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ご近所ファイト

短編小説
コメディ
オリジナル
2015年02月12日 14:53 公開
1ページ(4091文字)
完結 | しおり数 0

*お題募集とキャラ化タグで短編を書きました。

河野 る宇

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*お題一覧
【ちくわ/オッサン/紅白褌/かき氷/花火/麩菓子/泣き虫/戦艦】
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 日本の、とある都心に近い住宅街──近くには小さな山があり、夏には涼しさを運んでくれる。
 小鳥のさえずりが、朝の清々しい空気に彩りを添えていた。
 晴天の空を仰ぐ人影──馬場 雪菜(ばばゆきな)──は唇の端に笑みを刻んだ。
「ふふふ……今日は何か素敵な予感」
 27歳、既婚の彼女は夫を見送り心のアンテナを広げる。
 可愛く束ねられたポニーテールをいじり、お出かけの準備をするため家に入っていった。

 雪菜の家からほど近い場所──小さなマンションの一室で女性が1人、ニヒルな笑みを浮かべていた。
 名を六藤 飛鳥(むとうあすか)という。21歳の彼女は現在、かなり年上の彼氏と同棲中である。
 肩までの茶色い髪に、両耳にある小さなハートのピアスが可愛く光っていた。
 仕事に行く彼氏を見送ったあと、テレビに映っている英国紳士にニヤニヤしていた。彼女は部類のオッサン好きで知られている。
 実は雪菜とは仲の良い友人関係で、好みでは過大に熱弁を振るい合う。紳士的なオッサンを好む飛鳥とは逆に、彼女は野性味溢れる筋肉質な男性が好みである。
 特に褌姿には目が無く、紅白だったらもうハイテンションになる。当然だが、趣味の範囲であって自分の夫に無理矢理着けさせる気はない。
「趣味は趣味のままが美しいのよ」
 そんな持論をかたくなに唱えている。
 まあそれはそうと、飛鳥は晩酌のちくわを買うため出かける準備を始めた。

 所変わって飛鳥の住むマンションの近くにある小さな公園で、青年がベンチに座って溜息を連続で吐き出していた。
 木瀬 健二(きせけんじ)は先日、バイトをクビになった。
 元来の正義感のせいで、客をぶん殴ってしまったのだ──それまでの経緯は、語るも涙の話である。
 コンビニのレジをしていた彼は、隣のレジの客が女性店員にやたらとクレーム付けている事に苛立っていた。
 夜勤で眠いせいもあったかもしれないが、チノパンを履いて鼻ピアスをした、いかにもチャラいその男は相手が女性だからと威勢を張っているようにしか見えず、挙げ句に女性店員の胸ぐらを掴んだ。
 健二は、それにキレて素早く駆け寄ると顎に拳をヒットさせた。
 見事なパンチを下顎に食らった客は、脳が揺らされて床に倒れ込み店長にこっぴどく怒られて解雇──という流れだ。
 同僚の女性は必死に店長に客が悪いと言ってくれたが、やはり殴ったのは良くない。相手もばつが悪いのか、刑事事件にまではならなかった。
 とりあえず買おうとしていたかき氷を無料で差し上げて、店側は事なきを得たのだ。
 結局、損をしたのは健二だけかもしれない。
「はぁ~……」
 長く息を吐き出し、がっくりとうなだれた。

 さらに別の場所──彼女は帰路についていた。
 たったいま、彼氏をフってきた所である。途中の駄菓子屋で麩菓子と花火を買い、アパートに向かう。
 兎崎 麻衣(とざきまい)は、彼氏の言動に腹が立ったのだ。
 数々の事に注意はしてきたものの、いっこうに治そうともしない。挙げ句にコンビニの店員にいちゃもんつけて殴られたとか。
 呆れるにも程がある。
 今朝、彼氏に会うとあごに怪我をしていたため問い質したら案の定だ。もはや溜息しか出てこない。
 自分は強いと思いこんでいる事に呆れるが、横柄な態度が麻衣をさらに苛つかせていた。
 初めは普通だったのに、いつの間にかそんな男になっていたのだ。否、違う──麻衣に気に入られようと、そんな態度を取っていたのかもしれない。
 もちろん、それが良い人というワケではなくて、ただ単に麻衣の好きそうな人間を演じていただけだろう。
 男はそれを演じ続けられなくなり、少しずつ本当の性格が最近になって表れてきていたのである。
 聞いたこっちの顔が赤くなった。まさかここまでのバカだとは思ってもいなかった。
 ほとほと呆れて、つい先ほど平手をお見舞いして別れてきたのである。
「あースッキリした」
 緩くカールした背中までの髪を流して発し、部屋の錠を回した。

「キャー!?」
 朝も早くから──いや、昼近くから住宅街に耳をつんざく女性の悲鳴。
「うへへへへへ」
 通勤する者のいないこの時間は、変態の時間でもある。コートの下の裸体を歩いていた女性にお披露目するのがこの男の日課であった。
 それ以外はさしたる事はせず、ただ驚いてくれる事に快感を覚えている。ある意味、人畜無害の変態だ。
 それだけで満足しているのだから、言ってしまえば放置してたって問題は無い。
「キャー! イヤー!」
「うあははははは!」
 最近はみんな驚くフリだけして去っていくので刺激が足りなかった男は、こんなに驚いてくれる女性に喜んだ。
 しかし次の瞬間──
「げふぁっ!?」
 音もなく駆け寄った影にクロスチョップを浴びせられた。
「あたたたたたたたたっ!?」
 背中の痛みと、倒れ込んだ時に肘を打った痛みに悶絶する。
「あ、ありがとうございます」
「いいのよ、今度から驚くフリだけすればいいから」
「は?」
「彼、これだけが楽しみだから」
「あ、ああ……なるほど」
 地面に転がっている男に視線を落とし、頭を下げて去っていった。
「ぐおおおお~、よくも邪魔してくれたな」
「楽しんだんだからいいでしょ」
  巳天 由子(みあまゆうこ)は言いながらしゃがみ込む。
「もっと楽しみたい」
「おまわりさん呼ばれたいの」
「ごめんなさい……」
 変態の彼が許されているのには訳がある。
 この男は実は強い、そのため他の変質者がこの近辺には近寄らないのだ。
 他の変質者がいては自分もそうだと思われてしまうという感情から彼は他の変質者には厳しいのだが、誰が見たって同じ変態にしか見えないと思われる。
「あんまり無茶はしない方がいいよ」
「はい、そうします」
 30代の男が20代前半の女性に頭が上がらない様子は滑稽にも見えるが、なんとなーく微笑ましい気さえしてこないだろうか。

 またまた所変わって──
「うう、くそ」
 少年は涙を浮かべながらトボトボトと、昼下がりの住宅街を歩いていた。
 今日は振り替え休日のため中学校は休みなのだが、歩いていると道で遊んでいた小学生に絡まれて逃げてきた所である。
 別に見た目がどうとか、態度がどうとかではなく、この少年の特性とも言うべきか。とにかく彼は周囲にいじられ──もとい、可愛がられてしまう性質なのである。
 少年の名は根岸 光男(ねぎしみつお)、15歳。焦げ茶色の短髪に大きな瞳が可愛らしい。
 クラスでもみんなのアイドル的存在である彼は、感極まると泣いてしまう質なのだ。それが返って周囲にいじられてしまう結果になるのだが、こればかりはそう簡単に変える事は出来ない。
 戦艦があればみんな僕をいじめないのに──などと、およそ現実味にかける想像をしながら駅に向かう。
「!」
 そんなとき、ふと目に留まった公園にある1本の木。
 今まで気がつかなかったけど──
「蜂の巣!?」
 そこには、大きな楕円形の蜂の巣が枝と枝の間にぴたりとくっついていた。
 この道は住民もあまり通らない抜け道のようなもので、目の前の公園は遊具は少なく狭い敷地であるため子供はほとんど来る事がない。
 そのせいで被害も無かった訳だが、蜂に巣を作らせる結果にもなった。
「ど、どうしよう……」
 このままスルーっていうのも悪い気がする、かと言って誰かに言う勇気もない。
「こ、交番」
 一度も行った事の無い交番の場所なんて解るはずがなく、光男はオロオロとした。
「こんなとき戦艦があれば──」
 被害は甚大です。
「どうした少年」
 背後から助けの声、少年は嬉しくて振り返った。
「あ、あの。あそこ」
「ん? ああ? でっけぇ蜂の巣だな、スズメバチか?」
 眉を寄せて健二がのぞき込む。
 どうやら立ち直ったらしい、くよくよしても仕方がないと吹っ切れたのだろう。
「そこまでは解りませんが……」
「しかしこりゃちょっと危険だなぁ」
「なになに?」
 雪菜が騒動の予感をかぎつけて問いかけた。
「あそこ」
 いきなり女性の登場に光男はビクッと一瞬、体を強ばらせたが怖々と蜂の巣を指差す。
「あらぁ~大きいわね」
「とぅ!」
 3人の間から黒い影が蜂の巣に向かって飛び、巣が公園の中にはじき飛ばされた──
「!?」
 驚く一同の目に、空手の構えで立っている1人の女性が映る。兎崎 麻衣(とざきまい)だ。
「ちょっ!? おまっ! 何してんだよ!」
「だってなんとかしなくちゃ……」
「ああああああ!?」
 少年が公園の中を指差すと、蜂の巣から大量の蜂がわんわんと出てきていた。
「あら?」
 予想に反した状態に、麻衣は半笑いでそれを見やる。
 蜂の巣は公園の中心まで飛ばされたせいか、蜂は敵が見つからず辺りをうろうろとしているだけのようだ。
 それにホッとしたが、蜂の巣自体をどうにかしなくてはならない。
「普通に業者に頼めばいいんじゃない?」
 雪菜の提案に一同は「それもそうだ」と納得した。
「私が電話するから、みんなは人が近づかないように見張ってて」
 言って雪菜はスマートフォンを手にした。
「解った」
「どうしたの?」
 通りがかった飛鳥が雪菜に話しかける。
「蜂の巣があるの」
「! へえ」
 飛鳥は珍しそうに蜂の巣を眺めた。
「……」
 それを公園の反対側から由子がずっと見ていた──こちら側の警戒をみんなはすっかり忘れているようなので、自分がする事にする。
 反対側の人間は全員、知らない人たちだが蜂の巣に関して心は1つだと由子は警戒を続ける。

 そんなこんなで、彼らは今日も平和です──それぞれに生きながら、どこかで出会う事もある。
 不思議な出会いと不思議な縁と、複雑に絡み合う糸を操る事は出来ない。
 でも、その糸を楽しめたらいいよね。

 いつかまた、彼らと出会える日が来るのでしょうか。

END

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