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短編小説
純文学
オリジナル
2018年05月08日 22:20 公開
1ページ(5489文字)
完結 | しおり数 0

純文学のはずなのだが、やはり少し不思議な物語になっている

ふしきの

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最近思春期ばかり書いていたのでちょっとばかり自分のペースを戻そうとした。

純文学っぽく書いてみたがどうしても家に入居するキャラクターに純和名がつけられないそんな違和感のある話。
思春期でみえたりみえなかったり消えたり消えなかったりする能力の苦労性の長男は見えなくなった方、本人はそれほど気にもしてない。不思議な家シリーズができたらいいな。

昔々遥か昔、自分のキャラクターモデルのお母さんは人魚とか特殊警察に出てきたサシャ·MCとそっくり。
怪力、どんなことでもおくびにもださない、ドラゴンに付けられた傷痕がある女性。
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都心から電車で一本。
郊外徒歩圏内。
ぎりぎりのライン。
それが今や通勤体系や土地価格の崩れた時期に家族は、好条件で払える額の中古物件を購入できた。
郊外の静かな邸宅。水回りリフォーム済み、ヒートショック対応策、最新家電リモートコントロール、即日入居可能、高級家具類等備品類譲渡とうたい文句はさらさらと出てくる。
「ゲストルームと主賓室にもバストイレあります」
値引き交渉がうまくいったと思い込んだのにふたを開ければ、ふっかけ値段だと知ったのは、支払い前日で……。
夜逃げ物件だの。
間引き物件だのの噂も後の祭りだったが、母として嫌な顔はしなかった。
けれども最後まで売り主は挨拶することもなく契約は終了したのは家族にとっては、心に傷がついてしまったのが、母は心配したぐらいだった。

長男がドアを開けながら、話す。
「前の人がいい人で良かったんじゃないかな?」
家具も家電も食器さえもついている。
「僕らが潔癖症じゃなくてよかったね」
との嫌みを込めて。
弟は「嫌なら100均か300円均一で買えるし」
と笑う。
家族の希望は、二階の生活スペースにトイレと風呂があることだった。ある程度の築年数は考慮しなくてはこういう物件は少なかったので、これも運命だと諦め気味で当たった物件だった。

まず最初に部屋取りで決めた長女がここに来てまたしても癇癪を起こした。
自分のお気に入り二つ窓の角部屋にピアノがあったからだ。
せっかくの出窓を邪魔する上に諦めたピアノ教室の苦い思い出を思い出した長女は
「退かして‼」
と泣き叫んだ。
「業者に頼んで‼今すぐに」
と言って暴言をはく。
「こんな部屋住まない、嫌だ。部屋変えろ」
と、双子の長男に殴りかかってしまう始末だ。
大きい大人が、と長男は思ったけれど殴り返せば、今度はバイクで「出ていく!」と、家から逃亡された。
「姉ちゃんはいつも癇癪を起こす」
下の弟は階段近くの自分の部屋のドアを青いペンキでマーキングして調子の良いことを呟くだけだった。
「母さんは?」
「なんか忘れ物したからって出ていったよ」
弟は兄を見ずにひたすらペンキをベタ塗りしている。

母が決めたのは電化住宅で火の気がないことも重要だった。もしものときの電力は自家発電出来る発電機さえ持参していたくらいだ。
それは、うちに新しい家族への配慮だと知ったのは彼女の容姿からもみてとれた。

「食器棚大きい、冷蔵庫!凄い!けどこの冷蔵庫の中身は食べていいものなのかな?」
「現状渡しだからいいんじゃないのタマゴ」
長男が横にいるとまるでヒヨコのように怯える。
それからしばらくして「臭いを嗅いで仕分けたら」と長男はそっと彼女から距離をとってジュースをつかんで離れていった。
そういう距離感。
「せっかく広げた荷物を隣に移さないとな、ああ、汗だく」
「お姉ちゃん、帰ってくる?」
「腹が減ったら帰ってくるよ」
「………うん」
長男は少しだけ彼女に触れようとして、手を伸ばしたが止めた。
「暇になったら食器洗いも手伝うよ」
そういって二階に上がっていく。
「母さんはいつもひょいと出かけると帰りがわからないから……ある程度の非常食も持ってきた段ボールにあるし……」


冷蔵庫と食器棚の間に半軒の板柱が掛かっている。
遠目から見れば食器棚の飾りともみれるそれは押戸で、スパイス棚にも見てとれた。


「ジョージおじさんが来たよ」
玄関で弟が大声で騒ぐ。
おじさんは「遭難者になるところだった」と笑う。
白髪でスレンダーでスタンダップコメディアンの顔はどこにでもいる優しい人だった。
犬が嬉しそうに走り寄ってきた。
「やあ、ハゲちゃん、ハゲなのにふっさふさのもふもふちゃん。おじさんは君のために奮発してステーキ肉を買っちゃったんだよ。って、皆にもね」
それを聞いて弟は小躍りする。
「車に積んであるから持ってきれくれないか、腰が痛くて」
「ハイヨー、合点だ」
ハゲという名の犬は本当に家に来たときは皮膚病で丸ハゲで人になつかず母がいつも胸の中で育てるほどひ弱い犬だった。今ではおじさんが大好きで誰にでもすり寄るもさもさの大きな犬になっている。
「こらこら膝に乗るんじゃありませんよ。おじさんは腰がね」
と大きなハゲは子犬のように乗ろうとする。
「それにしてもお前どこから出てきたんだい?お日さまの匂いがするね」
長男が蛇口から出した水を持ってきた。
「おじさん、水」
「おお、銘水。都会じゃ味わえない味」
「水道局は同じだから同じ味だと思うけど」
と、嫌なことを言う。けれども同時に二人は、その食器棚の飾りに目を向けた。間接照明にしては明るい光に。


小学生低学年の甲高い声が聞こえる。
窓ガラスの向こうから、音楽と練習。
行進の練習。おどりの練習。休み時間。校庭。
「わあああ、犬が来てる」
授業の中断。
「デケェ、犬だああ、はぐれ犬だああ」
声が聞こえる。
「ハゲ!帰っておいで」
犬はぐるぐると校庭を二度回って、部屋へ戻ってきた。
そしてその部屋からするんと出ていったのだ。

その部屋はビニール床の上に同じようなビニールを画鋲で張り付けた二重床で、床の間が変にあるけれど作りかけの大きな本棚がビスと共に散乱していたり、古い生地の和布団が畳んであったりの散乱場所ではあった。しかも、他は大窓ガラスの貼られた妙に明るい場所にそれを隠すようにカーテンが閉じてある。
ふわふわする地面を歩きながら眠っている所に膝をついた。
今も青白い皮膚。
長男は長年のビタミン不足だと思っている。
「タマゴ」
「ハゲ帰ってきた?呼んでも……あの子遊んじゃって……小さい子供たちが怯える前に」
「?肉を焼いて。ジョージおじさんがロース肉持ってきてくれた。俺には目玉焼きとソーセージ2本つけて」
「……トク?私眠っていたの」
長男の鼻に鼻を擦る。
彼女の挨拶だ。
「俺は犬じゃない」
「お肉ぐらい焼けない?」
「失敗したくない。特に上等肉は」
タマゴと母が言うこの人の目は黒目だけの目だ。白眼が見えないので初めて見たときはぎょっとした。その容姿から、タマゴというよりはピータンのような風体だと長男は思っている。
髪の毛も、うすぼんやりで、すべてがうすぼんやりだったから。
「静かな郊外の家だといったのにうるさいね。でもね、笑い声っていいね。走り回る音っていいね」
長男は何をいっているのかすぐに理解できた。
ガラス窓の向こうが小学校の校庭だったから……それでも長男にはそこが限界だった。理性が幻想を打ち破る年代に入ったから。
「1.5センチ、ミディアムで焼いて‼」
「うん。いいよ」
二人は部屋からでた。

犬が鎮座して動けない安楽椅子のおじさんは
「ねえ、音声認識で電気つけたり消したりって慣れるまで恥ずかしいものだね」
と、目を皺にして笑う。
弟は「僕は3センチ」
と言うのを無視しながら、兄は皿を温めるためにレンジのボタンを押す。
「おじさんは?」
「切り分けるの面倒だからサイコロにして」
「おじさんは、本当に楽にしたがるね、せっかくステーキなのに」
皆で笑う。
タマゴの手だけが的確に動いている。
塊を切り分けた肉が室温に戻る。
塩コショウのみの調理は火加減が勝負だった。
レアのないキチンとしたミディアムがテーブルに添えられる。
「ハゲちゃんはおじさんの脂身をご馳走しちゃうぞ」
「それ僕が食べたい」
弟が食い足りないと叫ぶ。
妹も帰ってきた、そっぽを向かって呟く。
「……いいよ。あの部屋で!」
長男は「また荷物移動させないと」と、愚痴ると「私の部屋に勝手に入らないで!」と、また怒鳴り散らした。
おじさんは飄々と笑って、笑い声でその場を和やかにしてくれる。
「タマゴは料理が上手」
「うん、それは同意。特に焼き料理が上手い」
「人が作ってくれるのは、ありがたいわ」
いただきますと、妹も席についた。
「そうだね、作ってくれた料理は美味しい」
長男はタマゴにきちんとそれを伝えた。
ケースワインを積んだ母が車で帰ってきた。
少しだけ冷える夜なので全員でホットワインを飲んだ。
弟は兄姉よりも色素が黒い。ハゲと言う名のモコモコ犬がいる。タマゴと親しく呼ぶ新しい母のパートナー。そしておじさん。
「ああ、いいわー。六人掛けのテーブル。家族がのんびり出来る広いリビングルーム。最高ね」
だけどすぐに不平不満が口々に出てきた。
「図面にない勝手に増改築した形跡があるみたい」
「それよりも西側、道路に突き出た家の角って怖い。歩道の設置が切れてて、絶対車が突っ込んで事故が起きるよ」
と母と妹が話す。
「トク?なに」
「あの部屋……」

おじさんたちと家族で裏を回ったけれど、家の境界線のブロックと柵簡易的に作られているだけの狭い犬走スペースだけで車道の緩やかな曲がった道路にはなにもなかった。交通量もまるでない裏道路はたぶん改修工事は気のとおくなるほど後々になるだろう。
けれどもその部屋は、夜でも昼のように明るくておじさんは
「サンルームだ。こりゃあ日向ぼっこにちょうどいいねぇ」
と笑っていったので家族で納得した。
大きな二面のガラス窓。
変なDIY。
「……声がする」
弟がカーテンを開けたけれど、そこには複合ガラスと高いブロック塀とその上にプラスチックの竹の壁までできている。
「あれーさっき裏を回ったときの柵とちょっとばかり違うかなぁ。あははははは」
おじさんは仕事があるので、もう一杯強いお酒が飲みたいと言い出して部屋から出ていってしまった。
妹は「ナイター練習するの。同い年?うん、参加OK!行く行く」とドタドタとスパイク靴をもって走っていってしまった。歪む空間に消える妹は楽しそうに誰かと話しているが、長男には分からなかった。
「変な窓」弟は飽きたようだ。
「リビングに戻ろうか。ここの入り口の半ドアが閉じないようにして、どうせあの子は腹が減ったら帰って来る」
母は全員を促した。


おじさんは母とタマゴの話を飽きるほど聞きたがる。
少しだけ昔の話。
おくどさんのある家でもてなされたにはいいが、風呂は衝立もない隣に釜であって、「ワシらは平気じゃから」と風呂に行けと促される。火の番と言われる風呂たきの仕事もタマゴの仕事だった。
土間のむしろで寝起きし、むしろから出ては行けない生活のようだった。火の粉で燃えかすだらけのむしろは土間の灰で消してある。
家人たちの目が玉肌を凝視しているのに閉口していたが、
「あら、跳んだ」
と、長タバコの灰を慣れた手で土間に飛ばすのを知って、とうとう切れた。
「お湯加減はいかがですか」
「芯が冷えるぐらい底冷えするわ」
の声にタマゴは怯えて尻餅をついた。
「あら、おかしいことを言いなさる、家の火の番の火加減に狂いはないはずですがな」
五右衛門風呂がめりめりと音をたてて崩れ、風呂台の土が流れ、土間が水で溢れた。
「それが、気持ちが悪いったらありゃしないんだよ」
彼女の体には傷があった。
心臓を抉られたような傷が全面に。
背中には首を掻ききられたような引っ掻き傷もある。
確実に二度死んだ形跡が癒着のように赤く、彫り物のように美しく、醜かった。
「ばけもの」
「化物はお前らだ」


おじさんはひゃっひゃと笑う。
「人間は愚かで面白ねぇ。はあ、面白い」
はい、おやすみなさいと引っ込んでいった。


タマゴの髪の毛は汚れたモップのような団子状ではなくなっている。ガリガリだった骨に肉が少しずつついている。
なによりも怯えることが極度に減った。まだ目の高さに手を持ってくるとビクッとするが、「髪の毛伸びたね」と撫でてやると喜ぶようになった。
「タマゴ、いつか海にいこう」
スクリーンではなくて。
「気が遠くなるなるほど航海の旅に二人で出るのも楽しいかもしれない」
「海?」
「潮の香り、島の幻影、雨との戦い。日差しの憎さ。そして嫌になるほど揺れる」
「家を買ってしまった初日に?」
「そう。そういうものなんだよ。不思議だね」
「不思議だね」


「トク?」
「ドアが空いているときはノックはしなくていいんだよ」
「なにをしているの?」
「天井のあれ、ってなにかな」
「部屋?」
「屋根裏部屋ってこと⁉」
「本棚のこれ、鍵のフック」
「あ、凄い!気がつかなかった!タマゴ凄い!」
「えへ」
凄い凄いと言いながらトクはタマゴを胸の中で抱き締めるとバタバタされたがしばらくしたら静かになった。変な熱をもった息でゆっくり体を離した。 
母よりも背が高くなった長男にはこの新しい人の存在はよくわからないもやもや感が心の中で一番おかしな感情だった。
「お化けとか死体とか金塊とか出てきたらどうしようか?」
トクはタマゴに笑いかける。

私の少ない友達の一人作家の方 と、昔『もちもちの木』の田舎せっちんが、どのくらい怖いかわかるかどれ程知っている、いたのかの話をしたことがあります。恐るべき田舎くらべ。
色の美しさと語彙の秀逸さは古典を愛する人独特で、さすがアート出のお方です。
くちなしの香りと、宇宙にひとりは私のおすすめ
くちなしの香りでや登山を愛する人の目を借り、私はまた書くことが再開できた。 緊縛やドクター(いやみすのなかにあるよ)、そして長編のひとつ白い手等である。(長編はこっちには移していません)

ねずみの巣ごもり
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  • camu 05月09日
    このつぶやきにはネタバレが含まれている可能性があります[表示]
    みんなが不穏な会話をしているから、今にも悪いことがしれっと起こりそうなミステリアスな雰囲気ですね。海外の作家さんが書かれる不思議な作品みたいで面白かったです。自分の読解力がまだまだだということが分かりました(^-^;) (ネタバレ)
     #家を選ぶ 家が選ぶ
    詳細・返信(4)
  • master猫 05月09日
    このつぶやきにはネタバレが含まれている可能性があります[表示]
    日本が舞台かと思ったら、ジョージおじさん(^_^;)
    不思議な世界ですね。
    (ネタバレ)
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    詳細・返信(1)
  • ふしきの 05月08日
    小説「家を選ぶ 家が選ぶ」を公開しました!  #家を選ぶ 家が選ぶ
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  • camu 05月09日
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    みんなが不穏な会話をしているから、今にも悪いことがしれっと起こりそうなミステリアスな雰囲気ですね。海外の作家さんが書かれる不思議な作品みたいで面白かったです。自分の読解力がまだまだだということが分かりました(^-^;) (ネタバレ)
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  • master猫 05月09日
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    不思議な世界ですね。
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