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赤い自転車とイソギンチャクの化石

短編小説
純文学
オリジナル
2018年07月10日 19:43 公開
1ページ(1427文字)
完結 | しおり数 0

私小説部類。 飽きたら消す

ふしきの

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閑話休題
ママチャリ初期の頃、まちなかに遅れて田舎でも重たい高級ステンレス自転車よりも一万円で買える粗悪品でもいいから欲しいという大量消費の時代に移った時期だった。ステンレスの自転車よりも重量が軽い分、あまりのこぎやすさの改革、変形自転車の改悪が流行っていった。シャコタン、カマキリ、ライダーっぽいの。もう、あの12段変速やウインカー付きの電池をはめ込みまくったトラック野郎タイプが急激に収束した時期でもある。だけど、男乗り女乗りとか、やたら目ざとく煩い同級生がいたのも確か。
うちの地域は赤は珍しくそういうのがあったかも。ボルドーが出るのはもっと後。定番の黒。定番のシルバーとなって落ち着いたね。
だから赤の本物の跳ね馬のチャリを持っている人以外は偽物を持っているとかで極刑扱いだった。
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石切場の積載車が車での早朝が私の遊び場だった。

砂利の中に不思議な石を探すのが楽しかった。

鋭利な石も子供心にぐっと来た。

けれど、今朝は違っていた。

あまりにも遊びに行く回数が増えたため、自転車のチェーンに砂が噛んでしまい、自転車が重たくなってにっちもさっちも行かなくなったのだ。

その日は、朝、姉と喧嘩する前に、姉の赤い自転車をチョッパって来た。

仕方なくって言う方が良いだろう。

カマキリのようなハンドルにキチガイ色の赤い自転車。

私達の周りで郵便局員以外で赤い自転車を選ぶやつなんかいるわけがないという子供独特の呪い文句だ。

姉が癇癪を起こして殴りつけながら文句を言われる前に、早めに母のいる病院に洗濯物を取りに行くことにしたのだ。

私は母の洗濯物を持ってひとしきり花虫綱という名前である変な物体を手に眺めていた。総合病院のエレベーターは巨大ホテルのようにおろそしくフロアに並んでいた。

エレベーター内の収容人数も多く、広い空間だった。

時計草のようなまんじゅうみたいなすっぽりと手に収まっているよくわからない化石を見つめていた私の横に、父の幼馴染でもあり、私達子供の幼馴染でもあるみずなりのおっちゃんとたっくんがいた。

みずなりのおっちゃんはまだ石立鉄男に似ていると言われる前のええおとこで、たっくんもジャッキー・チェンに似ている鼻をしていない。

「きみはるにはいうなよ。あいつはまだガキだから動揺する。お前がしっかりせえよ」っておっちゃんが言っていた。

科は違うけどおばちゃんが入院していて何か深刻な様態なのだろう、ってことは知っていた。

うちも大概深刻だったんだけど。なれるとは怖いもので、うざいのか、洗濯物かかりは大概私の当番になってきていた。母もせせこましい人で絶対に下着を出そうとしないのでいつもタオルだった。それでも病院臭いタオルは臭かった。

それがやっと「洗濯物は洗濯機が洗ってくれる、わしは干すだけじゃ」とか「ちゃんと洗剤は湯に溶かしてから入れている」とか「わけ洗もしているからはよう出せ!」って日々言うようになってようやく慣れてくれたみたいだった。だけれど、点滴で汚れたタオルにくるまって嫌そうに差し出す洗濯物というのは母の屈辱なのだろうと理解しつつも、すべてのことにだるいと思いつつあった。

私は子供の顔をした老人だった。

たっくんが私を見つけて、おじちゃんが動揺していた。

たっくんは私にフラフラ近づいてきて、抱きつくと大泣きをした。エレベーターの中の人達は無言で人の微妙な動きだけしていて天井の空調の風だけがふわふわ回っていた。

じんわりとシャツが涙で濡れているのがわかった。

でも、私の脳内は、早く帰らないとなぁ。バカ姉は頑として赤い自転車貸してくれなかった。でもチョッパッタのバレたらどうしよう。今日の体育館の朝練の時間は何時だっけとか考えていたのだ。そして、ま、遅かれ早かれ見つかって難癖つけられて殴られるのは決定事項だなぁとも、諦めの境地に入っていった。



夢の中での私はいつも普通サイズの背の高い人になっている。

だから姉と同い年のたっくんが抱きついて泣いても普通に下を向いてそっとしておいてあげれた。

私は、平べくたいシャツから濡れていく涙を肌で感じるだけだった。


ああ、やっぱり夢だ。

と、そういう夢を今朝見た。

2017年8月12日 私小説部類

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