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お別れのキス

短編小説
恋愛
オリジナル
2018年06月27日 11:52 公開
1ページ(3242文字)
完結 | しおり数 0


vrymtl

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強い西陽がぼくらの影を長ーくする、そろそろ陽も暮れかかる時の事‥

「じゃぁ‥またねー!」
「うん!またね!」
「バイバーイ!」
「うん!バイバイッ!」

‥今となってはこれが最後になる会話だった‥いや、挨拶だった。

何時も自然な存在、何時でもまた会える存在でよく遊んでいた近所の子。
何をするわけでも無く何をしたいのでも無く‥
一緒に居るのが楽しかったから。

田舎町のとある商店街の裏通りに住んで居て、他にも近所の男の子とは遊んで居たけど、それとは違って一緒に居ると優しい空気になれたからだと思う。

口数は少なかったけど、話さなくてもお互いをわかって居た同士で‥
何で会うのか、何で遊んで居るのか‥お互いの存在を理解しているようで、それは家族と過ごす以上に大切な時間だった、だからケンカもしなかった。

ぼくの家の都合で引っ越しをして、
そのまま園時期が過ぎて、同じ小学校へも通って居たけど、この子は違うクラスだったから会話など無く過ごしていた。

やがて、園時期の記憶も薄れて進級する度に新しい友達やグループに慣れながら勉強して、季節のイベントも無事にやり過ごして‥高学年になった時、
またぼくの家の都合で今度は学区外に引っ越しするから、
会話どころかもう顔をを見ることも無くなった‥

いわゆる転校をする事になった。

転校が決まる前、既に学区外へ引っ越して居たから通学が大変だった。
その頃、父親の姿はもう家には無くて母親の原付バイクの後ろへ乗せられて暫くは学校近くまで行き、降ろしてもらう毎日。
ところが下校手段の記憶があまり無い‥

法令では二人乗りは罰則対象で、何度かパトロールの婦人警官に停められる。母親もぼくを降ろしてから直ぐにパートだから、親子してもう限界だった‥そして転校を決断する。

転校して行く者に、お別れの会と称したお祭りを設けてくれたが拒否した、
この頃から心が曇り空だったし、愛想笑いをするほど余裕は無く疲れていたから‥。

新しい学校も、この性格に救われて直ぐに友達は出来たから何不自由なく学校生活を過ごした‥やがて、好きな子も出来る。
この時、園時期の幼馴染を思い出すけど‥また厄介な個人のイベントで、残す3学期だけを前にまた転校となる。場所は、歩いてもバイクの二人乗りでも遠い母親の実家の学校だった‥しかも実家に居候と言う。
後から気づいた事は、親に捨てられたと言うこと‥

小学6年にして、この試練と言うか運命と言うか‥幼い子供の精神力は強いもので、転校も繰り返すと慣れてしまう反面、少しばかりか生きて居る心地はしなかった薄れた記憶がある。
転校する前の担任の先生との面談で拒んだ記憶もある‥、夏休み前だったから良い機会だとマンガを全巻貸してくれた‥
それは、『はだしのゲン』だった。

前の学校での教育方針で、マンガを読むとバカになって勉強しなくなるから読むな!と言われた事を思い出すが、ここの学校では柔らか頭が方針だったようですんなり受け入れてひたすら読んだ、夏休み中にと言う期限もあったから読み慣れないマンガをただ読んだ、と言うか鑑賞していった。

主人公は歳がぼくと同じくらいの少年‥
読み続けて、2/3ほどで気が付いた‥
生きている心地がしないと思った自分はまだマシな方だと。
今は戦中でも無ければ、原爆が落とされていないし病気にもなって居ない。
ただ、親の都合での状況だけだ‥と思うと少し気持ちが楽になった。

安心感と同時に、幼馴染、前の学校の事、そしてここの学校の事の楽しい事だけを思い出して居た‥大人になった今でもよく思い出す。
これを読ませてくれた担任の先生は他にも言いたい事があったようで、それが今の自分自身となって居る事は大人になってから気がついていく‥。

やがて引っ越しと転校で、母の実家で過ごす。
実家だが母親は居ない‥
暫く幼心で母親を待つが、違う生活環境と実家の弟夫妻がとても温かく接してくれたので忘れるくらいになっていく。こちらの学校でも、転校当日に家に遊びに来る友達が出来るほど苦労知らずだった‥。
何度かこんな事を繰り返して居ると、とても複雑な気持ちになるのは正直な話だ、大人になってからの転職とは訳が違う‥それでも酷くグレなかっただけ幸いに思う。

3学期だけの数ヶ月間、こんな性格にも助けられ無事に卒業する。
中学へと進学するが‥数ヶ月間で仲良くなった子、また実家の近所のタバコ屋の子を好きになる。
近所=女の子=好きな子‥
また園時期の幼馴染を思い出すも、今までは気がつかなかったけど、好きだったのか?と考えると‥まだ答えが出ない。

人は、物心が付いてからの記憶が頭に残っている。それが最初の頃の思い出になって居るんだろう‥それだけかな?考え出すと止まらない、悩み出すと他が手につかなくなるからあまり考えずに居た。

やがて、ひょっこり現れた実父が迎えに来て引っ越し、一緒に暮らしながら通学するが、もう他に隣町で家族が居る。
こっちは、離れて暮らす飼い犬状態で夕飯だけ何処で買ってくるほか弁が帰宅すると置いてある、それは必ず牛めし丼だった、半ば一人暮らしと言うやつか?
ここも慣れっこになって居る学区外、
中学生ともなれば育ち盛りの反抗期で元気だけはあるから自転車での数キロは苦ではない。

しかし、部活動と言う余計なものをやり過ごさなくては帰れないから、嫌々参加し帰宅後はクタクタに成り、夕飯を食べれば風呂も入らず寝てしまっていた日が続く。
半年くらいして、実父に聞いたかどうかわからないが事実上、自分を捨てた母親が心配そうな面持ちも無く現れた‥迎えに来てくれたようだった。

そして自力でまた引っ越しをする。

港がある隣町のかなり町中で、近くには中学校がある‥また転校か?
この歳の頃は、とても繊細で地元ではあまり評判も良くなかったと判断し、現在通学している学校へ駅まで自転車、駅からバスでの通学を選んだ。
現在では、学校を学区外でも選べる制度が普通にあるらしいが、当時は珍しかったようだ。

自宅から学校までの行き来が二時間かかったが、自分の中の価値観では譲れないものだった‥そして無事に卒業する事になる‥

自分自身にお疲れ様。

もうこの後は、思春期も通り過ぎて高校進学し‥そのまま10代も終わる。

こうして今と成っては、
大人の感情と思考と回想を繰り返して成長した自分が居るけど、その間も何度となく恋愛して、出会いと別れを繰り返したが、悔やむ事が多い。
でも、それも自分だし別れを言わずに会えなくなった人も居る‥。

それにしてもこの幼馴染の子は、
夢には決して出てくる事が無かった。
誰かしら、気になる人は夢にまで出てくるのが人の潜在心理で、これだけは未だ不思議に思う。

大人になってから、風の便りで母親に聞いた話は‥この幼馴染が2つ隣町の駅前デパートで働いてる事と父親が、自分たちが20歳くらいに自殺したと言う事。父親も薄っすら覚えて居る、遊びに行くと、とても良くしてくれた。
評判も良かっただけに、娘の幼馴染はさぞかし辛かっただろう‥。

こちらも、母親が再婚した相手が別れた後に岐阜の山奥で自殺した‥。
因縁とか運命とか試練とか、思えば人生の半分は波乱万丈だった気がする。

唯一、何も考えずにとても楽しく幸せと言うものかどうかわからないけど、空気が柔らかで優しい思いを過ごせたのは幼馴染と一緒だった時間だろう。

幼児期に、とても背伸びをして‥
最後の会話、挨拶をした交番が隣にある小さな公園の向かい合わせに座って揺れる遊具に乗って、キスをしたのも未だ忘れられない記憶だ‥あの子は元気かな?

風の便りが無い事は無事なんだろう、
一言だけ伝えたい‥小さくても優しく柔らかい思い出を "ありがとう‥" と。



おわり




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