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ゆきのひとひら

短編小説
童話・絵本
オリジナル
2015年08月15日 09:38 公開
1ページ(4763文字)
完結 | しおり数 0



深町珠

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スノウ・フレイクは、雪雲のなかで目覚めました。
きらきらと輝く、幾何学的な模様のからだは
まっしろに透けて、お日さまの光をあび

いま、ひらひらと雪雲のなかから
揺れながら、舞い降りて行こうとしているところです。


 ......さわやか、ね。

凛々しい思いで、まっしろな大地を見下ろしました。

とおくとおく、どこまでも続く草原も丘も

遙かに輝く白い峰も。

みんな、みんなsnowflakeを歓迎しています。


ようこそ。
いらっしゃい。
おはよう。

丘の上の樅の木や、小川のせせらぎ、
エルムの並木たちも、みんなみんな
snowflakeに、ごあいさつ。


.....はじめまして。わたし、snowflake です。


スノゥは、晴れがましいような
ちょっぴり恥ずかしいようなきもちで

雪の野原へ舞い降りていきます....


風に抱かれるように、ふわりふわりと
スノゥ・フレイクは、舞い降りていきます。

小川のそばの、高ーい木を飛び越えて
まきばのあたり、今は雪の原で誰ーれもいない
草原に、ふわりと舞い降ります。

雲の切れ間から、おひさまが顔をのぞかせると
スノゥ・フレイクは、きらきらと輝きながら、思います。

....いいな、なんだか。

幾何学的な雪の模様は
おひさまに照らされて
まるく、柔らかな
雪のたまのようになりました。スノゥ・フレイクは、お空を見上げました。

めざめた時に、そばにいた
ふわふわの雪雲さんは、北風にのって

遠くの空へと、ゆっくり、ゆっくり。

.....あ.....


スノゥ・フレィクは、とっってもさびしくなりました。
ふるさとから遠く離れてしまって
もう、もどることはできない...

そんな気持ちに似ていたかもしれません。

さっきまで、軽やかに空を駆けていても
今は、ただ遠ざかる雪雲さんを見送るだけ...


もどかしくて。

スノゥ・フレイクは、涙ぐみました。
さびしくて。

ひとりぼっちでわたし、どうしたらいいの?



「あの....」


やわらかな声がして、スノゥ・フレイクは
あわてて顔を拭いました。

誰もいないと思っていたのですから。


「は、はい....」スノゥは、とりあえずそれだけ。


声の主は、静かな瞳で微笑みながら
慈しむように、スノゥ・フレイクを見ています。
「ごめんなさい、驚かせちゃって。
僕は、スノゥ・ウィ、君より少し前にここに降りてきたんだ。」


スノゥ・フレイクは、なんだかほっとしたのか
やわらかく笑顔をみせながら、でも涙が頬を
伝いました。


スノゥ・ウィは、ちょっとあわてて。
「ご、ごめんね。だいじょうぶ?どこか痛くしたの?」


スノゥ・フレイクは、いいえ、と
かぶりを振りながら笑顔で、でも涙はとまりません。
とってもうれしかったのです。



真っ白な雪の原を、スノゥ・フレィクは
とても心細いきもちでながめていました。
でも、スノゥ・ウィに出逢えて
雪の原は、とてもさわやかなフィールドと
思えるようになりました。

...一緒、っていいな。

にこにこしながら、雪の原を見ていたら
遠くから、ちいさな足音が近づいてきました。


さく、さく、さくさく。




....あら?


あしおとは、ゆきうさぎさんでした。


丘のむこうに、まっしろなゆきうさぎさんの
おみみが、みえかくれ....



....konnnichi...wa?


スノゥ・フレィクは、こころの中で呼びかけました。


ながい、ゆきうさぎさんのおミミは
ぴょこ、と

スノゥ・フレイクの方へと、おミミをそばだてています。


...gokigen_ikaga?


スノゥ・フレィクは、よびかけました。
こころの中で。

ながい、ゆきうさぎさんのおミミは
丘のむこうから、見えかくれしながら

スノゥ・フレィクの方へと、近づいてきます。


ゆきうさきさんは、遠くから
フレイクのほうをみて....

かたほうのおミミが、ひょこ、と。

ゆき野原で、ゆれました。


なんとなく、それが
ゆきうさぎさんのごあいさつだ、とスノゥ・フレイクは感じました。

にっこり、と微笑みを
こころの中でかわすと、
ゆきうさぎさんは、ひょこ、ひょこ...

ゆきのはらに、足跡がのこります..。




スノゥ・フレイクは
ふんわりと、暖かい気持ちになりました。

ことばをかわしてはいないけれども
なんとなく、優しいお友達に会えたような、そんな気持ち…

でも、スノウ・ウィに
はじめて会った時とは
なんとなく、ちがう…


スノウ・フレイクは
ことばにできない、気持ちの。


その感じのことを、ふわふわと揺れながら回想しました。
スノゥ・フレイクは
そうして、スノゥ・ウィの
暖かい気持ちを感じながら
長い冬を、しあわせに暮らしました。


そして…

青空に、おひさまが
まぶしい陽射しを…

小鳥さんはにぎやかに
春の歌を歌い…


スノゥ・フレイクは
柔らかな陽射しのなかで
みづのように、溶けていきました…



…わたし、どうなってしまうの?


スノゥ・フレイクは
感じたことのない気持ちに
ささやかにふるえました。
怖かったのです。



「大丈夫、僕がついているから」

スノゥ・ウィは

柔らかい声で、フレイクを気づかい
ふたりは、しっかりと手を結びながら
溶けてゆきました。
涙のなかで…
ふたりは、きよらかな
ひとしずく。

ころころと、ころがり…

雪の原から、せせらぎへ。

すると…

春の女神さんの、足跡が。

小川のせせらぎのそばに…

雪の原に。

ぱさり、ぱさり…



ふわり。
雪わり草の可憐な花が
咲きます…

それを、春のあしあと、と
最初に言ったのは、どなたでしょうか...

雪が溶けて、小川のせせらぎに。

その、はじめて溶けていくさまが

ちょうど、かわいいあしあとに
見えるので

そこに、春の妖精が舞い降りたような...

それは、スノゥ・フレイクと
スノゥ・ウィに

春の訪れを告げに来た、あしあとだったのかもしれません。

ふたりは、雪とけ水になって
清らかなせせらぎを流れていきます...


ささやかな流れは、せせらぎになって。

谷へと向かいます。


…あ。


長い冬を、しあわせにすごした
丘は、いまは
見上げるような高さです…


…もう、戻れないの?


スノゥ・フレイクは
過ぎてきた日々を思い出し
さびしい気持ちになりました。


もう、雪のひとひらでもなくて
水玉のひとしづくになってしまった、その事も。


…わたしが。


望んではいないのに、こうなってしまった…


ちょっとだけ、そんなふうにも考えました。


「いろいろあるよね」


少し離れて、スノゥ・ウィは
そう言います。

せせらぎに身を任せたまま、ふたりは、そんな会話をします…


流れは、谷に集まって。


春の小川となりました。

流れは、集まって
谷川になります。

清らかな流れは、谷あいの深淵となって。

緩やかに、流れて行きます。

見たことのない、大きな生き物が

しなやかに、流れの中を
すいすい、と…

泳いで行き…


スノゥ・フレイクのそばを

すい、とかすめていきました。


…いいな…



スノゥ・フレイクは思います。

自由に泳いだら、気持ちいいかしら…


考えてみれば、雪のひとひらだった頃も、いま、みづたまになってからも…


漂うように、しているだけで…

あんなふうに、自由に…

泳いだら、いいな…

と、スノゥ・フレイクは
思いました。
「ごらんよ」

スノウ・ウィ は、みづたまのからだに、きれいな…

なないろを映し、きらきら。


「どうしたの、それ」

スノゥ・フレイクは
美しさと驚きとで、ただ
そうとしか言えませんでした。


「ほら、お空のね…」

彼の指差すさきには、虹が…

どこまで、続いているのでしょう…



「行こうね」
スノゥ・ウィは唐突にそう言いました。

聞き直すいとま無く、彼は流れに乗って、虹の彼方へと向かいます。
スノゥ・フレイク、彼女もなんとなく彼の跡を追います。

せせらぎは、大河へと変わり
やがて、海へと向かいます。

虹の向こうは、どこなのかしら....

旅をしながら、スノゥ・
フレイクは
わくわくします。
流れのさきには、大きな海がひろがっています。

それまでの、涼やかな流れとは違って、温かい、大きな流れに戸惑いながらも
彼と一緒に、南へと
流れて行きます。

どこへ、いくのかしら....

南の海は、とても綺麗な
コバルト・ブルー。

キラキラと輝くような、おひさまのひかり。
エンジェル・フィッシュがひらひらと。

眺めているだけでも楽しくなってしまうような、南の旅。


とても、あたたかで
少し、眠たくなってしまいます。


ゆらゆら、ゆりかごみたい。


スノゥ・フレイクは
夢ここちで
波にのったまま、ゆらゆら....



でも。

暖かい海で、おひさまに照らされて
海のお水は、ゆらゆら
陽炎になって。

空に昇っていきます。

いっしょに、ね。

なにが起こっているのか、スノゥ・ウィにはわかっていました。

でも、スノゥ・フレイクが怖がるといけない、と思い
眠ったままにしておこう。

ふたりは、いっしょに。

空へ昇って行きます。

雪のひとひらは、雪とけ 水になって。

清らかなせせらぎに。

そして、川になって。

海へと旅をしました。


そして。


ふたりは、水蒸気になって空へと、昇ってゆくのです。


さようなら....

楽しい旅だった、とスノゥ・ウィ、彼は思いました。

そして、また冬がきたら
彼女、スノゥ・フレイクに巡り会いたい、そう思います。

もし、この旅の事を覚えていたら、の話ですけれど
でも彼は、思います。
あの丘でであった、彼女はどこか、いつか出逢った事があるような
そんな気がしていたのです。


そのことを、彼女には
話してはいませんでしたけど
でも、きっと。
そうなんだろうと、彼は思います。


ふわふわと、雲の高さにまで昇りつめたふたりは
もう、透明な風のように。

どこにいるのかも、わかりません。



さようなら.....
ふわふわ、ゆきぐものなかで
彼女は、めざめます。


.....いつから、こうしてたのかしら。


あたらしく、生まれ変わったからだは
幾何学的な、結晶のように白く輝いています。

雪雲さんは、ふわふわと
漂って。

なだらかな丘、どことなく懐かしいような、でも
雪のひとひらとして、生まれたばかりの彼女に、記憶の彼方の丘、が
もしあるとすれば。

それは、とおい遠い、ずっと昔の記憶であったかも、しれません。

そして、その懐かしいなにかを探すために
彼女、Snow Flakeは
これから、旅をしていくことでしょう。



「わたし、めざめたばかり。でも、これからステキなことが起こりそう。そんな気がします。」

心のdiaryに彼女は、そう記して。

小川や、どこまでもひろがる雪の原を見下ろしています。

おみみのながい、ゆきうさぎさんが
雲を見上げて、のんびりとしています。

ちいさいほうが、坊やかな?



ゆっくり、ゆっくり。

ふわふわ、まっしろな雲は

その丘の方へ....


Have a nice trip!



おしまい。

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