし、聞く前に選んで強制召喚したあんたが悪い。さらにいうと、オメガバースとか百合妊娠とか好みじゃないんだよね。BLだったら子供を生んであげられない、っていう受けの葛藤が大好物だし、百合はカワイイ女の子がふたりできゃっきゃうふふしているのがいい。赤子はいらん。いたら美味しくないじゃん」
「わけがわからないよ」
「変態大国ニッポンを舐めるな」
「ダメだコイツ、早くなんとかしないと」
「だったら元の世界に戻せ」
「出来たらしてますーーーーーっっっ!!!!!! 出来たら苦労してないですーーーーーーーーっっっっっ!!!!!!!」

こいつ、けっこうアホだ。
本家淫獣に遠く及ばないし、画面の向こうの愉快な同じ穴の狢たちに比べてもだいぶ小物だ。

「うううううう、せっかく勇者はあなたが告白した男子にしたというのに……」
「は?」
「まずは一族を増やしてもらわなきゃいけないんで、交配あい……結婚相手くらいはあなたの好きな男性にしようという心遣いで、あなたが告白した相手を勇者にしました。我が国の勇者を犠牲にするわけにもいかないですし」
「交配相手っていおうとしただろう、お前。でも私の結婚相手は犠牲ってのは同意するわ。ってか、それにその気遣いとやらいらんかったわ。その男子のこと、これっぽっちも好きじゃないし。ベタな青春をしてみたい、っていうか、しろっていう友達たちからの圧力に負けた、いわゆる友達付き合いの一環で、ただの暇つぶしとか悪ふざけでやったことだし。二次元キャラしか興味ないっていうか、二次元キャラ同士が惚れた腫れたやったやられたしているのが好きなだけで、そこに私の存在はいらない」
「それでいいのか日本」
「いいんじゃない? 誰にも迷惑かけてないし」
「いや人口減っていう大迷惑かけてるでしょう」
「生む生まないの選択は女性の権利だし。その発言、政治家だったら辞職レベルの失言になるけど」
「いや、ここあなたの世界じゃないんで。あなたには生まない権利ないんで」
「クッソ汚い淫獣」
「ともかく結婚しろ。どうせ元の世界には戻れないし、相手の男性もそうなんで、二人仲良く子孫繁栄しろ」
「お前、私の話聞いてたか? っていうか、その男子どこよ? ここにいないけど」
「ちょっとトラブルがあってここに召喚出来ませんでした」
「トラブル?」
「彼には前世から縁のある女性がいたようで、それが障害になってここに召喚出来ませんでした」

こいつがラスボスじゃね?
BBQにしてもいいだろうか、うん、いいなこれ。

「あー……まあ、でもそういう彼女も一緒なら私の出る幕はないでしょ」
「邪魔だったのでその女性は帝国側に放り込んでおきました。男性はなんとかレジスタンスがいる地区に召喚出来ましたが、まったく手間をかけさせないでほしいですね。前世からの運命だとかなんだとか、大迷惑です」

こいつラスボスだ。
っていうか、お前らこそが大迷惑だろう。

「まずはお前を倒すってことでよろしいか」
「こんないたいけな精霊を殺すだなんてなにを仰るんです」
「突っ込み待ちか、お前のそれは」
「ボクがいないとこれから先、臣下や民とのコミュニケーション、各種祭祀、儀式といったことが出来なくなって大変困りますよ?」
「私はまったく困らないからいい」
「あなただけの問題じゃないんですよ!!!!! わかってます!?!?!?」
「あんたらの世界のことなんだからあんたらでどうにかしろ!!!!!! あっちのカップルは異世界トリップものの主人公とヒロインとして立派に運命とか奇跡とか結びとかなんかそういうのでたぶんきっとなんとかするだろうから、私は知らん!!!!!!」
「この鬼っ!!!!! 人でなしっっ!!!!!! あ、ボクは人じゃないんで、お前こそっていうツッコミは受け付けないよ? ボクとしてはなにがなんでも無理強いする気満々だからね!」
「知 る か ! ! !」

聖バレンタインと日本のお菓子業界の皆さん、あなたがたの伝承やそれに乗っかった売り上げアップのためのイベントがあってもなくっても、異世界に召喚されてたっぽい。
八つ当たり、ごめんね。
それから巻き込まれた二人、ごめんね。
謝ってすむ問題じゃなくならないように、ぜひ、一生懸命になんとかして生き延びてください。
私は元気です。
ここで淫獣を抹殺すべく、頑張っています。
腐女子仲間よ、必ず帰るので、それまで各種録画と雑誌の切り抜き、ネット記事の印刷にイラストのブクマ、イベントレポやCD、DVD、書籍のコレクションetc……お願いします。私はしばらくハンターになってこの異世界を駆け回るね。

「淫獣、必ずコロス」
「ボクは自分の役目を果たしたし、あとはこの世界の人間とその末裔の君の問題なんだからね!」
「どのツラ下げていいやがる、人間の価値観が通用しない生き物、死ねぇぇぇぇええぇぇぇぇぇぇえええぇぇっっっ!!!!!!」



*


説明が足りない部分は適当に想像して頂ければと。
後半は概ね某魔法少女のパロ、あと「じじい」というのは刀剣乱舞の平安刀、後半のヒロイン(?)の主食はみかつるです。

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