メクる

累計 17899855 スキ
BL・アダルトの
切り替えはこちら

あなたと二人のミルキーウェイ

短編小説
恋愛
TL オリジナル
2018年07月07日 02:13 公開
1ページ(1881文字)
完結 | しおり数 0


  • 閲覧数

    397

    217位

  • 評価数

    5

    126位

  • マイリスト

    0

    204位

フォント
文字:--%
行間:--%
 愛花は自宅のベランダで空を見上げていた。毎年、七夕の時期は大抵雨で、彦星と織り姫はなかなか会えない。しかし今年は違ったようだ。
 夜空には雲ひとつなく、美しい天の川が見えていた。もう少し街の方に降りていたら、こんなに綺麗には見えなかっただろう。愛花と尚樹の新居は、少し山の方にあるので周囲に灯りがない。そのおかげで綺麗な天の川が見えるのだ。

「海まで行けば、夜光虫も見えるのかな」

 愛花がひとり言を呟くと、背後でベランダの網戸が引かれる音が聞こえた。隣に尚樹がやって来て、愛花の肩にそっとショールを掛けてくれる。

「ありがとう、尚樹さん」
「今日は少し冷える。昨日までは真夏日だったのにな」
「うん。でもだからこんなに綺麗な天の川が見えるのかも」

 そうだな、と尚樹が愛花の肩を抱き寄せてくる。二人で夜空を見上げ、しばらく黙っていた。

「彦星と織り姫は、一年に一度しか会えないのは、寂しいね」

 愛花がぽつんとそう呟いた。愛している人の傍にいられなくて、会えるのが一年に一度だけで、それもたった一日しか一緒にいられないなんて切なすぎる。おまけにその日が雨だったらまたもう一年、待つことになるのだ。

「そうだな。愛花だったらどうする?」
「え? 私だったら? う~ん、尚樹さんに一年に一度しか会えないなんて、耐えられないよ」

 本音で答えると、上を見ていた尚樹がこちらを向いた。彼の目は「それで? どうするの?」と聞いているようで、愛花は考える。

「もしも私だったら、尚樹さんのお気に入りのランジェリーを着けて、天の川の反対側で誘惑するかも」

 悪戯っぽく笑いながら、尚樹をチラリと見上げて言う。思いがけない答えだったようで、尚樹の驚いた顔を見られて楽しくなる。

「きっと尚樹さんは我慢できなくなって、天の川をなんとか渡ろうとするの」
「で?」
「それで、尚樹さんは向こう側に渡るために色々考えて、近くにいたこぎつね座に聞いてみるんじゃないかな」

 愛花は勝手に話を作っていく。空に光る星の中から夏の大三角を見つけ、そのうちのひとつを指さした。同じように尚樹も空を見上げる。

「でもこぎつねは言うの。僕じゃ君を運ぶのは無理だよ。川を渡るなら泳げる方がいいんじゃない? って」
「天の川を泳いで渡るのか?」

 尚樹の声が弾んでいる。愛花は楽しくなってさらに続けた。

「そう、泳いで渡るならいるかがいいねって、近くにいたいるか座に聞いてみたの」
「いるか座か。アルタイルから少し南東の方かな?」

 あれだろう、と尚樹が指さして、愛花もその指先の方を見る。しかしどれだか分からなくて視線を彷徨わせた。

「右の方にある一等星のアルタイルから少し左側。分かるか?」

 尚樹が愛花の背後に回ってくる。肩口に顔を乗せて、愛花と同じ方向を見上げるようにして指さしてきた。急に近づいてくるのでドキッとする。尚樹の甘いフレグランスが鼻孔に流れ込んできて、愛花は星どころではなくなりそうだ。

「え~っと……あれ、かな」
「そう、分かった?」
「う、うん」

 様子のおかしい愛花に気付いたのか、尚樹が頬にキスをしてきた。くすぐったいよ、と肩を竦ませて言うが、彼はキスをやめない。

「尚樹さん……それ以上は、まずいよ」
「まずい? そう? 織り姫と彦星も今ごろこうやって……仲よく……してるんじゃないのか?」

 話ながら首筋にちゅうっと吸い付かれた。こうなったらもう星どころではない。腰に回った尚樹の腕が愛花のシャツの中に滑り込んでくる。体を密着させたままベランダから離れ室内に誘われた。

「もう見ないの? 一年に一度しか天の川は見られないのに」
「愛花は窓から見ていていいよ。ベッドからでも見えるだろ? 俺は……彦星だから、織り姫を存分に味わおう」

 そう言って愛花のシャツの前ボタンを外し始める。さっきの話はまだ終わっていなかったけれど、今はもう尚樹に夢中だったのでいいかな、と思ったとき、彼が愛花の胸の先に口付けながら言う。

「そういえば、アルタイルは翼があるから、天の川を飛んで渡れるよ。だからなにも問題はない」

 ニヤリと得意げに微笑んだ尚樹が、再び愛花に覆い被さってきた。キスをして欲しい、と言った愛花の願いを、彼はすぐに叶えてくれる。
 天の川を見ながら、愛花は愛しい人の背中に腕を回した。きっと今ごろ彦星と織り姫も二人だけの時間を楽しんでいることだろう。

【END】

最後まで読んで下さってありがとうございました!

スキを送る

累計 160 / 今日 0


残スキ 300

『スキ機能』とは?
『スキ機能』とは『スキ』ボタンを押すことで作品や作者を応援できる機能です。
※拍手機能に類似した機能です。

[スキ機能のルール]
※1人あたり1日に300回まで『スキ』を送ることができます。
※1作品でも複数作品でも合計が300回まで『スキ』を送ることができます。
※『スキ』は1スキ、『大スキ』は10スキ、加算されます。
※1日に与えられるスキの数は毎朝4時にリセットされます。
※自分の作品にはスキ機能は利用できません。
※『スキ』は匿名で作品に送られます。

スキ!を送りました

作品を評価する

深雪まゆ/柚槙ゆみさんを

フォローしたユーザーの
作品投稿やつぶやきなどの最新情報を
マイページでチェックできます

マイリストに登録する

この作品につぶやく

このつぶやきは「TL」に分類されます

#あなたと二人のミルキーウェイ
 

500

みんなのつぶやき 一覧

イメージレスポンス(0) 一覧

この作品へのイメージレスポンスはありません

タグ一覧 編集

この作品にタグはありません

友達に教える

  • ツイートする
  • イイネ
  • なうで紹介
  • はてなブックマーク
  • GoogleOne

この作品を見た人はこんな作品も 一覧

作者の投稿小説(13) 一覧

作品登録マイリスト 一覧

登録された公開マイリストはありません

その他


コーナー R

作品宛みんなのつぶやき

もっと見る

作者の他の作品一覧

一覧を見る

copyright (c) 2013-2018 メクる Co.,Ltd. All rights reserved.