メクる

累計 18778527 スキ
BL・アダルトの
切り替えはこちら

闇色蛇

短編小説
童話・絵本
オリジナル
2018年12月30日 22:20 公開
1ページ(2052文字)
完結 | しおり数 0


maybePURIN

  • 閲覧数

    145

    1959位

  • 評価数

    0

    1763位

  • マイリスト

    0

    1456位

フォント
文字:--%
行間:--%
 ねえ、今まで誰にもしてこなかった話、してもいい?



 いや、そういう変な話じゃなくて。

 あ、変な話、なのかな……?

 まあとにかく、話していいんだね? じゃあ……





 子どもの頃、家で虐待されてた話はしたよね?

 夜に家から追い出されることがしょっちゅうでね。

 その日もそうだったんだよ。ちょうど今くらいの、年の瀬の寒い時期にだよ?



 コートなんてもちろん着せてもらえなくて、部屋着のまま真っ暗な夜道を歩いたよ。

 震えが止まらなくて、体がちぎれそうに痛かったのを覚えてる。



 追い出された時は決まって、近所の公園に行ってたんだよ。

 ブランコとベンチが置いてあるだけの小さいところだったんけどね。



 別にそこが好きだったわけでもないんだけど、他に行くあてもなくてどうしようもなかったから行ってた。ブランコ乗ったりベンチに寝転がったり地面に落書きして暇をつぶしてた。



 普段ならそうして一時間くらいしてから恐る恐る家に帰るんだよ。それで自分の部屋の布団に潜り込めることもあれば、まだ機嫌が直ってない親に締め出されることもあった。



 けど、その日は違ったんだ。



 ベンチに座ってボーッとして、離れたところにある植え込みの方を眺めてたの。

 そしたら、植え込みの上、街灯の明かりが届いてない、何もないはずの空間で何かが動いたのが見えたの。

 暗闇の一部が突然ぼこっと3Dみたいに丸く膨れて、左右にゆらゆらしてるようだった。



 「闇が動いた」そう思った。



 怖くはなかった。

 ものすごい好奇心が湧いてきた…… ってのともまた違ったかな、今思えば。

 なんだか分からないけど、目が離せなかった。



 だんだんそれの全体像がつかめてきた。



 蛇だったんだよ。大きな大きな蛇。

 「闇が動いた」と思ったのは、体色が闇と同じ色だからそう見えただけだった。



 黒というより闇色のそれは、つぶらな赤い瞳でこちらをじっと見つめてた。ヒイラギの実が二つ並んでるみたいだった。



 アイコンタクトをとったまま視線をそらせないでいたら、蛇はずるっ、ずるってこちらに這ってきた。重い荷物を引きずる音を聞くと、今でもその光景が蘇るよ。



 植え込みの向こう側から現れた蛇は、本当に大きかった。

 丸太のような太さで、長さは当時小一の私の5倍はあるんじゃないかってくらいだった。



 そんな巨大な闇色が迫ってきても、なおも恐怖はなかったな。

 このまま食べられちゃうんだとは思ったけど。



 むしろ早く食べてほしかった。

 どうせこれからも親にひどいことをされつづけるんだから、それならいなくなった方がいいんじゃないかって。

 前に図書室で読んだ本に出てくる、象を呑み込んだウワバミの絵を思い出しながら。



 なのに、蛇はただ私の顔を凝視するだけだった。

 息がかかるほどの距離で。

 スーパーで売ってる豚肉みたいな色の、紙みたいに薄い舌をチロチロ出し入れしながら。



 食べてよ。

 もういいんだよ私は。

 美味しくないかもしれないけど。

 それでもいいなら、早く。



 目で訴えかけたつもりだったけど、一向に食べてくれる気配はなかった。



 どれくらいそうしてたんだろう。

 急にくしゃみが出た。同時に、急に寒さを思い出した。

 それまで寒いのも忘れてたんだね、見つめ合うのに夢中で。



 恥ずかしくなってやっと目をそらして俯いてたら、ずるずるいう音が耳に届いた。

 左腕に、背中に、右腕に、何かが触れてきた。



 蛇が、私に巻き付いてきてた。

 食べようとしているわけでも、絞め殺そうとしているわけでもないんだって、何故か分かった。

 なすがままに巻きつかれた。



 上半身が闇色に光るつやつやした鱗に包まれた。



 あったかかった。

 ただひたすらに、あったかかった。

 もう一度寒さを忘れるほどに。





 そのうちだんだんうとうとしてきて、気付いたら病院にいた。

 いつの間にか眠ってたらしくて、朝通りすがりの人が公園に倒れてるのを見つけてくれたらしい。



 その後は…… それはそれはまあ色々あったわけだけど、とにかく今の家族に引き取られて、こうして大人になるまで一応無事に育ててもらったよ。





 今でもあの蛇が何だったのかは分からない。

 あんなところにあんな大きい蛇がいたら大騒ぎになってたはずなのに、そんなことはなかった。

 そもそも普通の蛇ってあそこまであったかくないはずだから、やっぱり普通の蛇じゃなかったのかもしれない。



 でも、あの出来事を、あのあったかさを夢だとか幻だとかって思ったことは一度もないよ。



 それだけの話だけどね。

 ただなんとなく、あなたには話してみたくなったんだよ。

スキを送る

累計 0 / 今日 0


残スキ 300

『スキ機能』とは?
『スキ機能』とは『スキ』ボタンを押すことで作品や作者を応援できる機能です。
※拍手機能に類似した機能です。

[スキ機能のルール]
※1人あたり1日に300回まで『スキ』を送ることができます。
※1作品でも複数作品でも合計が300回まで『スキ』を送ることができます。
※『スキ』は1スキ、『大スキ』は10スキ、加算されます。
※1日に与えられるスキの数は毎朝4時にリセットされます。
※自分の作品にはスキ機能は利用できません。
※『スキ』は匿名で作品に送られます。

スキ!を送りました

作品を評価する

maybePURINさんを

フォローしたユーザーの
作品投稿やつぶやきなどの最新情報を
マイページでチェックできます

マイリストに登録する

この作品につぶやく

#闇色蛇
 

500

みんなのつぶやき 一覧

イメージレスポンス(0) 一覧

この作品へのイメージレスポンスはありません

タグ一覧 編集

この作品にタグはありません

友達に教える

  • ツイートする
  • LINEで送る
  • イイネ
  • はてなブックマーク

この作品を見た人はこんな作品も 一覧

作者の投稿小説(38) 一覧

作品登録マイリスト 一覧

登録された公開マイリストはありません

その他


コーナー R

作品宛みんなのつぶやき

もっと見る

作者の他の作品一覧

一覧を見る

copyright (c) 2013-2019 メクる Co.,Ltd. All rights reserved.