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一躍一翼

短編小説
SF
オリジナル
2018年03月17日 14:37 公開
1ページ(7822文字)
完結 | しおり数 0

目を覚まして、美しい人よ。

ふしきの

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貴方の心に触れる何かがあれば幸いです。
人というものはあまりにもちっぽけなことで比較し、あまりにも大きなことを軽視する生き物です。
どうか心と体を壊さないでください、いつかあなたにより良き理解者が現れることを切に願います。


重複投稿作品 2018 10-09 追記

この物語は電力負荷による自家発電への切り替えのタイムラグを利用した物語です。鼻で笑うぐらいそういうことないといわれていました。数年前まで。
けれど現在のシステムは更新どころか後退しているのが現状です。なにせ電力会社の依存度が高すぎ、負荷が起きることのないことにかこつけて今まで過ごしていたのですから。
緊急時における自家発電電力は手動でロープを引っ張り発電機を回すという田舎の草刈り機程度にまで落ちてしまいました。
だから、古い古いこのSF物語を載せるのもありかと思い、載せました。
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ハローコンピューター…。 
私の断片的で砕けた記憶の中から明確な部分をここに記す。



私は、私の呼び名は「ひよこちゃん」あるいは「キイロちゃん」だった。
本名はわからない。

私の明確な記憶は、輝ける黒星ヘキサゴン塔の最上階からだ。


私の嫌いな音、衣擦れの音ぼそぼそとした低い声そして、金属のチーンという音。
好きな音、三のつく日の無添加石鹸であらわれた石鹸の廃油の香り。
私が好きなのは、あぶくのある水槽で体を洗ってもらう笑い声。
私が嫌いなのは、たくさんの人の目の中で私を忌み嫌う目の中で見つめる数種類の目。


私は「ひよこちゃん」になり損ねた…だから実験最終場にいる。

覚えている言葉は、一日800キロカロリーの食糧バーを支給されたこと。
呼吸器や管を外された子が奇声を上げて騒いでいた。
喜びはねていた。
「もうここでは必要ないからね」
とぐずっている子に何度も言われている様子。

高い高い大きな大きな倉庫。
キャンピング用品、軍用ターフ。奥には出来損ないのログハウス。
家具。
調度品。
鏡。
沢山の木材。
沢山のくず。
ドラム缶。
金属管。
土管。
男の子たちは私をつついて「こっちに来るな」といった。

私は赤い服の女の子たちのところの真ん中にひよこちゃんの一人としていた。
「ドレス」
のたくさんかかった洋服たちがつり下がっているワードロープで赤い女の子たちはパーテーションを作った。
洋服掛けで四方を囲い自分たちを覆いつくすように。
きれいなキレイなラメのワンピースが揺れるたびに私が嫌いなざらざらした臭いがした。

1日最低限のカロリーのバーがコンテナによって運ばれる。
いつでも飲める水飲み場は男の子が占拠している。

私はその日、目が覚めた。
『右手で握って、強く握るんだ』
の意味が分からなかった。
私はその粒粒としたボールの感触が好きで粒粒を触るだけで満足していたのだ。
『腕を持ち上げるよ』は、私にとってはふんわり落ちる波打つシーツの感覚が好きだっただけだった。
それが「だめだな」という首を横に振るあれになっていたのを知ることはなかった。
私はそれを今、理解した。

灰色の宇宙服を着た人が、やかましいビーコンをもって立っていた。
背の高さと同じぐらい大きな楯をもって立っていた。
私は彼女にそれをくださいと這っていったのだ。
彼女はビーコンをうるさいからと言って切ってくれた。
「ガイガーカウンター?ええそうね、もう時間がないからオープンにしていいと下されたのでなんでも教えてあげる。そう、予備服は私の腰にある予備が一着あるわ。いいわよ。耐熱服は1200度までしか耐えられないし、そうね、私はこれなの。分かる?わかるでしょう、いい子ね。できうることなら人の研究のために検体を希望したの。最後の奉仕活動。でも『ひよこちゃん』、あなたはいい子ね。生き延びてほしいわ」
私は赤い服の年長者の女の子たちが一人一人に合わせたカロリーバーの配分を待つことを止め、私は出口を探した。
私が見えたのは、プラスチックの長いゴミの奥にある狭い狭いレールの下の掃除用の半見えの青いドアだった。

私たちは実験と焼却を兼ねていたていの良い廃棄物だった。
それは最後に落ちた先に見えた高い高い建物の奥に見える灰色のコンクリートが黒からキイロそして赤そして白の煤で彩られた高い天井だった。

私はそこから逃げおちた。

逃げられたのは最後の食料配の合図のその鐘の音。
あの鎮魂の音色。
そしてあの宇宙服と同じ色をした灰色の名札を付けた人がわざと落としてくれた赤い通行用エレベーターカードキー。
私が着せてもらった耐熱服は縫合痕に添って穴が開いて粒粒と溶けていた。



『5 minutes』
それが自分を助けてくれた言葉のひとつだった。
「システムダウンから非常電力に切り替わる切れ目の時間」


エレベーターは狂ったように揺れて止まった。熱風と熱射病で床に張り付いたまま数時間……その次の記憶は、途切れて散漫だ。手に持っていた赤いエレベーターパスカードが溶けて消えたのしか覚えいない。

私はその瞬間奇怪な顔や姿の人と並んで水洗浄をされていた。
水圧は体を曲げるほど容赦なく四方からかけられた。
鼻に水が入ってようやく息が苦しくてむせた。
酷い太った小さい男が甲高い声で、
「おいお前!数値レベルが半端ない。もっときちんと落とせ」
と洋服を脱げと、たくさん叱られた。
並んで立っている頭のでかくて、首が非常に長い人たちが私の顔を見て笑っていた。
「なんだ、半目か。わしらより若いのが出たのか?なに声も出ないみたいか。やあ、出来損ない。もここに来た以上仕事はちゃんとしてもらえるだろうな」
と。
私はその奇怪な人が人間とは思えなかったが、私の姿を奇妙だというのだから私のほうが奇怪なのだろう。
だが、脱いだ下着は模様の入った花柄でその人たちの破れた下着よりも奇麗なので少し威張れる気がした。
水は呼吸ができないほど浴びせられ、みな寒いつべたいと言っていたが私にはそれが分からなかった。水圧の押す力に倒れないようにするだけで精一杯だったから。
「紫色の唇になる」
と私の周りの連中がごねたら水道が止まり、「そうだな水の無駄だ。新顔お前は特に数値が高い。あまりうろつくな」の怒鳴り声と「掃除夫!これもついでだ」と染料袋と集められた全員の衣類、私が脱がされた汚い汚物(耐熱服)を処分するように、ゴミ捨て場の汎用口を指示された。
私は目の前を歩く人についていった。
「新人ちゃんと板の上を歩くんだ。板の上だよ。緑の排水に足が浸かっただけで、長靴が溶けちまって、ひ、ひ、ひひ、死んじまうんだからさ」と、口癖のようにケタケタと笑って歩く。曲がりくねったがに股で。
「そうさ、俺たちはすぐに補充が来る。だから毎回これだけいう、板の上を歩くんだ。俺たちは簡単にひひひひ、ひ、死んじゃうからさ」
「お前は喋りも単純になってきたな」
「どうせ、俺たちはすぐに替えが来る、長くはもたない、ひひひ」
「とうとう、破傷風菌が脳に入ったか」
「ひひひ、死んじゃう」


「ここじゃ俺たちは害虫だ」と酷い太った小さい男の甲高い声がスピーカーから怒鳴る。
黄色い水をプランターにかけている人は大きな声で講釈を垂れていた。
「色付きの毒はバカでも選別ができるようにという配慮」という言葉に一同が笑っていた。
「草木をいじめないで」という用語の看板が至る所に貼ってあった。

その後、私はめまいをおこし躓いて廃物処理タンクの中に落ちた。
その時も「ひひひ、死んじゃう…俺たちはすぐに替えが来る、誰も気にしない」の声が聞こえたような気がした。
私は無意識の状態で背中を押され落とされたのかそれとも、自分から足を滑らせたのかそれは、わからず、深い深い闇と流れに意識が散漫になった。



年寄りが「上の階はまた水漏れを起こしている」
と怒っていた。
「ろ過システムの目詰まりは日に日に多いな」
「上層三階はフロア丸ごとプールだそうだ」
「ま、水蒸気になってまた強制排出される。蒸留水のタンクの備蓄分にはわしらの分には差し障りなく事足りる」
乾いた独特の笑い声がしていた。
年寄りたちは笑って椅子に腰かけ、テーブルゲームに夢中だった。
彼らは彼らの安泰し興味が全くなかった。

「名前は?」
と、聞かれても私には分からなかった。
「ひよこちゃん」「キイロちゃん」が名前ではなくて選別プレートだと知ったのはその時だった。
右足に人は生まれてすぐにバーコードを植え付けられていた。
私は再生手術によって薄くなって識別が緩くなったそうだ。
私が知りえたのは右のすべての器官が再生術によって伸び生まれそれが少しだけ育ちすぎて止まったという事実と、脳細胞の欠けて消しとんだ部分の再生は復元不可能という絶望だった。
私の過去の記憶がそれゆえに散漫だと教わった。

大きな人たちの「ビックス」も旧食糧危機問題の解決策の穀物増殖巨大化実験の遺物だと教わった。
彼らは進化と退化をここで繰り返した結果のゴミだと。
ここは通気口のファンが四六時中周り、最後の耐震構造の隙間だということだった。
だから他のフロアや庭園より空間が広く巨大な体を少しだけ伸ばして歩けるという。

「毒もまた煮炊きによって薄まる」とか「ろ過を繰り返すことにより」ということを知った。なによりも人は有毒物質の中で生きているのが普通だと言う。「大量に取らなきゃいいのさ、鰯や秋刀魚のようにね」と。
私は固形物ではない流動のものを口にした。
「原人食」と笑う爺は、気味が悪いほど歯かけだった。
爺には多くの透明な容器に入っている実験動物のようにぞんざいに扱われ、ビックスたちに同種属の動物のように可愛がられた。
私はそこに長い期間いたが、ほどんどがお人形のように動くことができなかった。
最悪だとビックスが金切り声をあげて吠えてくれると、爺さんが仕方ない顔をしてピラルークの水槽の中に私を投げ入れる。
温い濁った水槽の中で汗も涙も汚れも垂れ流し溢れだしても手入れされることはなかった。
「わしらの食事は決まった個数しか与えられてはくれん。しからばお前さんは他者から奪うしか選択方法はない。わしと取引じゃ。わしの治療と研究に貢献するという取引じゃ」
私は今まで屈辱も絶望も諦めも知ることはなかった。私は生きたいという鼓動だけがしていた。
そして、振動が大きい日に目覚め、あの嫌な音を聞いて「人体への実験の最終工程」を知った。
「男の子たちはばらばらに女の子たちは固まる」というと気持ち悪い爺さんが「蠅と同じじゃな」と笑ったのを覚えている。あの独特の研究者の軽蔑と好奇心の目付きをする。この爺さんが大嫌いだった。大嫌いだからこそ私は常に考え疲れては眠った。
私は何度もガラスケースの中で実験動物と同様に治癒される。
私は学ぶ。
記憶が眠りにつくまで、臭いも体も痛みも朦朧としても皮膚感覚と視野でもぎ取る様にモニターチップで学び取った。
「お前のバーコードは薄い。死人が突然暴走する暗黙の5分間に合うかもしれんの、さてお前はこの先どうする。安泰の死までこいつらと共にこの隙間で暮らすか?それもまた良いワシにとっては最新の生体を少し分けてもらう代わりに生涯の病気治療の保証はしよう。ただし、機材は古いがの」
私は痛みの限界がきても声を押し殺し、動ける時期を待ち続けた。瞳が360度動き涙が出るほど時間は長かった。
「なるほどなるほど……学者は持論を寄せようとする、危ない危ない」が爺さんの口癖だった。
蒸発空気が登りたつとき、空から大量のネズミが降ってきた。それはリズムのない不規則なリズムと嫌悪と憎悪だった。
『ネズミが上がるときお前は選択をしなくてはならない』
それが覚えている最後の言葉だった。
最後の肉を食べた。
それはとてもジューシーで肉の味がした。


私は、minutesを使った。
清掃員の服を取った。
だが、足の靴を忘れてドアが止まったハプニングで死を連想した。
汗と寒さと疲労を初めて感じた。
臭いに敏感になり、気が付けば忘れるの繰り返しを続ける学習能力の低い脳を呪った。

私は数秒間の大量に乱雑な情報を即座に理解しなければならなかった。選択率は死の確率を産むのを知っていた。
排気ダクトは昼間は動けるが、夜は不規則な浄化が始まること。ダクト奥の二枚ファンには細切れの死骸が転がっていたこと。
昼間の人々はたまに裸になったり人の群れだったりすること。大きな大きなフロアに全員裸で笑い転げて走り回っていたり、突然スーツを破ったり、見たこともない料理が出てきては消えていった。
夜の清掃車は動くもの全てを容赦なく殺す。昼間歪んでいた窓ガラスの一枚に修理工が納期遅れで何人も消えていったこと。それは謝肉祭の清掃と変わらない淡々としたものだった。
夜は、終焉。動かないものは、ダストボックスに投函され落ちていく。それがゴミだろうが、さっきまで狂乱の輪の中で踊らされていた田舎娘だろうが同じだ。退出できないものは処理される。それがルールだった。高級娘たちはそれらすべてを理解して蝶のように揺れ動いていた。朝には匂いたつ香水すら消えて颯爽と専用昇降機で去っていった。専用昇降機はグラム増減さえもアラームがなるほどの厳戒体制だった。昇降機はダストシュートとなることもあった。轟音と静寂と独特の臭気ガスが点検中という点灯が終わるまで続いていった。誰もまるでよそ事のようにそのドアを無視した。一夜千夜の狂乱が日々人が入れ違い交わり、高級階では続くだけだった。
残されたまだ温かく匂うほどの食事も、当日中には食器ごと処分された。
専用昇降機には乗れないことは瞬時に理解した。汗と恐怖で全身が危険を感じ取った。 
私は拾った白いシャツと黒い短いスカートだけを着たつま先立ちの空気人形ちゃんになった。空気人形ちゃんは美醜は目立たなく、そして群で行動する移動者には大概ひとりふたりはいた。わたしは公共エレベーターをそれで利用した。すれ違う空気人形ちゃんの時は大概大きな男の人に貼り付いてまるで遠くの目を見ていた。

男の人が乗り込もうとしてエレベーターの重量ブザーが鳴ると私はいつも心臓と吐き気と吹き出す汗をごまかさなければならなかった。誰しもが少し停まっただけのエレベーターに憤り頭から逆上せるような汗を出し、少しだけ生地の薄い安服の男性を追い出す。肥満が裕福者と堕落者を別ける階が切り替わる時期だった。空気人形ちゃんは唯一ポケットの中にあった使ったことのないペンをその人のポケットの中に押し込んでその場から消えた。

私はその頃から悪夢を見るようになった。
無人コンソールの車と要人高級車の無理な接触事故で両親が亡くなったこと。
母は私を持たせるために長く生きてくれたおかげで芋虫から「キイロちゃん」になれたこと。キイロちゃんの優待期日が過ぎたため時期実験処分の対象者リストに入った。
私は隣の子と同じように通学していた。
「いつもおそろいのふたごさん」が愛称だった。
ごく普通の女の子だったこと。


1の数値がパネルを数えてもちゃんと数列に配備されたエレベーターに乗ったとき、私は今までの真反対の目すらゴーグルで覆われたほっかむりの掃除婦の服を着ていた。
掃除係の服を時間と共に変え、従事者の日々のたわいのない不平と不満とが交差する切り替わりの要所要所に私はいた。

「胸を張れネームプレートが読み込めないぞ」と怒鳴られた。と、更衣室の緊急人感センサーの声に顔を向けたとき私は裸だった。
「う、動くな」うわずった声に代わり、監視カメラが気持ち悪く動き焦点を合わせようとしていた。
私の目の前にコンソールキーが出てきたので、私は「生理痛休み」を申請して『許可』マークで監視カメラセンサーをブロックした。
廊下で嫌みったらしく「かがんで歩くな!お前はここをどこだと思っている!」と苛ついた声色にかわり何度もねちねち怒鳴られれた。

あの時……。
同級生の子は私が殺した。
殺したのかもしれない。
暴発と蒸発が同時だった。
私は右手で彼女の首をつかんで放さなかっただけだ。
私は着替えようとしていた。
人がいないのを確認していたというのに……。
目の前に。
同じ背丈同じような顔。
「ビックリした!鏡かと思った」
と言った言葉に私は全ての力を右手にかけたのだ。
『強く握って‼』『腕をあげて伸ばしたままにしてごらん』ああ、私は言葉を理解している。今の今になって証明できる。

そして……『私は醜くない』という確信に。

彼女の体はたちまち分散浄化されファンの中に吸い込まれた。…あっけなく、服だけを残して蒸発したのだ。
言葉は跡から頭で再生された。
「お前が隣に住んでいなきゃ、お前が同級生でなかったら、かわいそうな子であの時死んでくれたら、三度目のお見舞いで私の人生が終わった!あんたは死んだ。死んだと聞かされ不安と安堵で私は猛勉強した。だけど『暗黙のお情けの人生航路』が敷かれていた。あたしだけが下層階止まり!あんたのせいよあんたのせいでマイティカードを人生で取り損ねた」
誹謗と中傷と怒りが私の渾身の押さえつけた右手の中でかき消えた。
「あんたなんか死ねばよかったのに」
私に似た彼女は跡形もなく蒸発した。
『着替えに戻るといって何分時間をとっている!ライト照明点灯カメラ更衣室の撮影を申請』
私は裸で消えた彼女の服を胸に掴んでいた。
「服が汚れたので着替えているところです」

「道具類はきちんと保管」その指示のとおり私はまた裸足になった。はっとして「靴を掃かなきゃ」と通勤靴を取り出した。サイズはピッタリだった。けれども右足はとてもきつかった。


地上の芝は雪で覆われ、白銀の豪雪だった。
この建物の防壁は液体窒素が常に流れている。
常に周囲は暴風雪でセキュリティを向上させ、そしてあらゆるものを覆い隠している。
射的訓練生以外は誰もいなかった。
従業員正面通行門を出たときに私はあの子のネームプレートの入った外套をつかんでいた。
靴を履いて……。


温暖な気候と管理された緑が直射日光を遮っていた。
それでも太陽は痛いほど肌に刺さった。
外套はもういらない。
道路を渡るときに彼女にすりかわって生きるのもいいかも知れなかったと思った。けれどそれは通りがかりの神社の賽銭箱に彼女のネームプレートを投げ入れるのと同じぐらい軽いものだった。
覚えているのは「道路の白線ってさ、塗料の違いでつるつると反射するんだよね」と通学路で笑っていた。靴を通してバーコード認識が途切れるトラブル信号が一斉に起こるたびにくすくす笑っていた。
「まただれかわざと白線の上を歩いている」と。
バカな大人とシステムだねと。
脆弱なるシステムよ…と。


私の話はここまでです。
私は輝ける黒星ヘキサゴン塔の最上階から逃げてきた。
…コンピューター記録終わり。


追記
私は自転車に乗った野球少年に出会った。
太陽の下で真っ白いユニフォームがとても眩しかった。
黒く日焼けした顔で、あいさつを交わした。
自転車は油が抜けているのか、変な音をさせながら行ってしまった。
早朝の空の青さと太陽の焼けるような熱射の前に私は森に入った。
森の中のビレッジの一つの古い古いコンソールを見つけてた。
私が生きのびられたのはただの偶然と熱烈な科学者のよくある付けたしの多さに助けられた部分が多い。海馬移植を待つ最上階に居座る元老院の孫が成長するまでの実験としてのニューロンの再構築。失われた脳内再生への脳化指数の向上を目指すためのレム睡眠学習。私の受けた体全体の細胞分裂の再構築。それは失われた襞、醜い皮膚の皮となって今体の一部が垂れ下がっている。
私は最後の脱皮をした。
脚は強靭な鱗をまとい一躍した。
私にはもう走る足はいらない、飛び立つ足が大地を蹴り上げたのが最後だ。
体は空に落ち。
一翼の風切り羽が私の行く先を力強く推し進めた。
海の先へ。

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