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Participation-パーティシペイション-

短編小説
SF
オリジナル
2015年02月13日 14:37 公開
1ページ(9861文字)
完結 | しおり数 0

短編/SF/コメディ要素あり

河野 る宇

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*別サイトにて「SFロボット企画」に参加した作品です。
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 宇宙歴3054年──地球人類が太陽系を飛び出してから3000年あまりが過ぎ、今や地球銀河連邦は惑星間においての交流に重要な存在となっていた。
 地球人類は宇宙に拡がり、それぞれの生活を続けている。
 宇宙という特殊な環境下で特別な能力ちからを得た者も少なくはなく、それによる職業も多様化していた。

★ ★ ★

 惑星モルグスカイ──太陽系から数百光年ほど離れた銀河系にある惑星だ。
 乾燥地帯が多く、高い山が連なっている。海は全体の4割ほどで淡水、主にモルクス星人が住んでいる。
 建物は過去の地球にあったプレハブを思わせるが、造りはかなり頑丈だ。
 その中で一際ひときわ、大きい建物──全長15mの小型宇宙船なら、易々(やすやす)と納まりそうな程の倉庫。
「助けてくれよシルヴィ!」
 耳の長い男が、銀色の髪の青年に泣きついた。
「突然呼び出してなんだよ」
 眉を寄せて問いかけると、黒い猫目を目一杯丸くしてシルヴィと呼んだ青年の両肩を掴んだ。
 男の名はバルパル、モルクス星人である。
 地球人でいえば30代半ばの165㎝細身で少々、融通の利かない処がある科学者だ。178㎝のシルヴィを見上げて、何かを訴えたそうに目を潤ませている。
 男が目を潤ませても色っぽくも可愛くもない。
「で? なんだよ」
 冷たい視線で見下ろすと、バルパルは緑色の瞳を一瞥し口を開いた。
「これは内密に願いたいんだが、実はいま軍から戦闘用ロボットの開発を頼まれていてな」
 パサついた茶色の短髪を雑に整える。
「戦闘用ロボット?」
 シルヴィの後ろから、ひょいと顔を出した青年が聞き返した。
 彼の名はディラン・ウォレストマン、シルヴィの友人だ。銀河連邦、軍部特務課に所属していた過去を持つ。
 赤茶色の髪と青い瞳、大きめの目が可愛く年上の女性に好かれるタイプだ。
 シルヴィと呼ばれた青年はシルヴェスタ・アークサルド、『なんでも屋』を生業としている。
 通り名は「白銀」──彼は特殊能力を持つ地球人だ。
 電子機器を狂わせる能力『ストライダー』であると同時に、今で言う霊能力者や超能力者という意味の『エナジー・ブレイン』でもある。
「なんじゃ、民間人が軍の開発に携わっておるのか?」
 これまたひょいと出てきた小さい人物はスナイプ人のナナン・セリオル。シルヴィの師匠的な存在だ。
 外見は、髪の生えた緑色のトカゲ人間と言えば解りやすいだろう。かなりの高齢だが、足腰は至って元気である。
 その老人の後ろに無言で立っているのは、ナナンの弟子のリャムカだ。
 スナイプ人は生まれついての『エナジー・ブレイン』で当然、彼もそうである。師匠と弟子は寝食を共にするという慣習があり、常にリャムカが側にいる。
 基本的に彼らは白髪だが、リャムカは珍しく緑がかった金髪だ。
「それだけ俺が優秀ってことだ」
 ふふんと鼻を鳴らす。
「その優秀な人がオイラたちになんの用なの?」
 土人形のような風貌をした人物がしれっと尋ね、男は「うぐっ!?」と喉を詰まらせた。外見では解らないが彼は少年だ。
 名はエイルクといい、カーセドニック人である。
 半鉱石の体を持ち、その体の構造物質から地位が決まる。因みに少年は最下層の『ダート』だ。
「実はな……プログラムでちょっとな」
「ちょっとなに?」
 大きめの瞳でディランが小首をかしげる。
 25歳の男がそんな可愛いしぐさをしても許されるのが彼だ。

★ ★ ★

 しばらく話を聞いていた白銀たちだが──
「はあ!? 俺たちにそれを止めろって?」
「俺には無理だから頼むよ!」
 呆れた白銀にすがりつく。
「そんなの軍に頼めよ」
「プログラムミスだけなら言えたけどね!」
 半ば投げやりに笑みを浮かべ、肩をすくめた。
「そいつが外に出ちゃって、人のいないとこに誘導して閉じこめるの必死だったんだよ」
 もうそれだけで限界、科学者の俺がそれを止めるなんて無理!
「なんだよ、遠隔操作出来ないのか」
「だから、プログラムミスのせいで不具合起こしててこっちの操作が一切利かないんだってば」
「なんで起動なんかさせたんだよ」
 腕組みしつつ溜息混じりに白銀が問いかけた。
「起動させるつもりなんか無かったよ。入力したプログラムのせいで勝手に起動したんだよ」
「しかしだな、俺はそんなもの相手にしたことが無いぞ」
 いくら馴染みの友人でも、こればかりはすんなりと受ける訳にはいかない。
「こういうのが得意そうな奴を知っとるじゃろ」
 ナナンが意味深に発した。
「あん? ああ、あいつか」
 しばらく考えて思い出す。
 確かにあいつ以上の適任はいそうにないが、果たして現在どこにいて暇なのか。
「知ってる奴はあいつしかいないしな。仕方ない」
 小さく溜息を吐いて、パンツのバックポケットから端末を取り出した。軽く操作していくと、馴染みの顔が映し出される。
<おう白銀、どうした>
「ベリルがどこにいるか調べてくれないか」
<ん? あいつに用事か>
「ああ」
 映し出されている男に返し、返事を待つ。
 この男は、寄せられてくる依頼を振り分ける仲介屋だ。白銀の場合、メンバーが多いため比較的難易度の高い依頼が振り分けられてくる。
 もちろん、今回のように指名される事もある。
「ベリル? あのベリル? 傭兵で不死者(マクロディアン)の?」
「知ってるの?」
 いぶかしげに問いかけるバルパルにディランが首をかしげる。
「あいつなんか呼ぶな」
 眉を寄せて拒否した様子にさらに首をかしげた。
「なんで?」
「嫌いなんだよ。エラそうだから」
「ああ、そういうコト」
 人によってはそう捉える場合もあるかもね。と、ディランはさして抑揚のない返事を返した。
「死なないからっていう言動が端々に見えたりしてよ」
「なるほどねぇ」
「解るだろ?」
 同志を見つけたように笑みを浮かべる。
「そうだね。きっとバルパルのしゃべり方が嫌いな人もいるだろうしね」
「……」
 ニコニコと返され、どう反応していいか迷い無言になる。
「と、とにかくだ。そいつは呼ぶな」
「そう言われてもさ、俺たちだけじゃ対処出来ないから呼べないならキャンセルするけどいい?」
 これまたしれっと返され、ぐうの音も出ない。
<問題ないそうだ、連絡先を教えておいたからじきにかかってくると思う>
 バルパルとディランのやり取りを横目で眺めていた白銀に、仲介屋からの返事が返ってきた。
「そうか、ありがとう」
 礼を言って通話を切ると、しばらくして呼び出し音が鳴った。
<どうした>
 画面には何も映し出されていないが、この声は確かにベリルだ。
「ちょっと厄介な依頼でな」
<少し待て──そちらに向かう。2時間ほどで着くだろう>
「よろしく頼む」
 通話を切って、あからさまに嫌悪感を放っているバルパルに歩み寄る。
「ディランの言うように嫌ならキャンセルだ」
「解ったよ!」
「なんでそこまで嫌ってるの?」
 エイルクが尋ねると、バルパルはふてくされた様子で口を開いた。
「軍の武器開発をしてるって言ったよな。数年前に軍の模擬訓練があって、傭兵を呼んでの訓練をしたんだ」
 その中にベリルがいた──内容は街中を模もした場所での市街地戦の訓練だったのだが、傭兵チームのリーダーはベリルだった。
 軍40対傭兵20での模擬戦はベリルの傭兵チームが圧勝した。
「わたしが作ったシミュレートをことごとくかわしていきやがってぇ~」
 ふるふると握った拳を震わせる。
 ああ、それで……と一同は納得した。
 自信を持って作成したシミュレートはベリルの動きに対応出来ず、あっけなく軍チームは破れたのである。
「あれでわたしの評判がやや落ちたのだ!」
 これが怒らずにおられようか!
「そのあと何か言われなかった?」
「え?」
 ディランの言葉に視線を上げて考える。
「ああ、そういえば。ここのプログラムがどうのとか言ってたような」
 傭兵のくせに! と思い出して体を震わせた。
「で、そのプログラムは言われたとおりにしたのか?」
「やるワケないだろ! なんで傭兵に言われて書き換えなきゃいけないんだよ!」
 白銀とディランは、声を張り上げるバルパルを見やり互いに目を合わせた。
「まあいい。とりあえずベリルが到着するまで、そのロボットの資料を出来るだけまとめておいてくれよ」
「解った」
 バルパルは渋々、まとめ作業にとりかかった。

★ ★ ★

 およそ2時間後──開けておいた倉庫の入り口から大きな音を立て灰色の塊がその巨体を浮かせて入ってくる。
「すげぇ! 最新の小型宇宙艇だ!」
 あまりはしゃぐ事の無いディランが嬉々として駆け寄った。
 大型宇宙船舶ライセンスを持つ彼は、白銀の大型宇宙船のパイロットも務めている。つまりは宇宙船ヲタクなのである。
 そうして、宇宙船の腹の部分から出てきた人物に白銀たちは懐かしさを覚える。
「ベリル久しぶり!」
 エイルクが手を揚げて呼ぶと、その青年は整った顔立ちに笑みを浮かべゆっくりと白銀たちに歩み寄った。
 金のショートヘアにエメラルドの瞳が印象的な25歳ほどの外見に細身の体は筋肉質で、とても傭兵とは想像もつかない上品な身のこなしだ。
 厚手の前開きシャツにデニムパンツはどちらも青系で統一されていて、実際は高価な服では無いと思われるが彼が着ていると高く見えてしまうから不思議である。
「久しいな」
 相変わらずのジジ臭い喋りに白銀は口角を吊り上げる。
 白銀たちがベリルと初めて出会ったのは、地球時間で3ヶ月ほど前だ。冷たい印象を受ける外見とは違い、柔らかな物腰と物言いに不思議な安心感を覚える。
「大体の内容は来る間に聞いたが、どういったものだ」
 ベリルは、睨みを利かせているバルパルにさしたる関心もなく尋ねた。
「ふ、驚くなよ」
 バルパルは自信ありげに応えると、コンピュータの横にある被せていた白い布を取り払う。
 そこに表れたのは──二足歩行のロボット。
 外見は骨組みだけだが、その銀色のボディから伝わるなんとも言い難い圧迫感に白銀は眉を寄せた。
「こいつはまだプログラムを入れてないから動かん」
「ふむ、素材は」
「我が軍が研究開発した金属だ。ちょっとやそっとの攻撃じゃビクともしない」と誇らしげに語るが、ベリルはそれにしれっと言い放つ。
「軍から持ち出し許可を得ているのかね」
「……」
「プログラムはこれか」
 半笑いのバルパルから視線を外し、デスクの上にあるコンピュータをのぞき込んだ。
「おい、機密情報だぞ」
 ムッとしたが、
「それを倒して欲しいのだろう?」
「うっ」
「ならば協力してもらわねばな」
「見たって解るもんか!」
 あ~、完璧にベリルのペースに乗せられてるな……一同はそのやり取りに苦笑いを浮かべた。
 思えば機密ならここにあるのもおかしいのだ、強い事は言えない。
「ふむ」
 ベリルはある程度の流し読みをしたあと、思案するように小さく唸った。
「ほらみろ、わかんねぇだろ」
「この短時間で読み通せるほどのプログラムではなかろう」
「ぐっ……」
 どう見て取ってもバルパルに勝ち目はなさそうだ。
 それに、ベリルの様子からしてプログラムについても知識を持っている事が窺える。
「マシンを閉じこめている場所の詳細と、ある程度の性能をまとめているか」
「ああ、ここにある。読んでみたがかなり厄介そうだ」
 白銀がA5サイズほどの薄い端末を手渡すと、ベリルは目で応えてそれを受け取り、表示されている文字と図に視線を移していく。
「ふむ、用意した武器で対応可能なようだ」
「! 持ってきたのか?」
「何があるか解らんのでな。常に一定数は積んである」
 端末から目を離すこと無く答えて、再び小さく唸った。
「範囲が狭いな。プロトタイプにしては搭載している武器が強力だ」
「俺も驚いた」
 何せ、小型のプラズマキャノンを積んでるんだからな──人間なら、やや強い反動に扱うのは多少の困難を要するが、こいつにそんなものは関係ない。
「60万クレジットでどうだ」
「!? そんなに払えって!?」
「1人10万か、悪くないな」
 白銀は口笛を鳴らした。
「だったら1人だけでやってくれ! そんな金は無い」
「そうしたいのは山々なんだがね。見る限り、単独で倒すのは骨が折れる」
 時間をかけている間に閉じこめている範囲から出てしまう可能性もあり、短時間で済ませる事が重要だ──名うての傭兵にそう言われれば考えざるを得ない。
 今は誰も攻撃を仕掛けていないため、戦闘用ロボットも小康状態を保っている。
「ここに記されている通りの反応なのかは疑問だが、出来る限りの対応を練っていく」
「俺たちは何をすればいいんだ?」
「今から出す武器の点検を行ってくれ」
 言って、小型宇宙船に足を向けた──

★ ★ ★

 それから、武器の確認を30分ほどで終えてベリルの元に集まる。
 グレーのミリタリー調の服に着替えたベリルは、集まった一同を一瞥していき小さく頷く。
 テーブルの中心に、コインに似た黒い物体を置きB5サイズほどのモバイルコンピュータを開く──すると、コインから淡い光りが放たれて扇状に拡がり、どこかの町並みが立体的に表示された。
 ホログラムというやつだ。
「プロトタイプ用保護プログラムの作用で現時点で行動範囲の制御に成功しているが不完全なプログラムで起動しているため確たる保証は無い」
 重々しい言葉にエイルクは固唾を呑む。
「だが、不完全なプログラムが功を奏した。カメラに若干の死角がある」
 背後にあるオフスイッチも有効である可能性が高い。
「つまり、そのスイッチを押すかロボット自体を破壊すればいいワケか」
 応えた白銀にベリルは頷き、話を続けた。
「比較的、動きの良い白銀と私がそれを狙う。他は引きつけておいてもらいたい」
「リャムカもなかなか素早いぞい」
「図体がデカイ」
 スパッと言い切られ、二の句が継げない。
「特殊フレームだからそう簡単には破壊できないぞ!」
 背後からバルパルが意気揚々と応え、白銀はそれに溜息を漏らした。
「止めて欲しいのか、ほしくないのかどっちだよ」
「止めて欲しいに決まってるだろ!」
「ならば黙っておけ」
 リャムカは腕を組んで威圧的に発した。
「渡した電磁シールドである程度の攻撃は防ぐ事が可能だが、連続使用は避けるように」
「入り組んだ所だな」
 ホログラムを見て白銀が眉を寄せる。
「再開発予定の地区で現在は無人らしい」
 装備を調えながらベリルが応えた。
 いざ開発を始めるという段階で市長の汚職が発覚し、今も手つかずの状態である。
「ヘッドセットに記されたマーカーを常に確認し、各々の役割に集中してくれ」
 決行は今から1時間後だ。

★ ★ ★

 ──真昼を少し過ぎた町並みは、まるで音を吸収しているかのようにしんとして肌寒ささえ感じる。
 かつて人々が生活していた場は荒(すさ)み、風の音だけが冷たく流れていく。
 ベリルはその風景に目を細めたあと、黒い物体を取り出した。
 手のひらに納まるほどの球体の上部にある突起を押すと、それは音もなく浮き上がり遙か上空に消えた。
 それを確認すると、全員がヘッドセットを右耳や左耳に装着していく。
 ヘッドセットからつながっている小さい透明の板にいくつかの点が表れた。黒い点は自分を示している。
 誘導するメンバーはリャムカとナナンが組み、ディランとエイルクが組んで行う。白銀とベリルはそれぞれ背後の停止スイッチを狙い、他は破壊の方向で作戦は決行された。
 ターゲットのロボットには人の目の位置にある2つのセンサーだけでなく、体のあちこちにセンサーが取り付けられている。
「まったく、厄介なことをしてくれる」
<早く壊して報酬もらおう~>
 白銀が溜息混じりに発すると、右耳に装着したヘッドセットからエイルクの声が響いた。
「!」
 それに応えようとしたとき、少し離れた場所から小さな爆発音がする。
 どうやらリャムカたちが先に仕掛けたらしい。右目の画面を見やると、赤い点が黄色の点を追いかけるように移動していた。
 その方向には青い点、ディランたちがいる──赤い点は黄色から青にターゲットを変えたらしく、今度は黄色が止まり赤と青が動き出した。
「わぁー!? 来るよ来るよ!」
「はいはい、いいから走って」
 うろたえているエイルクをなだめるようにディランが軽く発して駆け出す。
 銀色のロボットは二足歩行だが人とは異なり、異様さが窺える歩き方でディランたちを追う。
 補正機能があっても動いている相手に当てるのは難しいらしく、2人の周囲をビームがかすめていく。
「今度はオイラを盾にしないでよ! さすがにプラズマキャノンはだめだから!」
「え、なんのこと?」
 とぼけるディランに、うぐぐ……と歯ぎしりした。
 リャムカは、そんな様子を眺めながら眉を寄せる。
「こっちが数発打てば相手は数十発返して来る。これでは破壊するのは至難の業ですね」
「うむ。やたら頑丈なもんじゃからダメージを与える前にこちらが逃げねばならん」
 つくづく厄介なものを作ってくれやがって……そんな感情を心に秘めて、一同はロボットを追いかける。
<そういやこいつ名前あったっけ?>
 呑気に尋ねるディランの息は、心なしかやや荒い。
<正式名称はまだだそうだ>
 よく通る声が答えた。
 緑の点は同じように移動しているというのに、その声からはまったく疲れを感じない。鍛え方が違うということなのか、不死だからなのかは解らない。
 ベリルの場合、ただ不死というだけで白銀やリャムカ、ナナンのような特殊能力がある訳じゃない。
 しかも、人間と同じで痛みも変わらずに持っている。
 いつから不死なのか、どうやって不死を得たのかは誰も知らない──話すのが面倒なのか、話したくないのか。
 いずれにせよ白銀たちにとって、この手の方面では頼りになる人物である事は確かだ。
「これではらちがあかんわい! 別れるぞい」
「!? お師さま!?」
 進展の見られない状態に苛ついたナナンが何も持たずに弟子から離れていった。
 歳を取っているとはいえ、それなりに場数を踏んできた師匠ならば心配はないと思いつつリャムカは躊躇(ためら)いがちに見送る。
「すまない、お師さまが別行動を……」
<仕方がない。ナナンは無理な攻撃は避けるように>
<了解じゃ!>
 ベリルに応え、表示されている位置を確認しつつ移動する。
「これが奴で、これがあやつか。ふむふむ」
 つぶやいて動き出す。
 その点の動きに白銀が眉間のしわを深くした。
「じいさん何やってんだ?」
 うろうろと挙動不審を続ける紫の点をいぶかしげに見つめるが、緑の点はそれに合わせるような動きを見せ始めた。
「?」
 なんだ? ベリルは何かやる気なのか?
 紫の点は、赤い点の進む方向に向かおうとしているようだった──その対角線上に緑の点が進んでいく。
「! まさかじいさん」

★ ★ ★

 息を殺してロボットに近づくナナンは、意を決したように目の前に立ちはだかる──両手をバッ! とロボットに向け、険しい表情で睨み付けるとロボットの動きが鈍くなった。
「む……。こいつはなかなか、押さえるのが億劫(おっくう)じゃな」
 何かに耐えるように奥歯を噛みしめた。
「じいさん!」
「!?」
 ロボットから放たれた閃光は、飛び出してきた白銀の目の前で輝きを散らして消えた。すかさずナナンを抱きかかえて道の脇に身を隠す。
「何やってんだよ」
「いや、動きを止めればスイッチを押せるかと思ってな」
「動きを止めても武器が危険だからだめだって話し合っただろうが」
「『エナジー・ブレイン』が3人もおるんじゃぞ、何か方法があるはずじゃ」
<ターゲットの目前でなければ使えんのか?>
 ベリルが割って入った。
「視界に強く入ればそれだけ力を向けやすいのじゃよ」
<ふむ、では交互にシールドと動きを止める芸当は可能か?>
「なんだって? 順番に電磁シールドを使えってか? タイミング難しいなおい」
「その必要はない」
「! リャムカ」
「我々が同調すれば電磁シールドを使わずにシールドを張ることが出来る」
「動きを止めなきゃ向かってくるじゃないか」
 シールドに集中してしまったら、ロボットの動きを止められない。
「地図と照合したが、すぐ近くに大通りがある」
<障害物は>
「なかった」
「? 何をする気なんだ?」

★ ★ ★

「おーい、こっちじゃこっちじゃ!」
 ナナンは大きく手を振ってロボットを呼ぶ。
 その動きにロボットは反応し、ナナンを追い始めた。
「わひゃひゃひゃひゃ! 足が遅くて助かったわい!」
 そそくさと逃げるように駆ける。
「来るぞい!」
 一際(ひときわ)、拓けた場所にたどり着くと、待っていたリャムカと白銀に発した。
 幅10m、距離にして100mほどある道路に3人は並んで立ち、ロボットを待ち受ける。
 建物の間を流れる微かな風の音が支配するなか、徐々に近づいてくる小さなモーター音──3人を認識したロボットは感情もなくレーザーを放った。
 しかし、それは白銀たちの眼前で霧のように散っていく。
 それでも攻撃は止まず、少しずつ距離が縮められていった。
「……早くしろよ」
 白銀は口の中でつぶやいた。
 攻撃が利かないと判断すれば、プラズマキャノンを撃ってくるはずだ。さすがにそれを防げる自信はない。
 ふと、ロボットの攻撃が止んだ。
「!?」
 白銀はぞわりと背筋から冷たいものが走るのを覚え、危険が迫っている事を感じた。
「ベリル!」
 張り上げた刹那──ロボットの足下に何かが転がってくる。
 それに注意が逸らされたのか、メインカメラがそれに合わせられた。爆音と共にロボットが体勢を崩し、左脇からベリルが駆け寄る。
 ロボットはそれに対応しきれず、あえなく背後にあるスイッチで動きを止めた。
「おせえよ」
 安堵の溜息で発する白銀に、ベリルが笑みを浮かべた。

★ ★ ★

「やー、ありがとう。あんまり壊れてないみたいで良かった!」
 バルパルは礼もそこそこに、差し出された試作機を眺めた。
「まったく、次からは気をつけろよ」
「解ってるって」
 呆れて腕組みする白銀に視線を向けずに手で応える。
「! あいつは?」
 視界にベリルがいない事に気がつき、怪訝な表情で見回した瞬間──軽い破裂音が倉庫中に響いて振り向く。
「!? あああああ! てめっ……なにやってんだよ!?」
 レトロなハンドガンを構えているベリルに叫びを上げた。
 彼が撃ったのは、プログラムの入ったコンピュータだ。
 ベリルは火花を散らす灰色の箱を見やって無表情にハンドガンを仕舞い、バルパルに薄く笑みを浮かべる。
「問題ない」
 あとのプログラムは軍でやれ。
 しれっと言い放ち、乗ってきた宇宙船に姿を消した。
「なんなんだよ!」
 半泣きで破壊されたコンピュータを見つめる。
 有無を言わさぬベリルの行動に、白銀たちは唖然とした。
「実は怒っていたんじゃな」
 ナナンの言葉に白銀は、「そうか……」と口の中でつぶやいた。
 一歩間違えれば近くの住人の命を奪っていたかもしれない、一番最初の犠牲者はバルパルだったかもしれない。
 冷静で感情を示さず冷淡な印象を持つベリルが、実は一番熱い奴なのかもしれない。
「人は見た目では解らない」とはよく言ったものだと、白銀は感心した。
 何はともあれ直接、連絡が取れるようになったのは喜ばしい。

 これでベリルも彼らの仲間入り──なのか?

 fin


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1 関与すること。参加。加入。
2 放送で、番組内コマーシャルに、その番組提供企業以外の他社のコマーシャルを入れること。PT。

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