メクる

累計 16028251 スキ
BL・アダルトの
切り替えはこちら

【二次創作ゼノプリ】「Veuillez appeler le nom」

短編小説
その他
二次創作
2015年03月03日 15:57 公開
1ページ(5566文字)
完結 | しおり数 0

真夜中のシンデレラの話。ゼノ様BD話。

koike-maya

  • 閲覧数

    3215

    116位

  • 評価数

    6

    476位

  • マイリスト

    1

    298位

こちらではお初になります。何か不備などありましたらお知らせ下さい。
フォント
文字:--%
行間:--%
「ゼノ様の欲しいものはなんですか?」

いつか彼女がそんなことを聞いてきた。ゼノは端正な唇を微かに緩め、彼女の手を取り口を開いた。

「そうだな……俺は……」







空は冷たい空気を孕み、木々はすっかり葉を落とし冬支度をはじめたある日のこと。

夕月は朝、寝室で目を覚ますといそいそと着替え中庭に一人佇んでいた。

夜露に濡れたバラが美しく、咲きほころんでいる。

かがみこみ、そっとふれた。

夕月がゼノの正式な婚約者としてシュタイン城に輿入れてから数ヶ月経っていた。

城内、そして城下では国王ゼノ挙式の準備と言うことで厳かに、だがどこかお祭り騒ぎでもあるかのように忙しくも賑わっていた。

ウィスタリアのプリンセスでもある自分の婚姻は、双方の国にとって友好関係をもたらしている。

そのおかげか以前より出来る様になったとユーリが教えてくれた。

ユーリは元々シュタインの騎士でウィスタリアには表向きは執事、本来の目的は内情を探る為にスパイとして潜入していた。

それを聞いてショックではあったが、誤魔化さずに話してくれた。

全ては主、ゼノの為を思っての行動だった。けして許されることではない。

だが、誰でも出来ることではないだろう。一歩間違えれば命を落とすことだってある。

見事なまでの主への忠誠心だと思った。

そして、忠誠を誓う相手がゼノと自分になった。

元来の人なっこさ変わらずに身の回りの世話などしてくれている。自称ゼノの右腕。

同じ側近のアルバートとそれについていい争っているのを度々見かける。

言ったら怒るだろうが言わないがあの二人のやりとりは周りからみていると楽しい。子供の喧嘩と同じだ。

ユーリが本音で向き合える数少ない相手だった。

ゼノは執務が忙しく、このところ、朝と夜のほんの片時しか挨拶程度にしか話せていない。

今朝も気づいたらベッドから既に抜けていた。

いつも自分が起きるころを見計らい、髪を撫でてキスしてくれることも知っている。

一見素っ気なく口数は少ないが、いつも自分をさり気なく気遣ってくれる。

過ごせる時間は少ないが、それでも彼が微笑んで見つめてくれるだけで、それだけで幸せだった。彼の深々とした強い意志を宿した瞳。

時々怖くなるくらい、けれどそれ以上に惹かれていった。

誰も知らない、自分だけの彼になる。







「どうしたらいいのかな?」

夕月はため息をつきぽつりとつぶやいた。

もうすぐ婚姻の儀式、の前に彼の誕生であった。

いつも貴族や官僚の人達が勝手に贈り物をくれると淡々と答えてくれた。あまり興味が無い様にもみえる。

『お前はいつもどんな風にお祝いするんだ?』

自分の誕生日の話をするととても興味深そうに目を細めて聞いていた。

そして最後にポツリとこうも呟いていた。どこか少年の様に藍色の瞳をほんの少し煌めかせ。

『楽しそうだな』

きっと自分が大切な人とケーキを食べたり、一緒に過ごすような経験、城下内ごく当たり前のこと知らない。

彼は生まれた時から王の世継ぎとして育てられた。ただ、それだけの為に。

自身でも感情の起伏があまりないと言うくらいだ。

彼にはもっと笑っていて欲しい。

いつも国の為に、頑張っている彼に―――。

「あ、いた、よかった」

「全く、プリンセスがこんなところで一人で出歩くとはあまり関心しませんね」

聞き覚えのある声に振り返ると夕月は苦笑した。

「ごめんなさい。ユーリ、アルバート」

気づくと日がだいぶ登っていた。

寝室に自分がいないと探しに来てくれたのだろう。

「どうしたの?なにか深刻な顔してたけど」

「大方、ゼノ様のことでしょう」

くいっと眼鏡の縁を上げアルバートが呆れ気味に言った。頬が熱くなるのを感じた。バレてる。

そんなわかりやすいだろうか。

かいつまんで打ち明けた。

「貴女がすることならなんでもゼノ様は喜びますよ」

「アル、わかってないね」

「なっ!」

「確かにそうかもしれないけど、夕月様はゼノ様が今一番喜ぶことをって悩んでるんでしょ?」

「うん」

よく考えたら自分は彼のことをよく知らない。きっとこの二人よりも。

ギュッと唇を噛み締めた。そして口を開き、腕を掴んだ。

「二人にお願いがあるの」







ゼノは執務室でふと手を止め、窓の外に目を移した。

窓からは庭園が見渡せた。

今朝、ふと寝室に立ち寄った時彼女の姿が見えないからどこへ行ったかと思えばあんなところに。

相変わらずのおてんば振りにゼノはくすりと優しい笑みを浮かべていた。自分でも気づかないくらいに。

側近の二人も一緒であった。

彼等には彼女のことも頼んでいた。

最初はやや煙たがっていたアルバートも今ではすっかり打ち解けていた。それも彼女の性格故だろう。

楽しそうに談笑しているのが手に取る様にわかる。

その光景にゼノは微笑ましいと思いつつ胸にもやっとした何か痛みに近い何かを感じた。

(なんだ、この感じは)

ゼノは目頭を抑えた。少しコンを詰め過ぎたのかもしれない。

『休むことも大切ですよ』

いつか彼女はそう言ってくれた。

国王である自分が疲れたなんてそんな弱音を言っていては臣下や守るべき城下の民へ示しがつかない。そうおもっていた。

だが、彼女は違った。ありのままの自分でいいと。

(今日は早めに終わらせて夕月のとこに戻るか)

彼女にもっと触れたい。足りない。

ゼノは背筋を伸ばし、山積みになった書類に向かった。







「終わった~」

夜、夕月は一人自室にこもって手紙を書いていた。

『今の夕月様の手紙を書いてみたら?ゼノ様喜ぶよ』

朝二人に助言をもらい促されたこともあるが、自分でも書きたいと思っていた。

ただ、今の気持ちを伝えるだけなのに、彼のことを思うだけでドキドキしてうまく書けなかった。くず入れには何枚失敗したか物語るようにくしゃくしゃに丸めた紙が山になっていた。

言わなくてもわかることもある。

だが、時には必要だから。

籠に入っているシロフクロウのスピネルを出すと、手紙を足にくくりつけた。

「お願いね」

優しく囁き、ぎゅっと抱きしめると空に離した。

夕月は微笑むと張り詰めていた緊張がほぐれたのかそのままベッドに倒れこむように眠ってしまった。

(ゼノ様・・・)







数刻後、公務を終えたゼノは夕月の部屋に向かっていた。

いつもどんなに遅くなっても待っていてくれた。今夜は少し早めできっと驚くだろう。

「夕月」

ドアを叩いたが、返事がない。

(寝てしまったのだろうか?)

真夜中とはいえ、別に婚約者の部屋に入るのはいささか問題はないだろう。

ゼノはドアノブに手をかけ、静かに中に体をすべりこませた。







「夕月、夕月」

優しい自分を呼ぶ声がした。

ゼノ様だろうか?

夢、そうだ。早く起きなきゃ。

だが、気だるい睡魔に襲われ、まぶたが重たい。それに何故か心地よい。

夕月は無意識にその声に向かって手を伸ばし、唇を開いていた。







ゼノはしばし唖然としていた。

探していた彼女は敷布もかけず体を丸めて眠っていた。

(なんとも愛らしいな)

プリンセスとしてはなんともはしたないと言われそうだが、ゼノにとっては夕月だった。無防備な姿に顔が綻ぶ。ベッドの端に座り髪をなんども梳く。

このまましばらく眺めていたが、さすがに風邪をひいてしまうだろう。

その時、羽音が聞こえた。

「スピネル?」

ゼノは窓を開け、腕に止まらせた。

スピネルは指を掻いて甘えるようなそぶりをみせた。主人にとても忠実な優秀な梟だった。最近は彼女にもとても懐きとても可愛がっていた。

足に手紙が括りついていた。眉根を寄せつつも、すぐさま確認し目を見開いた。

「これは―――まいったな」

ゼノは頬を染め、満足気に微笑んだ。

スピネルを鳥籠にいれると、夕月にそっと唇を重ね、そのまま抱き上げ部屋を後にした。







朝、夕月は夢心地のまま目を開け、ふと辺りを見回すと一気に覚醒した。

どうして彼の部屋で寝ているのだろうか?

額に手をあて記憶を必死に探る。

確か少し眠ろうと横になったのまでは覚えていた。

まさか自分で無意識に彼のもとへ行ったのか?

それとも―――。

夕月はそこまで考えてやめた。

どっちでもいい。彼とこうして一緒に過ごせるのだから。

窓からさす淡い光に照らされる静かに眠る彼の姿に笑んだ。相変わらず美しい。と見惚れてしまう。

こんな光景にも久しぶりだ。そっと頬にふれる。

今日はいよいよ誕生日だ。

夕月はゼノの眼帯を外し、顔を寄せ口づけた。二人の時はいいと以前に言ってくれた。自分だけにみせてくれる彼の素顔。

夕月は大きく息を吐き、耳元で囁いた。何度も練習した。大丈夫。

「おはよう……ゼノ」

はっと我に返った瞬間顔が熱くなるのを感じた。

鼓動がうるさいくらいに跳ねている。

本当はちゃんと面と向かって言わないといけないけど恥ずかしくて言えない。頬を抑える。名前呼べないなんてなんとも情けないやら。でも一歩前進だ。

仮にももうすぐ王妃になるんだから、慣れなきゃいけない。

いや、違う。

―――私が、呼びたいんだ。

プリンセスじゃなくて、あくまで夕月として。

「さ、さあ、起きなきゃ」

ぬくいベッドから抜け出そうとしたその時強い力で腰をさらわれた。

「どこへ行くんだ、夕月」

「ゼ、ゼノ様?」

寝起き特有の低い艶のある声が耳もとで響き、夕月は体をびくりこわばらせた。後ろから大きな手で強く抱き締められてもはや身動きがとれない。心臓が壊れそうだ。

「・・・違う・・・ゼノだろう?さっきはそう呼んでくれた」

「・・・っ!聞いてたんですか?いつから」

まさか狸寝入りだったのだろうか?

いや、まさかそんな。考えないようにしよう。途端に顔が青ざめる。

「さあな。それとこれ」

ゼノは手を緩め夕月を解放すると懐から一通の手紙を出した。振り向いた夕月は更にみるみる目をまるくした。

「それ、よ、読まれたんですか?」

「あぁ。俺にあてたんだろう」

「そ、そうですけど」

ゼノは夕月の手を取り片方の手で胸に寄せた。

「返事、いまここでしていいか?」

「え、あ……」

ゼノはまっすぐに夕月だけをジッと見つめている。淡い灰色の綺麗な瞳がかすかに揺れている。どこまでも見透かしたような眼差しに、どこか恐ろしいと思う反面、けして目を逸らすことなんて出来なかった。

初めて会った時から強く惹かれていたのだから。

国王ゼノとは知らないあの頃。

ただの一人の男性として。

ゼノは微笑を浮かべ、手の甲に唇を寄せた。

「仰せのままに。プリンセス」

「・・・ゼノ様」

「だが、その前にしてもらうことがあるな」

「え?」

「もう一回呼んでくれないか?」

「な、何をですか?」

「名前」

「だ、ダメです。あれは……」

「あれは?」

ジリジリと詰め寄られ夕月は冷や汗をかいた。

「い・・・・・・一日一回限定ですから、明日にならないと、声が出なくて」

蚊の鳴くような声で苦し紛れになんとか言葉を紡いだ。なんだそれは。

あれだけ言うのもやっとだったのに。面と向かってなんて言えない。今は、まだ。

「わかった」

すんなり諦めてくれてくれて安堵したのもつかぬま、唇に生暖かい感触がした。

ゼノは面白そうに口の端をつりあげ、夕月の喉をなぞり囁いた。

「楽しみは先にとっておくものか」

「ゼ、ゼノ様」

「なんだ」

「わ、私頑張りますから」

「あぁ」

「別に、呼びたくないとかそういうのじゃないです」

涙ぐみながら必死で訴えるする姿が妙に愛おしく思えた。心がぶるりと震えた。

いつだって彼女は誠実だった。

「夕月……わかってる」

焦ることはない、これから時間はたっぷりあるのだから。いたわるように指を絡めた。

「ゼノ様……あの」

「?」

「ありがとうございます」

「なんだいきなり」

「いえ、なんでも。じゃあ、もう一回寝て下さい」

「何故そうなる?」

「だってそうじゃないとフェアじゃないですから……私、起こそうと思ったのに」

どこか不服そうに呟いた恋人にゼノは笑みをこぼし、夕月を抱き上げた。

「きゃっ、ゼノ様?」

「じゃあお前も一緒に寝てくれるか?」

「ど、どうしてそうなるんですか?」

「昨日の夜から―――。今日からのやり直しだ。どうする?俺が欲しいか?欲しくないか?」

「ゼ、ゼノ様」

夕月は涙目になりながらもゼノをなけなしの理性で見上げた。

ゼノはどこか少年のような面白気に挑むような瞳を覗かせていた。

(た、楽しんでる)

答えなんか決まってるのに。ズルイ。でも今日は特別だから。

夕月おずおずと背中に手を回し、顔を近づけ耳元そっと呟いた。とびきりの笑顔を添えて。










―――あなたの一日を全部私に下さい。







ゼノの懐にしまわれた手紙がかさっと音を立てた。どんなものにも勝るとも劣らない、最高の言葉だった。










『あなたが生まれてきてくれて

私、前よりもっともっと幸せです

ありがとう、ゼノ』








スキを送る

累計 10 / 今日 0


残スキ 300

『スキ機能』とは?
『スキ機能』とは『スキ』ボタンを押すことで作品や作者を応援できる機能です。
※拍手機能に類似した機能です。

[スキ機能のルール]
※1人あたり1日に300回まで『スキ』を送ることができます。
※1作品でも複数作品でも合計が300回まで『スキ』を送ることができます。
※『スキ』は1スキ、『大スキ』は10スキ、加算されます。
※1日に与えられるスキの数は毎朝4時にリセットされます。
※自分の作品にはスキ機能は利用できません。
※『スキ』は匿名で作品に送られます。

スキ!を送りました

作品を評価する

koike-mayaさんを

フォローしたユーザーの
作品投稿やつぶやきなどの最新情報を
マイページでチェックできます

マイリストに登録する

この作品につぶやく

#【二次創作ゼノプリ】「Veuillez appeler le nom」
 

500

みんなのつぶやき 一覧

  • キタリュ 03月09日
    真矢さん♥

    遅くなっちゃってごめんなさい…
    まさかここでも王宮読めるなんて…!
    ゼノの穏やかで大きな愛と
    プリちゃんの恥ずかしがる姿が…ッ!!もうツボすぎて読みながら悶え転げております~(/´△`\♥)
    プリちゃんのお手紙の最後の言葉にもうるっとしちゃいました
    自分が生まれたことで幸せを感じてくれる人がそばにいてそれを言葉にしてくれるなんて。
    ゼノは幸せだろうなぁ♥

    素敵なお話をありがとうございます♥
     #【二次創作ゼノプリ】「Veuillez appeler le nom」
    詳細・返信(1)

イメージレスポンス(0) 一覧

この作品へのイメージレスポンスはありません

タグ一覧 編集

友達に教える

  • ツイートする
  • イイネ
  • なうで紹介
  • はてなブックマーク
  • GoogleOne

この作品を見た人はこんな作品も 一覧

作者の投稿小説(3) 一覧

作品登録マイリスト 一覧

好きな小説 (13)

その他


コーナー R

作品宛みんなのつぶやき

  • キタリュ 03月09日
    真矢さん♥

    遅くなっちゃってごめんなさい…
    まさかここでも王宮読めるなんて…!
    ゼノの穏やかで大きな愛と
    プリちゃんの恥ずかしがる姿が…ッ!!もうツボすぎて読みながら悶え転げております~(/´△`\♥)
    プリちゃんのお手紙の最後の言葉にもうるっとしちゃいました
    自分が生まれたことで幸せを感じてくれる人がそばにいてそれを言葉にしてくれるなんて。
    ゼノは幸せだろうなぁ♥

    素敵なお話をありがとうございます♥
     #【二次創作ゼノプリ】「Veuillez appeler le nom」
    詳細・返信(1)

もっと見る

作者の他の作品一覧

一覧を見る

copyright (c) 2013-2017 メクる Co.,Ltd. All rights reserved.