あなたと / 「雪乃都鳥」の小説 | メクる

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プロローグ

一一一一あなたは、私の救世主だった。







いつも華やいでいる繁華街。街灯やネオンの明かりで夜でも明るい。庶民の人々は日頃の疲れも愚痴も忘れて酒を飲み、飲み歩き、ときどき酔い潰れた者が道端に倒れて寝てしまう。明るくて人気(ひとけ)のするこの街は、なんだか落ち着く。

けれどそんな灯りもある程度の時間が経てば消えてしまう。人や人の気配も消えて、暗闇が広がってゆく。

その闇が怖い。闇が私をどこかへ連れて行きそうな気がする。ただそれだけが怖かった。

けれどそんな私の恐怖心も知らないように、闇は建物と建物の間の路地にまで迫って、とうとう私の小さな体まで隠してしまった。

いや、いっそのこと。

私は、レンガの壁にもたれてうずくまった。

いっそのこと、闇に溶け込んでしまえばと。闇に、溶けて蒸発してしまいたいと。

だんだんと寒くなってきて、しまいには手がかじかんで、私は両手に温かい息を吹きかけた。だんだんと眠くなってくる。

私は、ここで死ぬのかな。そう思っていると、急に誰かが話しかけてきた。

「お前、ここで何してるんだ?」

私はとつぜんでびっくりして、肩を揺らした。

「わ、わたしは」

私はその先を言うのに戸惑った。この人、なんでこんな明かりひとつもない繁華街にいるんだろう。怪しい。

顔も暗くてよくわからない。声だけ聞くなら、声変わりのしてない男の子の声だった。

「自分がなぜそこに居るのかも答えられないのか?」

言葉だけ聞くと怒っているように聞こえるかもしれないけれど、声のトーンは落ち着いていた。

「ち、違う!私は!」

私は少し上から目線の言い方にむかついて、大きい声で反論した。

「…私は?」

男の子は、その言葉の続きを催促した。やはり、声は落ち着いていた。

「わ、私は!その、逃げてきたんです!」

私は、やっと言えなかったことを言えた。先程はこの男の子を怪しんでいたけれど、今はそれも言っている場合じゃない。やっと言えた言葉は、私のSOSでもあった。

「逃げた?誰から」

男の子は静かに訊ねる。

「おじさん!私の服を脱がせようとしてきたの!」

男の子は冷静に考えている様子だ。

「理由はよくわからないが、ほんとに危険だったんだな?」

男の子は念を押してきた。

「そう、危険だった!」

私はそう、二度危険だったということを訴えた。

「しかたない。来い、匿ってやる」

男の子はそういうと、もたもたしている私の腕を引っ張って歩き始めた。

あたたかい手。



雪が、少しずつこの街に振り落ちてきた。

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